アメリカンドッグ=英語でコーンドッグ
-その語源と起源説・類似食品とは?
高速道路のサービスエリア・遊園地などの行楽地で目にすることの多いアメリカンドッグ。持ち歩きのしやすさもあってお祭り・縁日などにも屋台が出ますよね。ハンバーガーやホットドッグよりも更にライトな、軽食と言うよりもおやつに近い感覚で食べられるのも魅力。外側がパリッと揚がって内側はふんわりした生地+ソーセージのコラボは時々妙に食べたくなるもの。自分以外にもそういう方はいらっしゃるようで…お手軽な冷凍食品もありますし、コンビニのホットスナックとしても販売されていますよね。
アメリカンドッグとは呼びませんが、同様の食べ物はアメリカを始めとして世界中で親しまれています。誕生したのは20世紀と比較的最近のことなのに、実はアメリカンドッグ起源や発案者は断定されていないってご存知でしたか?アメリカンドッグの呼び方や類似品、アメリカで論争が起こっているらしい元祖アメリカンドッグ販売店についてなど、ちょっと気になるアメリカンドッグ小ネタを集めてみました。
目次
アメリカンドッグについて
アメリカンドッグとは
アメリカンドッグは串を指したソーセージに、小麦粉やトウモロコシ粉などで作った衣(生地)を付けて油で揚げた食べ物のこと。世界中で似たような食べ物はファストフードもしくはジャンクフードとして食べられていますが、日本以外の国では“アメリカン”ドッグとは呼びません。
使用されるソーセージや衣について規定は特になく、魚肉ソーセージを使ったものやポークソーセージを使ったものなど地域やお店によって違いがあります。衣も日本国内ではふわっとしてほのかに甘いものがポピュラーですが、衣の厚やさ味についてもそれぞれですよね。頭が膨らんだ台形に近い形状のアメリカンドッグもあれば、わりとスレンダーなものもあります。
ついでに言えばミニアメリカンドッグであれば、縦長系・たこ焼きに似た球形まで形状も様々ですし、串が刺さっていないものもあります。100円ショップなどでは“レンジでアメリカンドッグ”が作れるキットもあるので、揚げている事がマスト条件とも言い切れないように感じます。なので日本での基準としては「ソーセージ類にホットケーキミックス系の衣が付けられていたらアメリカンドッグ」くらいの感覚で使われている言葉かなと。
英語ではコーンドッグという
日本ではソーセージを串に刺し、衣をつけて揚げた食べ物をアメリカンドッグと言います。しかしアメリカにはアメリカンドッグという呼び名は存在せず、同様の食べ物は“コーンドッグ(corn dog)”と呼んでいます。これはアメリカではトウモロコシ粉(コーンミール)が衣の主原料として使われているためなんだとか。
日本でアメリカンドッグと呼ばれているものはホットケーキミックスなど小麦粉を元にした衣でコーティングされていますから「ホットドッグはコーンドッグの日本語(和製英語)ではなく、日本で作られた独自の料理だ」という主張もあります。あるんですが、オーストラリアやニュージランドなどで食べられている“corn dog”はコーンミールではなく小麦粉生地で包まれたものも普通にみられるそう。アメリカでもコーンミールではなく小麦粉ベースのものがありますから、かつてはトウモロコシ粉を使っていた名残りくらいの感覚で料理名が残ったと言えるかも知れません。
ちなみにdogは中のソーセージを指すわけですが、なぜソーセージが英語・アメリカ英語でドッグ(犬)になったのかについては諸説あります。有力視されているのは細長く茶色っぽいソーセージを犬・特にソーセージを好んでいたドイツ人の連れていたダックスフンドに見立てたという説と、ケーシングされた細切れの肉は何肉か分からない→犬の肉を入れているのではと揶揄したことが始まりという説の二つ。由来はともあれ、ホットドッグやコーンドッグなどソーセージを使用した料理を意味する言葉として“dog”が使われています。
アメリカンドッグ(コーンドッグ)の仲間たち
北海道のフレンチドッグ
北海道ではアメリカンドッグではなく「フレンチドッグ」と呼ばれる食べ物があります。地域によってアメリカンドッグもしくはフレンチドッグと区別していない所や、魚肉ソーセージはフレンチドッグ・普通のソーセージはアメリカンドッグと区別しているところもあるようですが、北海道の「フレンチドッグ」はもっと分かりやすい違いがあります。それはケチャップ&マスタードではなく、砂糖をまぶしたものがフレンチドッグという区別。
アメリカンドッグに砂層をまぶすということから一部ではゲテモノ扱いされていますが、記事も一般的なアメリカンドッグとは違います。フレンチドッグの生地はアメリカンドッグよりも柔らかくフカフカ。ホットケーキミックス感が強いと言うか、ドーナッツの生地でコーティングされていると言うか……とにかく柔らかく空気感のある生地で、しかもほんのり甘いんです。生地だけ食べても十分に美味しいくらい(笑)
この甘くてふんわりした生地に、あまり味の強くない(おそらく魚肉)ソーセージが入っているわけです。ソーセージに砂糖をまぶすようなイメージだと「うえっ」と思いますが、パンともドーナッツとも言えない甘めの生地のおかげか、ソーセージの塩味が良いアクセントとして働いてくれます。これ、本当。一時期アメリカで流行っていると報道されたメープルベーコンドーナッツとか、それ系のお味なのではないかと。どの辺りがフレンチ=フランスなのかは道民も知りませんが。
ちなみに、この「フレンチドッグ」は北海道フードと呼ばれることもありますが、食べられているエリアは北海道の中でも釧路・十勝・北見などの一部地域だけ。馴染みのない地域の人間にとっては小旅行の時に目にして食べたことがある程度、もしくは全く存じ上げませんレベルです。札幌生まれの自分も家族旅行に行って初めて存在を知ったクチです。TVで北海道フードとして紹介されたものも、馴染みのない道民もいますと主張しておきたいところ。北海道広いですからね。栃木のソウルフードを千葉県民に尋ねるくらいの感覚だと思って頂きたい。
アメリカにも色々ある
アメリカにはコーンドッグだけではなく“コーン・パピーズ(corn puppies)”と呼ばれる食べ物もあります。パピーズは子犬(puppy)の複数形ですから、ドッグから派生した名称であることは想像がつきますよね。ではどんな料理がコーンドッグではなくコーンパピーズなのかと言えば、コーンドッグの小型版のこと。日本人的な感覚としてはフランクフルトではなく、お弁当サイズのウィンナーに衣をつけて揚げたアメリカンドッグとでも表現したいようなものです。英語では”mini corn dogs”もしくは”corn dog nuggets”と呼ばれているように、串が刺さっておらず、手で摘んで食べるタイプのものもあります。複数形なのは一個で提供されることはほとんどなく、複数形で販売・提供されるからなのだとか。
犬と子犬があるなら他にもあるのでは…と探したところ、“ベーグルドッグ(Bagel dog)”と呼ばれている料理もあるようです。こちらは小麦粉を使ったパン生地でソーセージを巻き、オーブンなどで焼き上げたもののこと。アメリカンドッグよりはお惣菜パンのソーセージロールに近い印象です。ベーグル生地に包まれているのもではなくとも、小麦粉を使ったパン生地であればベーグルドッグと呼ぶか、もしくは“プレッツェルドッグ(pretzel dog)”と呼ばれているようです。
もはや“ドッグ”とは全く関係ありませんけど、アメリカでは太巻きにコーンミールベースの衣をつけて揚げちゃった“Sushi Corn Dog”というものも存在しています。日本人からすると「ひょえー」と叫びたくなる代物かもしれませんが、ネット上で結構レシピも公表されているので一定数の人気はあるのかも。食べてみたいけれど、食べる勇気が出ないお料理です。
イギリス影響圏ではバダードソーセージ
イギリスなどでは似ているけれどアメリカンドッグとは違う、ソーセージをメインにした“Battered sausage(バタードソーセージ)”という食べ物も親しまれています。バタードソーセージはフィッシュアンドチップスの魚を揚げる時の衣と同じものをソーセージにまぶして揚げた料理で、バタードソーセージはアメリカンドッグ(コーンドッグ)とは衣の材料や配分が違うため、見た目からしてアメリカンドッグとはかなり違います。衣は薄く、ゴツゴツとした印象。日本人としてはアメリカンドッグの仲間というよりも、ソーセージのフライもしくは天ぷらとでも言い表したいような食べ物となっています。生地?衣?にも甘味はないですしね。
フィッシュアンドチップス用の衣を流用する、もしくはベーズにしている食べ物のため、バタードソーセージはフィッシュアンドチップスを出しているお店のメニューにあることが多いそうです。このためイギリスやアイルランドを始め、過去もしくは現在イギリスの影響が強かった国々でもバタードソーセージは食べられています。代表的なところではオーストラリアやニュージーランドなど。これに串を指したものをホットドッグ(hot dog)と呼ぶ地域もあるそうです。
アメリカンドッグの起源と歴史とは
始まりはソーセージ入りコーンブレッド?
アメリカンドッグ(コーンドッグ)はアメリカで考案された料理法。ホットドッグの場合はソーセージとパンのどちらもが紀元前から存在していたこともあって起源についても喧々囂々としていますが、アメリカンドッグはアメリカ大陸原産のトウモロコシ・ユーラシア大陸のソーセージが出会い、油で揚げるという調理法と組み合わさることで作られたもの。辿るとしても歴史は新しい部類ですし、実際に食べられるようになってから約100年程度しか歴史が無いことも分かっています。
油で揚げられるようになる以前から、コーンドッグの原型と言える食べ物は存在していたと考えられています。その根拠となっているのがオハイオ州のWagner Manufacturing Companyから1920年に発売された『Krusty Korn Dog Baker』という商品。これはホットサンドメーカーやワッフルメーカーに似た鉄製の調理器具で、コーンブレッドの生地の中にソーセージを入れて焼くとソーセージパンのようなものが手軽に作れるよ、というものです。
1929年に発行された食品業者向けのカタログAlbert Pick-Barthにも『Krusty Korn Dog Baker』が掲載されているページがあることから、揚げたアメリカンドッグ(コーンドッグ)が普及する以前からコーンブレッド生地の中にソーセージを入れた食べ方は普及していたと推測されています。棒に指す・揚げるという工程を抜きに、コーンミーズでソーセージを7包むという発想については1910年以前に存在していた可能性もありますね。
起源説&普及は1940年代頃
コーンミールとソーセージの組み合わせは20世紀初頭には既に存在していた可能性が濃厚。しかし、より直接的なアメリカンドッグの起源・発祥としては文献などの記述から1920年代~1940年頃であるという見解が主。出来てから100年経つか否かという料理ではありますが、起源や考案者については断定されていません。
というのも世界で初めてアメリカンドッグを作った・販売したと主張する地域や企業は多く、断定されていないどころか「元祖コーンドッグ」の主張はホットドッグ以上に混戦状態。コーンドッグの最初の発明者は世界で最も注目されている食品論争の1つであると称されることもあるほどです。発祥についてはアメリカでも決着が付いていない事柄ではありますが、ポピュラーな発祥説をいくつかご紹介します。
1938年もしくは1942年のテキサス州フェア発説
アメリカでコーンドッグの起源説としてよく紹介されるのが、カールとニール・フレッチャーのFletcher兄弟がテキサス州フェアで販売した“corny dogs”が起源ではないかという説。衣を付けて揚げたソーセージは1つ15セントで売り出され、テキサス州フェアの来場者にウケ、大ヒットしたと伝えられています。フレッチャー兄弟がこの料理を作ったのは、テキサス州でソーセージがあまり受け入れられていなかったからコーンミールでコーティングしようと思ったのではという説もありますが、詳細は分かっていません。
1941年、オレゴン州ポートランド説
1930年代後半にオレゴン州ポートランドで開業していたレストラン「Pronto Pups」も、元祖アメリカンドッグ販売店に数えられているお店の一つ。ご夫婦で経営されていた当初、彼らはビーチでホットドッグを販売していたそう。しかし雨が降ってパンが台無しになってしまったことがあり、注文に応じて「パン」を作って提供する方法を思いついたのだとか。
「Pronto Pups」で作られていたコーンドックは棒にホットドッグ(ソーセージ)を突き刺し、それをコーンバッターに浸して揚げたものであると伝えられています。私達が想像するアメリカンドッグそのものですね。この新しい食べ物は1941年のミネソタ州フェアでお披露目されて人気になり、米国特許商標庁の記録では1942年に「Pronto Pups」の揚げたホットドッグは特許を取得したそう。テキサス州フェアとほぼ同時期の話ですね。
1946年、イリノイ州フェア発説
イリノイ州スプリングフィールドにある「Cosy Dog Drive In」というレストランの創設者であるエド(Ed Waldmire)氏もアメリカンドッグを考案したと考えられる人として紹介されることがあります。彼は1941年頃、オクラホマ州にいた時にコーンドッグと呼ばれているサンドイッチを食べたと語っています。そのサンドイッチはコーンブレッドで焼き上げられたウィンナーだったと説明されていますから、まだフライではなく型に入れて焼き上げられタイプだったと推測できますね。
エド氏はコーンドッグの美味しさに感銘を受けたものの、作るには手間がかかるので何とかならないものかと考えたそう。そこでを父親がベーカリー事業に従事していた友人にも相談し、ソーセージに衣を付けて揚げたバタードソーセージ(Battered sausage)のレシピを改良してコーンドッグを完成させたそう。彼は完成した食べ物を“cozy dogs”として1946年に開かれたイリノイ州フェアで販売し人気を得ます。
レシピを作るのに参考にしたものとしてフレンチフライやバタードソーセージが挙げられていますし、オクラホマで食べたコーンドッグを改良しようと思った理由が準備に手がかかるですから、この“cozy dogs”は衣をつけて挙げられたものであったことは間違い無さそうです。また、それ以前にあったコーンドッグはソーセージをコーンミールの衣で包んだだけでしたが、食べやすいようにと棒に刺すようになったのも1940年代後半に「Cosy Dog Drive In」が初めて取り入れたという見解もあります。
コーンドッグの普及
誰が初めてアメリカンドッグ(コーンドッグ)を売り出したのかはさておき、1940年代に行われたステート・フェアの中でコーンドックは各地の人々の目に触れ、普及していったことは間違いないでしょう。1946年にはカリフォルニアのマッスルビーチでデイブ・バーハムがレモネードと棒に刺したアメリカンドッグ“Party Puffs”を販売し、フランチャイズチェーンの「Hot Dog on a Stick」設立へと繋がっていきます。1950年代から1960年代にかけてはコーンドッグのフランチャイズ店の設置・商品の広告が非常に多い時期でもあったのだとか。
日本でアメリカンドッグになるまで
日本のアメリカンドッグの歴史が気になるのですが、残念ながら調べてもほとんどヒットしません。こちらのブログさんによりますと、昭和39年(1964年)に東京都神田の「株式会社福三」さんが日本に初めて持ち込み、青山の東京ボウリングセンターの売店で初めて販売された…とテレビ東京「出没!アド街ック天国」にて紹介されていたことがあるようです。残念ながらバックナンバーから掘り出せなかったんですが;;
アメリカンドッグというアメリカ人ビックリな呼び名も、誰が付けたのかは定かではありません。おそらくアメリカっぽい料理であること・当時日本人が憧れていたアメリカの国名を付けることで売上アップを狙ったという面があるのではないかなと考えられます。
最近は韓国式ハッドグが人気
最近は韓国ブームの影響からか、独創性の高さからか、日本で韓国式アメリカンドッグ“ハッドグ”が注目されています。シンプルなコーンドッグタイプのものもあるようですが、具材にソーセージ+チーズの入っているチーズハッドグを始め、衣部分に様々なトッピングがされているものも多くあります。衣の外側に角切りのフライドポテトがくっついているカムジャハッドグや、ベ●ースターラーメンをまぶしたようなラーメンハッドグなどはインパクトもあり「インスタ映えする食べ物」としても人気となっています。日本にあるかは分かりませんが、韓国ではトルネード状に衣が付けられたタイプもあるそうですよ。
参考サイト:Corn Dogs/Corn dogs & Pronto Pups – Food Timeline
アメリカンドッグという微妙なネーミングから「日本人考案じゃない?」と思っていたアメリカンドッグ。呼び名は違うけれど、名前を裏切らずアメリカ発祥フードでした。日本では起源も国内普及も紹介しているサイトさんが殆どなかったので専ら英語サイトを調べていたんですが、誤ってまるっと自動翻訳かけてしまうとCorn dogのところが全て「トウモロコシ犬」に変換されるという残念な結果に(笑) 頭では胴体がトウモロコシになっている犬のキャラクターが尻尾を振っていました。。
韓国のハッドグも北海道のフレンチドッグもそうですが、衣に何かを混ぜ込んだりとか、味付けを変えたりしても結構イケるアメリカンドッグ。日本人ならポテトじゃなくてお餅を入れたり、青のり味にしてみても美味しそうですよね。HMを使うとミニアメリカンドッグっぽいものが簡単にできるので、お家で色々試してみても楽しいのではないでしょうか。滑ってしまってソーセージに衣が付きにくいので、作る時は最初にソーセージ→小麦粉→HMを溶いたものの順で行くと上手くいきやすいように思います。
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