夏至の意味や日にち・風習とは
…ヨーロッパの夏至祭についても紹介

夏至の意味や日にち・風習とは<br />…ヨーロッパの夏至祭についても紹介

夏至。一年で日が長い日ということは知っていても、梅雨時期でもありますしイマイチ実感のない日でもありますね。最も日が短い冬至は柚子湯に入る、冬至かぼちゃ・運ざかりの食べ物を食べるなどの習慣があります。しかし「夏至にすることは?」と聞かれても何も思いつかないのではないでしょうか。日本にはあまり夏至の風習はありませんが、全く何もない訳ではありませんよ。また日本とは逆に盛大に夏至を祝う北欧の夏至祭やシンボル・伝承などもご紹介します。

夏至は何の日?

夏至とは

夏至は北半球で、一年を通して最も太陽の位置が高くなる日。
日照時間が最も長くなる日・昼の長い日でもありますが、残念ながら日本では梅雨に入っている期間なので日照時間の長さが感じられないことが多くなっています。晴天時で比較すると北海道で約6時間半、東京では約4時間半くらい日照時間が長いのですが、年度によっては冬至の方が日照時間が長いケースもあります。

天文学上での夏至は、太陽が夏至点(太陽黄経90度)を通過する瞬間を指すとされています。このため日にちを指す場合は「夏至日(げしび)」と呼び分けることもあります。同じく冬至も太陽黄経が270度となる瞬間と定義されているため、冬至の瞬間に至る日全体は「冬至日(とうじつび)」と呼びますね。また夏至日から二十四節気で次の節気に当たる“小暑”の前日までの期間を夏至と呼ぶ場合もあります。

冬至についてはこちら>>

二十四節気について

夏至は二十四節気の第10でもあり、冬至と共に二十四節気を定めるために重要な日でもあります。
二十四節気は古代中国の時代に、季節感を正確に捉えるために考案された暦の仲間のようなもの。二十四節気が作られた当時、中国では月の満ち欠けの周期を基準に作られた太陰暦が利用されていました。新月から次の新月までを一ヶ月とする考え方ですね。しかし月の満ち欠けの周期で一年を計測すると、地球が太陽の周りを公転している周期とはズレが生じます。

純粋な太陰暦の場合は三年経つと約1ヶ月の差が生じ、8年経つと四季が一つ変わってしまいます。つまり、1月1日が夏になることもあるということ。数年で一ヶ月くらいのズレが出来てしまうようでは、生活や仕事をするための指標としては当てになりません。5月も末だから梅雨の準備をしようと思ったとしても、現在で言う2月だったり7月だったりブレブレな訳です。古代は現在のようなカレンダーとしてよりも、占いなどの面で重視されていた暦ではありますが、どうせあるなら四季をすごすための目安としても役立ってほしいもの。

そんな訳で考案されたのが、二十四節気。
二十四節気は「黄道」と呼ばれる太陽が移動する道を、文字通り24等分したもの。上記でもご紹介した通り、現在は定気法と呼ばれる太陽黄経から算出するのが主流ですが、古くは冬至から翌年の冬至までの時間を24等分する平気法(時間分割法)によって二十四節気が配置されていました。このため冬至は定気法でも恒気法でも一致しますが、夏至は定気法では冬至から1/2年=約182.62日後となるため、算出方法によって日にちが変わる場合もあります。

黄道イメージ

それはさておき、黄道を太陽が最も低い冬至・最も高い夏至の間で等分し、その中間に位置する春分と秋分を割り出すというのが二十四節気の始まり。この二至二分と呼ばれる冬至・夏至・春分・秋分は現在でも馴染みのある言葉ですね。二至二分の中間に四立(立春・立夏・立秋・立冬)を入れて八節となり、節から節の間をそれぞれ三等分したものが二十四節気となります。

二十四節気は太陽の位置(動き)を元にしているため、季節変化の指標としてはかなり正確太陰暦もしくは太陰太陽暦を使っていた人達からすると、季節を認識するための暦だったと言っても過言ではないかもしれません。特に季節や天候との関わりが深い農業の目安として、日本でも暦と合わせて重要視されていました。

ただし二十四節気は古代中国(中原)の気候を元にして作られたものなので、日本の気候変化とはピッタリ一致しないこともあったそう。そのため自分たちの暮らしに合うようにと、二十四節気を補強する“雑節”が取り入れられました。鰻が有名な“土用”や、日本では夏至よりも行事として様々な風習が残っている“半夏生”などが雑節に該当します。

日本の夏至はいつ?

夏至の日は6月21日になることが多く、数年に一度6月22日の日があります。このため近年は夏至の日にちの算出方法として、西暦を4で割った余りの日にちで判別する方法が使われてきました。余りが0・1・2の時は6月21日が夏至、余りが3になる場合は6月22日が夏至という計算ですね。2018年なら2018÷4=504と余り2となるので6月21日が夏至、2019年は504と余り3になるので6月22日が夏至という考え方です。

しかし2020年から、この計算式が変更され、下記のようになりました。

  • 2019年:6月22日
  • 2020年:6月21日
  • 2021年:6月21日
  • 2022年:6月21日
  • 2023年:6月21日

このまま2055年まで、余りに関わらず夏至の日はずっと「6月21日」のまま動かないことになっています。ちなみに2056年から2083年までは西暦を4で割って余りがなければ6月20日、余りがあれば6月21日が夏至日。

また夏至が6月21日もしくは6月22日のどちらかになるというわけではありません。1903年には6月23日が夏至でしたし、2056年以降は6月20日が夏至の日となることもあります。1904年から2055年までは6月21日もしくは6月22日ですが、2056年から2099年までは6月20日もしくは21日のどちらかが夏至になると予想されています。6月22日の夏至を体験したのがお年寄りの証になることもありそうですね。

日本に夏至の風習、行事食はある?

夏至の行事食はある?

浅学なせいかもしれませんが、夏至の日に食べる代表的な行事食はないようです。夏至の行事食としてはタコや半夏生餅(小麦餅)などが紹介されていることもありますが、こちらは夏至から11日目にある雑節“半夏生”の行事食といった方が正確な存在。夏至日から小暑の前日までの期間を夏至とする考え方もありますから、夏至の行事食と言っても間違いではありませんが。

しかし一般的な意味合いでの夏至=太陽が夏至点を通過する日に食べようというものではありませんね。夏至の日に特別な行事食が存在しないのは、田植え・農作業に忙しい時期で行事食を作る余裕が無かったためとも言われていますが、実際の所はどうだったのかは分かっていません。

半夏生についてはこちら>>

愛知県では無花果田楽

ポピュラーとは言い難いものの、尾張地方の一部地域では夏至に無花果(イチジク)に田楽みそをかけた“無花果田楽”を食べる風習があるようです。夏至の日に無花果田楽を食べるようになった由来は分かっていませんが、農作業に疲れた体を労るために食べたのではないかと考えられています。いちじくの実を切って加熱し田楽溝をかける…というのは初めて見ると驚きますが、味噌がイチジクの味を引き立てていて意外と(?)美味しいもの。好き嫌いはあると思いますが、とんでも料理のようなニュアンスはありませんでした。

夏至のイベント・お祭りはある?

日本では夏至の行事食がないだけではなく、大々的なイベントもほとんど行なわれていません。それでも伝統的な行事としては二見興玉神社の夏至祭がありますし、近年はキャンドルナイトや北欧の夏至祭をテーマにしたイベントが行なわれている地域もありますよ。

二見興玉神社の夏至祭

日本で行われている“夏至祭”として代表的なのが、三重県伊勢市にある二見興玉神社。境内にある夫婦岩も有名な神社で、古くは伊勢神宮に参拝する前に二見浦の海水で心身を清める禊をする「浜参宮」という慣わしがあったことも知られています。二見興玉神社が禊の場と考えられたのは、海中にある猿田彦大神縁りの霊石「興玉神石」があるため。シンボルと言える夫婦岩は興玉神石に対しての鳥居の意味があり、興玉神石のパワーに満ちた二見浦の水は神聖なものと考えられていました。

鳥居ともされている二見興玉神社の夫婦岩、夏至の時期になるとちょうど岩の間から朝日が昇ります。夫婦岩の間から昇る日を浴びながら、二見浦に入って禊を行う“夏至祭”が行なわれるようになったと言われていますよ。日本の神様の中で最高位の天照大神は太陽の化身とされていますから、最も日の長い夏至の日に天照大神を迎える意味合いがあるのではないかという説もあります。

キャンドルナイトイメージ

近年はキャンドルナイトも盛ん

近年は“でんきを消して、スローな夜を。”がキャッチコピーの『100万人のキャンドルナイト』が話題となったこともあり、各地で夏至のイベントとしてキャンドルナイトが開催されています。夏至に限ったものではなく、冬至・夏至などに電気を消してキャンドルの灯りを灯すというイベントですね。『100万人のキャンドルナイト』の企画自体は2012年に終了していますが、現在も夏至の頃になると各地でキャンドルナイトが開催されています。大規模なイベントにご家族や恋人と参加するほか、お家で短時間だけキャンドルを灯してみても良いかもしれませんね。節電意識を抜きにしてもほっこりした気分を味わえますし、部屋を暗くすると星がよく見えるなどもメリットもあります。

北海道のスウェーデン式夏至祭も

北海道当別町には“スウェーデンヒルズ”と呼ばれる、北欧型建築の家が立ち並ぶ住宅地があります。当別町はスウェーデンのレクサンドと姉妹都市提携ななされており、文化交流も行なわれています。このスウェーデンヒルズ内では夏至に近い日曜日になると、スウェーデンの夏至祭を再現したお祭りが行なわれています。「マイストング」といわれる夏至柱を立てたり、フォークダンスなどを楽しむことが出来るようですよ、

世界で行なわれる夏至祭とそのシンボル

日本では伝統行事として祝われることが付くない夏至ですが、ヨーロッパではキリスト教以前から各地で夏至の祝祭が行なわれていました。特に北海道の“スウェーデンヒルズ”でも夏至祭を再現しているように、スウェーデンほか北欧圏では現在も盛大に太陽に感謝する様々なお祭りが行われています。また北米でも一部のネイティブアメリカンの部族は太陽を敬う儀式を行っていたことが伝えられています。

ヨーロッパの夏至祭はかつて地域地域の宗教と結びついていましたが、キリスト教が布教されると6月24日の“聖ヨハネの日”と結びつきました。“聖ヨハネの日”は聖ヨハネの誕生日とされていることもあり、夏のクリスマスと称されることもあります。ちなみに夏至は英語で“the summer solstice”と言いますが、夏至祭については“ミッドサマーディ(Midsummer Day)”とも呼びます。

北欧で行われる夏至祭

夏至祭に最も力を入れているエリアと言っても過言ではないのが北欧圏。日照時間が短いということもあり、古くから太陽が最も長い夏至の日には様々な行事が行われていたことが分かっています。キリスト教が導入され“聖ヨハネの日”という意味合いが強くなったと言われていますが、キリスト教以前から行なわれていた夏至の風習も残されているそうですよ。国や地域によっても違いはありますが、夏至祭の風習として代表的なものをご紹介します。

夏至の焚き火イメージ

焚き火(聖ヨハネの火)

ヨーロッパの夏至祭で多く見られるのが焚き火。聖ヨハネの日と結びついたことから現在は“聖ヨハネの火”と見做されることが多いようですが、それ以前にはボーンファイヤーと言われるように動物の骨が焼かれており、燃え方によって占いをしていたそうです。

日が長いはずの夏至に多くの地域で焚き火が使われているのは、夏至の日を堺に力が弱まっていく太陽に力を与えるためだったと考えられています。焚き火は暗闇を照らしてくれる存在でもありますから、日が弱くなることで活発化する悪霊や魔女などを追い払うという意味もありました。デンマークでは直接的に藁や布で作った魔女の人形を焚き火に焚べて燃やすという習慣もあります。

日本の左義長のように単に焚き火を燃やすのではなく、焚き火を囲んで踊りを踊ったり、焚き火を飛び越えたりとアクティブ。焚き火を飛び越えると農作業に必要な力が付くと言われていたり、国によっては“恋人同士が手をつないで飛び越えると結婚できる”という伝承があることからカップルチャレンジが行なわれたりもするそう。またリトアニアでは夏至の焚き火の火は福を呼ぶものと考えられており、新婚夫婦が家に持ち帰る風習もあります。

ポールを立て踊る

北欧を中心とする地域で、焚き火と同じくらいい夏至祭のシンボルとしてポピュラーなのがポール。ポールと言ってもただの棒ではなく、大きな柱を草花で美しく飾り付けたもの。夏至柱やスウェーデンの言い方でマイストングとも呼ばれ、豊穣のシンボルとされています。似たものに五月祭にメイポールを立てて周りでフォークダンスを踊る、というヨーロッパ風習もありますね。メイポールも夏至柱も元は同じだったものの、、北欧では気温が低く草花が育っていないことから夏至に持ち越されたとも言われています。

夏至柱(マイストング)を広場に立てたら、人々は柱を回るようにフォークダンスを踊ります。必須ではないですが、民族衣装を着て参加される方が多いそう。日本で言うところの盆踊りに通じるものがありますね。踊り疲れたら夏至祭のごちそうを食べ、お休みして、また踊って、夜の焚き火に繋がると長丁場なのだそうですよ。夏至の行事食としてはスウェーデンではニシンの酢漬けが、ノルウェーやデンマークではプルソと呼ばれるソーセージが代表的です。国によって食べられるものは違いますが、各国の伝統食が食されることが多いようです。

ハーブ・薬草を摘む

古くは夏至の露には病気を治す力がある、一番長く輝く太陽を浴びたハーブは香りがよく薬効高いと考えられていました。こうした伝承から夏至の前日の夜から明け方にかけては沢山のハーブが摘まれました。特に夏至に採取したセントジョーンズワート(St John’s Wort)は薬効が高いと考えられていたのだとか。

恋のおまじないも…

ヨーロッパで夏至は愛を象徴する日とも考えられ、愛を確かめ合ったり今後の恋愛を占ったりする日でもあります。焚き火を飛び越えたり、火を持ち帰る風習もその一環と言えますね。スウェーデンでは未婚の女性が7本の花を拾って枕の下に置くと夢に将来の夫が現れるという伝承がありますし、フィンランドなどでも本数や花に違いはあれど同じ様な言い伝えがあるそう。そのほかにも至の夜に交差点に立っていると未来の夫と巡り会えるなど占いやおまじないのニュアンスが強いものから、夏至の真夜中に咲く赤いシダの花を摘むと夫婦円満など願掛けのようなものまで、様々な恋(愛)に関わる言い伝えが各地にあるようです。

イギリス

イギリスにあるストーンヘンジも、毎年夏至になると多くの方で賑わいます。普段ストーンヘンジは立入禁止で遠くから眺めることしか出来ませんが、一年間に四回(夏至・冬至・春分・秋分)だけは柵が取り払われ近付けるようになっています。加えて夏至の日にはヒール・ストーン(サンストーン)と呼ばれる石と、中心にある祭壇石を結ぶ直線上に太陽が昇るので、その光景を見ようと人が押し寄せるそう。

参考サイト:夏至|日本文化いろは事典Summer Solstice Celebrations Around Europe

日本では「今日夏至なのね、ふ~ん」という感じですが、北欧を中心としたヨーロッパ文化圏では結構重要視されている夏至。愛を象徴する日と考えられていたことや、聖ヨハネの誕生祭という位置付けもあってか、ヨーロッパで夏至はクリスマスと同じく“大切な人と過ごす日”でもあるのだそうです。キャンドルナイトのような家族とのコミュニケーションに繋がるミニイベントを行ってみても良いかもしれませんね。

この記事を書くにあたり海外サイトを調べたのですが、ドルイド(ウィッカ?)式の夏至の祝い方として「太陽の色をした食材を使って料理を作る」ということが紹介されているページも結構ありました。オレンジジュースとかカボチャとかを使うんだって。大体の地域で夏至はまだ梅雨ですが、夏を先取りするような感じで色鮮やかな料理を“我家の定番”にしちゃうのも良いかもしれません^^