ハムの定義と種類・起源について
-クリスマスに登場する由来と歴史も紹介

ハムの定義と種類・起源について<br/ >-クリスマスに登場する由来と歴史も紹介

サンドイッチの具・デコ弁作りの便利アイテムとしてもお馴染みのハム。ハムエッグ派かベーコンエッグ派かで論争が起きるくらいに日本でもメジャーな肉加工品の一つとなっています。おそらく多くの日本人にとって馴染み深いのはピンク色・しっとり食感のロースハムかと思いますが、生ハムやボンレスハムもありますよね。今回はそんなハムの種類やベーコンとの違い、ハムの起源説やイースターやクリスマスなどのキリスト教行事でハムが食べられている理由について紹介します。

ハムの定義・種類について

ハムとは

ハムは食肉加工品の一つ。
基本的には豚肉・猪肉のもも肉を塊のまま塩漬け(塩せき)し、乾燥・燻蒸・加熱などの処理をしたものを指します。燻製する・蒸したり茹でたりするというイメージもありますが、この工程はマストではありません。塩漬けした肉を乾燥させただけというハムも存在しています。

ハム(ham)という言葉は加工品の呼び名として使われているだけでなく、豚もも肉を意味する単語でもあります。語源は「膝のくぼみ」という意味を持つ“ham”もしくは“hom”という古英語とされており、15世紀頃からは似た形状を持つ豚の後ろ足を指す言葉になったという経緯があります。このため「ハム」という言葉で表現されるのは“豚(猪)肉のうち、後ろ足の部分”を加工した食品のみというのが本来の形。

しかしながら日本で最もオーソドックスな「ハム」は正式にはロースハムと表記されるもの。もも肉ではなく背中のお肉を加工した食品です。何百年、時に千年以上も前からハムを作ってきた歴史のある地域だとハム=もも肉という概念が強いものの、アメリカや日本など歴史の浅い国では豚のもも肉以外を用いた加工食品もハムと呼んでいます。製法や食味がハムに似たものであれば「〇〇ハム」と呼ぶようになる⇒日本では最も一般的なロースハムが「ハム」であると印象付いてしまったという感じでしょうか。違う部位を使ったもの・豚肉以外を使った鶏ハムや魚肉ハム、ソイハムなど塩漬けしていなさそうなものもありますから、広い意味では“ハムに似た食感や風味を持つ加工食品”の総称とも言えます。

ハムとベーコンの違いは?

見た目や味が違うので間違えることは無さそうなハムとベーコン。ですが、何が違うかを説明しろと言われると困る方もいるんじゃないでしょうか。恥ずかしながら筆者は20歳過ぎるまで「ハムは煮るか蒸す、ベーコンは燻製する」ものだと信じていました。ベーコンには加熱(湯煮または蒸煮)工程が無いので間違いでもありませんが、ハムにも生ハムと呼ばれるような加熱工程が無いものがあります。むしろスペインを筆頭としたヨーロッパでは加熱しないハムのほうが一般的。このためハムとベーコンの違いとしては「使用する部位が違う」というのが正解とされています。

本来ハムというのは豚の“もも肉”を加工した食品に使われる言葉。対してベーコンは豚の“バラもしくはロース(腹や背中)”を使用しています。英語ベーコン(bacon)の語源としても後ろを意味するゲルマン祖語“backoz”とされており、古くは背肉の保存食を指していたと推測されています。このため欧米では腹と背両方のベーコンが製造されており、アメリカではバラ肉を使った“streaky bacon”が、カナダではロースを使った“back bacon”が多く食べられているなどお国柄も出るそう。しかし、言葉上の正しさはさておき、これだと日本での一般認識とはちょっとズレのある説明になってしまいますよね。

日本では背中(腰回り)のお肉を使った“ロースハム”がオーソドックスなハム。更にショールダーハムやバラ肉を使ったベリーハムなどもありますし、ロースベーコンやショルダーベーコンもあります。使用部位に関係なく「ハム」や「ベーコン」という言葉が使われていたりします。製法の部分では「ベーコンは燻煙のみで湯煮や蒸煮はしない」「ハムは燻煙がマストではないが加熱する」とも言われていますが、製品によって差があるため必ずそうとも言い切れません。日本では食品表示法で単に「ベーコン」と記載する場合はバラ肉の部位を用いたものと決められていますが、商品名や通称の部分では使用部位・製法・食味の総合評価によって「ハム」と「ベーコン」を使い分けている部分もあるのではないでしょうか。鯨ベーコンとか“お魚ベーコン”とかもありますし。

ベーコンについてはこちら>>

ハム・主なハム類の種類

上記でご紹介したようにハムは本来“豚肉・猪肉のもも肉を塊のまま塩漬け(塩せき)した”ものを指します。このため豚もも肉以外を使用した食肉加工品については、塩漬け肉・加工肉などという呼び方をするのが正確ではあります。しかし、独自のロースハム文化が定着している日本で「ハムって言葉はもも肉以外使用禁止」なんて事になってしまうと大混乱ですよね。また塩漬け加工肉というような呼び方をするとベーコンなども含まれてしまうため、ここでは“ハムに似た食感や風味を持つ加工食品”を含めハム類として紹介しています。

ロースハム・ショルダーハム

ロースハムやショルダーハムも原材料は豚肉で、整形もしくはケーシングして塩で漬け込んだ後に燻煙・加熱(湯煮または蒸煮)すると製造工程もハムそのもの。ですが、呼び名の通り使用する部位がロース(背肉)であったりショルダー(肩から前足)だったりすることが特徴です。本来の意味で言えばハムは“豚のもも肉”を使った加工食品であるため、ハムではなく「ハムに似た塩漬けの加工肉」というのが正確ではあるそう。しかし、日本では国によってはハムと認められないであろうロースハムが最もポピュラー。サンドイッチやハムエッグによく使われているキメの細かい円形の「ハム」は基本的にローストハムです。

ドイツ人捕虜として日本へ連行された経緯のあるアウグスト・ローマイヤーさんが、1921年に豚ロース肉を使用したボイルドハムを開発。もも肉を使った一般的なハムよりも価格が安く、味も淡白であったことから日本で普及していったという歴史があります。ドイツ人考案ですが日本独自の食肉加工法であるとの声もあります。日本では70年代までは後期のプレスハム、80年代以降はロースハムが主流。このため本来のハムである豚もも肉を使ったハムのことを「ももハム」と呼んだり、ボンレスハムや生ハムは特殊なハムであるという本末転倒な認識になっている部分もあるように感じます。

ボンレスハム

ぽっちゃり体型の方の揶揄に使われたせいか、網目状に縛られたハムという印象もあったりするボンレスハム。肉々しさが強く味が濃いこと・しっとりしたロースハムよりもモソモソした肉っぽい食感があることなどが特徴として挙げられています。とは言え、ボンレスハムは英語でboneless ham、直訳すると“骨抜きのハム”の意味。ボンレスハムの定義はそのまま「骨を外した豚もも肉を塩せきし、ケーシング等で包装後に燻煙・湯煮又は蒸煮した食肉加工品(ハム)」となります。ロースハム主流の日本だとちょっと骨なしなのは当たり前・肉肉しくて珍しいハムという印象ですが、世界的には切り分けやすくそのまま食卓にも乗せられるハムという感じなのかなと。ハムの基準は“豚モモ”加工品ということもあり、日本のロースハムのようなものは無いですし。

骨付きハム

ボンレスハムは骨を抜いたハム。となれば骨付きハムは「豚のもも肉を骨付のままで整形・塩せきした後に乾燥や燻煙・加熱加工したもの」のことを指します。広い意味ならプロシュートなども骨付きのまま加工されたものは“骨付きハム”で良いような気もしますが、日本独自の分類なのか、基本的には加熱されたハムを指す時に使うことが多いようです。私達はあまりもも肉から骨が突き出している巨大なハムはお見かけしませんが、海外のSNSなどではお祝いの席などでロース肉と見間違えそうな立派な骨付きハムがテーブルに鎮座している姿も見かけます。

生ハム類(プロシュート含む)

日本で最近流通が増えているハムとして、生ハムもしくはプロシュートと呼ばれているものがあります。生ハムとも呼ばれるように生肉に近い見た目としっとりとした食感があり、前菜やサラダに使うことが多いのでは無いでしょうか。チーズや果物、ワインとの相性も抜群。お弁当や朝食のお供となっているロースハムに対して、生ハムはパーティメニューやお酒のアテに多く使われる印象があります。

ロースハムとは全く違った食味・生ハムやプロシュートという呼び名が定着しているため普段食べているハムとはちょっと違うものという印象がありますが、世界的に見ると非常にポピュラーなハム。というよりも、本来の意味での「ハム」に当てはまるものは“豚もも肉”を使用した加工品は、ボンレスハム・骨付きハム・生ハム類の3つです。生ハムは塩せきした“豚もも肉”に対して高温での加熱加工がなされていない事が特徴。国によっては加熱ハムの方が馴染みがなく、ハムと言えば生ハム系のハムを連想するというところも珍しくないようです。

生ハムイメージ

生ハム(加熱)

一般的に生ハムと呼ばれているハムは、豚もも肉を整形・塩漬けした後に20度以下の低温でじっくりとスモークされます(冷燻法)。スモーク後は乾燥・熟成期間を置き、ものによってはこの工程を何度も繰り返すこともあります。生ハムは高い熱を加えないことで透明感のあるピンク色・しっとりとしたお肉になり、熟成させることで独特の風味が形成されます。また、加熱しないため微生物が増殖しないように塩分高め・水分量少なめに作られることも特徴。

プロシュート(非加熱)

生ハム類似品・もしくは生ハムの一種として扱われているプロシュート。一般的な生ハムとはまた別の、少し乾燥したような舌触りと濃厚な味わいがあります。プロシュートというのはハムのことを指すイタリア語“プロシュット(Prosciutto)”が日本語的に訛ったもの。日本では意図的な燻製を行っていない=塩漬けと乾燥のみて作られた(イタリア産)ハムのことをプロシュートと呼んでいますが、本来は特定の生ハムを指す言葉ではないそう。イタリアでは非加熱のものを“プロシュット・クルード(prosciutto crudo)”もしくは単にクルードと呼び、加熱したものは“プロシュット・コット(prosciutto cotto)”と大別しているそうですから、日本語でも“クルード”と呼んだほうが分かりやすかったのではないかなと。

プロシュート(プロシュット・クルード)が生ハムとして異なるのは完全に非加熱であるということ。作り方は豚のもも肉を塩漬けし、乾燥したところに吊るしておいて熟成させるだけとシンプル。家庭では暖炉のそばで乾燥させることがあるそうなので若干燻煙されている可能性もありますが、意図的に燻蒸することはありません。この製法から生ハムよりも更に微生物が増殖する可能性が高いとして個人的に日本に持ち込むことが禁止されていた時期もあります。ちなみにスペインのハモン・セラーノ(Jamón Serrano)やポルトガルのプレスント(Presunto)、中国の金華ハム(金華火腿)なども日本で言うところのプロシュートの製法で作られています。

そのほかハムの仲間

パストラミ

日本ではハムの一種として扱われることが多いパストラミ。表面にハーブやスパイスがまぶされているためスパイシーな味が特徴的で、サンドイッチの具材としてよく使用されています。現在は牛・豚・鳥など様々なお肉のパストラミが流通していますが、本来のパストラミは牛肉のブリスケットを塩漬けにしてから燻煙し香辛料をまぶした保存食。「ももハム」と同じく「パストラミビーフ」という呼び名は本末転倒なようです。使用部位が豚もも肉ではないため基本的にはハムには含まれませんが、製法がハムと極めて近いこと・日本はロースハムがオーソドックスなハムの国デあることから「パストラミハム」の名で親しまれています。

プレスハム類

呼び名からプレスした(圧力をかけた)ハムかなと思いきや、プレスムと呼ばれているものは豚肉に他の獣肉や繋ぎなどを加えて練り合わせて作られたハム。プレスハムに使用されているお肉は豚・牛・鶏肉をはじめ馬・羊・ヤギ・ウサギ・魚肉まで様々だそう。かつては食べて問題がなく味に違和感のない、ありとあらゆる食用肉が使用されていたようです。ハムやベーコンほか加工に使った肉の端切れを使用して作っていたことから安価で、昭和初期頃から1970年頃までは日本で最も一般的な「ハム」として親しまれてきました。

プレスハムはクズ肉で作ることから「寄せハム」と呼ばれていた時期もあります。プレスハムも和製英語かと思いきや、アメリカにもかつては“pressed ham(プレスドハム)”や“Taylor Ham(テイラーハム)”などと呼ばれる豚肉ベースのハムに似た食肉加工品がありました。しかしプレスハムの製法もアメリカから伝わったというわけではなく、伊藤ハムさんのサイトでは「日本独特の製品」と紹介されています。どこの国も考える事は一緒という事でしょうね。

ちなみに、現在アメリカでは食品表示規制の関係で「ハム」と付けることが出来ないのでプレスハムではなくポークロール(Pork roll)と呼ぶことが多くなっているそう。日本でも品質表示基準は「プレスハム類」と「ハム類」とは別だと分かるような表示がなされています。とはいえ1980年頃からは豚肉の不足もなく国民も豊かになった関係から、プレスハムの小売はほとんどされていません。コスパの良さから業務量には使用されているようです。

獣肉以外のものも

パストラミは基本的に牛、プレスハム類は色々な豚肉ベースに肉がミックスされたもの。ここまでだと獣肉ベースの商品がハムの名を関しているように感じますが、獣肉以外が主体であってもハムの製法で加工されたものは〇〇ハムと呼ばれています。アメリカだと七面鳥を使った“Turkey ham”がいくつかの企業から販売されているそうですし、日本では“魚肉ハム”や“鶏ハム(鳥ハム)”が販売されています。

こうした無関係のものに「ハム」という呼び名を使うのは、日本やアメリカなどハム文化の歴史が浅い国ほど多いという指摘もあります。正式なハム以外を「ハム」と言うことに眉をひそめる方もいらっしゃるようですが、その一方で大豆や豆腐を使った“ソイハム”などは世界中のベジタリアン・ビーガンの方に広まっていたりします。

ハムの起源・祝日に食べられる理由

紀元前からハムは作られていた

世界で初めてハムが作られた地域については断定されていませんが、古代中国からガリア地域までと広い範囲で紀元前のうちにハムが存在していたと考えられています。ガリア地域と呼ばれているのは紀元前4世紀頃~1世紀ころにかけて、ケルト人の一派で古代ローマ人にガリア人と呼ばれた人々が居住していた地域。現在のイタリア半島北部からフランス・ドイツにかけてのエリアを指します。ヨーロッパと中国、ユーラシア大陸の東西で既に紀元前からハムを作って肉を保存していた可能性が高いんですね。

豚もも肉のハムイメージ

中国では紀元前4900年に豚のもも肉からハムを作っていた(それをヨーロッパに伝えた)という伝承もあるようですが、調べた限りハムについて確認出来る最古の文献は紀元前160年頃にローマのマルクス・ポルキウス・カト・ケンソリウスが記したとされる『De Agri Cultura』という農業書。この中にハムの作り方が掲載されています。英語が得意ではない筆者による大雑把に意訳としては

豚もも肉の塩漬け方法

ハム(豚モモ肉)を購入したら膝を切り落として塩漬けにしましょう。ジャーまたはポットの底に塩を塗り、豚モモ肉を敷いて全体を塩で覆います。肉が肉と触れないように注意しながら、別の豚モモ肉をその上に置いて同様に塩で覆いましょう。そうやって肉を重ねていき、終わったら肉が見えないように塩を上にも広げて全体を均します。

5日間経ったら上部と下部を入れ替えて再び塩で覆って容器へ。12日後に塩漬けにしていた豚モモ肉を取り出して塩を落とし、2日間は干し草の中に吊るしておきます。3日目になったら表面をきれいに磨いて油で拭きます。その後の2日間は煙の中に吊るしておき、3日目にそれをおろして酢と油を混ぜたもので表面を拭きましょう。そのあとは肉の保存部屋に吊るしておきます。

参考元:De Agri Cultura-162番“Method of curing hams and Puteolan”

という感じ。ここまでの工程で20日無いくらい、その後どのくらい吊るしておくのかは不明ですが、現在の生ハムの作り方と非常に近いと思います。塩蔵・燻製という流れについてはベーコンの作り方とも被りますが、モモ肉を使っていることからハムなんでしょうね…。

ハム作りに使用された豚は更に古い時代から家畜化されており、ガリヤ人は養豚に優れていたとの見解もあります。このためローマのハムについてはガリヤ人が考案したものがローマに伝わったと考えている研究者もいらっしゃり、ハム発祥の地はフランスという主張もあるようです。しかしガリヤ人は中国からハム製法を学んだなどの説もあり、ハムが発明された地域については分かっていないというのが現状。おそらくどこの地域でも潰した豚肉の保存方法を考え、塩につける・燻蒸するという方法にたどり着いた人々も珍しくなかったように感じます。どこかで発明されたものが人伝に広まったのではなく、各地でそれぞれ保存食としてのハムの作り方が考案された可能性もありそう。

クリスマスやイースターにハム?!

おつまみからサンドイッチの具・ハムステーキまで様々に使用されているハム。欧米ではイースターやクリスマスなどキリスト教の祝日の中をお祝いする料理としてもハムは使用されています。日本だとオードブルの前菜としてちょこっとハムが使われていることが多いですが、イースターハム(Easter Ham)やクリスマスハム(Christmas ham)と呼ばれるものはメインディッシュとして使われることも。なぜ七面鳥やローストビーフではなくハムなのか、調べてみるとキリスト教とそれ以前からの風習の兼ね合いが発端だったようです。

イースターにハムを食べる理由

3月末から5月前半までの日曜日にお祝いされるイースター。日本語だと“復活祭”と呼ばれるように磔刑に処されて死んだイエス・キリストが三日目に復活したことを記念したお祭りで、キリスト教ではクリスマス以上に重要視されている日でもあります。現在はキリスト教の祝日として周知されているイースターですが、その語源や日にちについてはキリスト教以前の宗教=古代異教のお祝いとの関係が示唆されています。有力視されているのはゲルマン神話の春の女神エオストレ(Estore)、もしくはゲルマン人が使用していた春の月の名前エオストレモナト(Eostremona)がイースターの語源となったという説など。

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また、キリスト教以前の時代にはイースターの頃合いに早春のお祭り・長い冬が明けたことをお祝いする風習もあったと推測されています。春の月名もしくは春の女神様の名前でもありますしね。イースターにハムが食べられるようになった理由としても、キリスト教との関わりではなく“キリスト教以前から続く異教の風習”、おそらくはゲルマン民族の春祭りが関係していると考えられています。

家畜は夏なら森に放しておけば勝手に餌を食べてくれますが、冬は人間が保存しておいたものを与えなくてはいけないですよね。そこで本格的な冬が始まる前に豚などの家畜を屠殺し、塩につけて吊るしておくことになります。人間が冬を越すための準備でもありますね。この保存用の肉をちまちまと食べて冬を越し、エオストレの春祭りを迎えると「もう大丈夫」とばかりに在庫を盛大に飲み食いしたと考えられます。冬の為に貯めておいた・春になれば無くても大丈夫な食材を大盤振る舞いしたという感じですね。

キリスト教化が進む中でこうした風習はイースターと融合し、イースターをお祝いするご馳走=イースターハムとして定着していった可能性が高いようです。そのほかユダヤ教は豚肉を食べないことからクリスチャンのご馳走として推奨された、イースター前には四旬節(大斎)があり肉や卵などの摂取が禁止されていた=イースターは肉食の解禁日だったこともイースターハム文化の要因として挙げられています。ともあれドイツでは少なくとも6世紀頃からイースターにハムが食べられていたようですし、北米でも初期移民たちはここぞという時用に貯蔵した豚肉を使ってイースターをお祝いしたそう。

クリスマスにを食べる理由

クリスマスはイエス・キリストの降誕を祝う日とされていますが、聖書にはキリストが誕生した日の記述はありません。このためクリスマスもイースターと同じくキリスト教を進めるため、キリスト教以前の宗教=異教のお祭りと融合もしくは上塗りする目的で12月25日と定められたと考えられています。12月25日頃、古代ヨーロッパでは各地で太陽が最も弱くなる日・弱っていた太陽が力を取り戻す日として冬至が重要視されており、地域によっては冬至=大晦日という認識もあったようです。

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ゲルマン文化圏ではクリスマスが制定される以前からユール(yule)と呼ばれる冬至祭が行われていました。ゲルマン神話(北欧神話)では10月31日からオーディンの狩猟団が地上にやって来る(ワイルドハント)という伝承があったこと・豊饒や繁栄を司る女神フレイヤが猪に乗って移動するという伝説があることから、オマージュも込めて冬至祭にハムを食べるようになったのではないかと推測されています。冬至祭は秋の恵みをふんだんに使った収穫祭の一面もありましたから、保存食兼ご馳走という位置付けだったハムが使われた部分もあるように思いますが。

ともあれ、クリスマスハムは別名“Yule Ham(ユールハム)”とも呼ばれます。北欧発・ドイツ発という部分では見解が分かれますが、元々は冬至祭(ユール)で食べられていたものであることがうかがえます。キリスト教は信者を拡大する際に異教の風習を適度に取り入れることで反発を抑えていたため、冬至祭のハムはクリスマスの伝統としても受け継がれていったのでしょう。

参考サイト:ハム&ソーセージ おもしろ百科(伊藤ハム)Food Timeline: history notes-meatWhy do we serve ham on Easter?The history of the Christmas ham

自分は「ハム」と言われるとボンレスハムや生ハムではなくロースハムを思い浮かべる、世界基準とは違う独自ハム文化を持つ日本人です。「ハム買ってきて」とだけラインが来たならば、ロースハムを買って行きます(笑) スペインに旅行に行った時にひたすら塩辛い生ハムを出され続けた記憶があるのですが、別に特産品をプッシュしていた訳ではなくあの一体ではハム=生ハムだっただけだと分かりました。ロースハム自体無いでしょうしね。洋食・海外のものだと思っていたら実は日本固有だった、っていう食べ物は結構多いのです。