トリック・オア・トリートの意味とルールは?
-ハロウィンの定番お菓子も紹介♪

トリック・オア・トリートの意味とルールは?<br />-ハロウィンの定番お菓子も紹介♪

ハロウィンの日には、小さいお子さんが「トリック・オア・トリート(Trick or Treat)」と言ってお菓子をもらう風習もあります。ハロウィンの歴史とジャック・オ・ランタンの伝説に続き、今回はハロウィンになぜ「トリック・オア・トリート」と言って子どもが菓子をもらって歩くようになったのか、その由来や歴史について紹介します。日本ではあまり知られていない、ハロウィンの定番お菓子についても簡単にだけ^^;

「トリック・オア・トリート」について

「トリック・オア・トリート」の意味

ハロウィンのフレーズと言えば「トリック・オア・トリート(Trick or Treat)」がお馴染み。始まりは悪霊にの姿をした人に食べ物を渡すことで、悪霊に食べ物を捧げて満足させて追い出すという儀式に基づいているという見解もあります。しかし、現在行なわれているのは単に子供が楽しめるハロウィンの行事として。日本での“お月見泥棒”や、北海道で七夕に行なわれる“ローソクもらい”などと似たような感覚ですね。

ちなみに“Trick or Treat“は「お菓子をくれないと悪戯するぞ」と和訳されていますが、使われている単語はイタズラともてなす(施す)という2つだけ。さらに文法に則って見ればTrick(いたずら)-or(しないと)Treat(もてなす)と、悪戯しないならお菓子をあげるよという意味にもとれる言葉。この不思議なフレーズ、元々は「Treat me or I’ll trick you」というのが正式な言い方だったことが分かっています。これが短縮されて“Treat or Trick“になり、発音の関係上言いにくいので逆転して“Trick or Treat“になったと考えられています。

「トリック・オア・トリート」の歴史

ハロウィンの起原はケルトのサムハイン祭とされていますが、古代ローマの文化とキリスト教の影響も受けています。ヨーロッパではキリスト教が非常に力を持つ宗教であり、古くは各地の信仰を駆逐してキリスト教化することに力を注いでいました。諸説ありますが、サウィン祭の風習を無くすためにキリスト教は11月1日を「諸聖人の日(All Saints’ DayもしくはAll Hallows’ Day)」に制定したという説が有力です。

ハロウィンの起源と意味についてはこちら>>

そして「諸聖人の日」の前夜祭であるHallow Eve(ハロウ・イブ)についても、キリスト教徒の間でこれまでとは別の風習が行なわれるようになります。それが「ソウリング(souling)」と呼ばれる風習。このソウリングについても、起原はキリスト教以前の民間信仰にあるという説もありますが、各地で共通して行なわれる伝統となったのはキリスト教以降と考えられています。

ソウリングは古くはハロウイブだけではなくクリスマスイブなどにも行なわれていたもので、「諸聖人の日」を挟んだ10月31日から11月2日までのAllhallowtideの間に家々を回る子供や貧者にソウルケーキ(Soul cake)と呼ばれる焼き菓子やお金を渡すというもの。ただの施しというわけではなく、賛美歌を歌ったり亡くなった方に祈りを捧げる対価なのだそうです。14~15世紀頃には「諸聖人の日」を中心としたAllhallowtideの風習として、ソウリングが行なわれていたことが分かっています。

この風習もまた19世紀にアメリカへと伝わり、ハロウィン行事の一つとして定着しました。と言ってもハロウィンが国内で広く祝われるようになったのは1900年代に入ってからですし、記述としても“trick or treat”が初めて登場するのは1927年カナダ『Blackie Herald Alberta』以降。1930年前後にはアメリカでも記述が見られますが、第二次世界大戦によって砂糖が不足していた1920年代~1940年代はまだマイナーなイベント。終戦後にアメリカ・カナダの各地で子供のためのイベントとしてお菓子をもらう“trick or treat”が広がっていったと考えられています。

この頃にはサウィン祭の「死者や悪霊を慰める」ことでも、キリスト教の行事としてでもなく、子供たちと近所の方との地域交流イベントのような形になっていたようです。1950年代に入るとユニセフが『Trick-or-Treat for UNICE』と名付けた子供達への募金プログラムを開始したり、1952年にはドナルドダック・シリーズの一つ『Trick or Treat(邦題はドナルドの魔法使い)』がウォルト・ディズニーから公開されるなどもあり、トリック・オア・トリートでお菓子をもらう風習は一気に普及していきました。

「トリック・オア・トリート」のルール

日本では防犯面での問題もあり、子供たちが「トリック・オア・トリート!」と言いながら近所を練り歩いてお菓子を貰うイベントはほとんど行なわれていません。なので馴染みのない話ではありますが、アメリカではハロウィンの夜に近所の方に“Trick or Treat“をするためのルールがあります。

地域にもよりますが、子どもが尋ねる時間は大体午後5時30分から午後9時30分位。子供の受け入れを表明する合図は大雑把に言うと家の明かり。家の外にハロウィンの装飾があり電気がついているか、ドアやお庭にジャック・オ・ランタンなどを飾り付けており子ども達が来る時間に玄関灯が点いていれば「お菓子を置いてあるから来ても良いよ」という合図。逆にハロウィンの装飾品を出していても明かりが点いていなかったり、ハロウィンムード皆無のお家は「来ないでね」という事になるそうです。

ハロウィンでお菓子をもらう子ども(トリック・オア・トリート)

子供たちは訪問OKなお家の前で「トリック・オア・トリート!」と声を掛け、大人は「ハッピー・ハロウィン!」とお返事をしてお菓子を渡してあげるのが基本的な流れ。子供も大抵はOKサインを出しているお家に行くのでスムーズに進行していきますが、たまに子供たちがどんな悪戯をするか楽しみにして“悪戯”を選ぶ方もいらっしゃるんだとか。

ハロウィンの定番お菓子とは

日本ではカボチャを使ったスイーツや、ジャックオランタンやモンスターなどのキャラクターを模したお菓子がハロウィンには多く出回るようになっています。しかしハロウィンが楽しまれるようになったのは最近ですし、また定番と言えるようなお菓子は無いのではないでしょうか。

対して“Trick or Treat”が盛んなアメリカで販売されているキャンディーのうち4分の1がハロウィンで消費されるとも、全米のハロウィン用のお菓子の購入額は年間合計で約20億ドルとも言われています。その中には定番と言えるものもありますし、ハロウィンの発祥の地とされるアイルランドなどでは伝統的な行事食もありますよ。

キャンディーコーン

アメリカのハロウィンで定番なのが、トウモロコシの粒を模した三角形で、上から白・オレンジ・黄色の三色になっているキャンディーコーン(candy corn)と呼ばれる飴です。そのまま食べるのは勿論、カップケーキなどのデコレーションとしても使われています。ちなみにハロウィン以外に、白・緑・赤色の配色のクリスマスコーン、上が白で下がパステルカラーの二色構成になっているイースターコーンなど、イベントに合わせた色違いシリーズもありますよ。

キャンディーコーンが作られたのは1880年代。Wunderlee Candy Companyの社員が開発し、最初に販売したと言われています。当時はアメリカで農業に従事されている方が今よりも多く、子供達にあげるキャンディもカブや栗など農業に関係した形をしたものが好まれていました。当時は革命的であった三色のデザインのキャンディではありますが、あまり売れなかったそう。

コーンキャンディー普及するようになったのは1898年にGoelitz Candy Company(現在のJelly Belly Candy Company)が、ニワトリのイラスト付きのパッケージ「チキンフィード(Chicken Feed)」として売り出して以降という説が有力です。当時のヨーロッパ系移民の大半にとってトウモロコシは、飼料用、特に豚や鶏の餌というイメージだったため。トウモロコシもカボチャと同じくアメリカ大陸原産の食材ですが、当時はまだ品種改良が進んでおらず現在のように美味しいトウモロコシは作られていたかったようです。なのでパッケージにニワトリが使われていたんですね。

1930年代~1940年代にかけては第二次世界大戦の影響で砂糖が不足し、キャンディーの製造は一時衰退します。しかし戦後になって砂糖が出回るようになると、各地で子供たちが“Trick or Treat“でお菓子を貰う行事が定着したこともあってキャンディーの需要も高まりました。ハロウィンにキャンディーコーンが定番になったのは、当時まだ珍しかった色の鮮やかと、価格が安かったことが大きな理由のようです。味は日本人だと好き嫌いが分かれるところで、様々なお菓子が発売されている現代ではアメリカやカナダでも「美味しくない」と嫌う方もいるそう。

キャンディーコーンのイメージ

りんご飴

アップル・ボビングでもご紹介したように、特にカボチャがポピュラーになる以前のハロウィンではリンゴが定番の食材でした。そのためお菓子にもリンゴが使われており、ハロウィンキャンデーとしてもリンゴを使ったものが伝統的に食べられています。

ハロウィンに食べられているリンゴ飴は、大きくキャンディアップル(Candy apples)・トフィーアップル(Toffee apples)・キャラメルアップル(Caramel apples)の三種類があります。キャンディアップルは日本のお祭りでもお馴染みの“りんご飴”と同じく、小振りなリンゴに飴をコーテングしたもの。キャラメルアップルも名前の通り、小さいリンゴにキャラメルを絡めたものを指します。

トフィーアップルの“トフィー(タフィー)”というのは、イギリスが発祥のバターと砂糖を使ったお菓子。キャラメルよりも高熱で仕上げることで、パッキとした硬い食感になることが特徴です。トフィーアップルというのは、このキャラメルと飴の中間のようなトフィーでコーテングした飴のこと。一応全て製法が違うのですが、キャンディーアップルという総称として使われることもあるようです。

カボチャのお菓子/ハロウィンケーキ

こちらは日本でも親しみのある、カボチャスイーツ。アメリカではハロウィンに限らずパンプキンパイが親しまれていますし、カボチャを練り込んだクッキーやマフィンなどのお菓子類もありますね。チーズケーキのパンプキン味・パンプキンチョコ・パンプキンプリンなど多くのお菓子の「かぼちゃ味」バージョンが各社からも期間限定商品としてカボチャを使ったお菓子が売り出されますね。スイーツ類に限らず、カボチャをくり抜いて中にシチューを入れるなどのハロウィンの食事にもカボチャは活用されています。

ハロウィンケーキはカボチャを使ったケーキに限らず、ハロウィンに使われるものを模ったケーキ類全般を指します。カボチャのジャック・オ・ランタン形に作られたケーキであったり、ケーキのサンタさんポジションにゴーストがいる・お墓になっているものなどですね。日本では可愛らしいモンスターたちが使われることが多いですが、アメリカでは蜘蛛型のケーキとか、結構リアルな目玉型とかシュールなものも作られています。ガイコツ・カボチャ・コウモリ・クモ・ネコなどをモチーフにしたキャンディーやチョコなども多く流通しますから、これをハロウィンケーキの飾り付けに使うことも多いようです。

その他

バームブラック(Barm Brack)

アイルランドとイギリスでは、ハロウィンの伝統的なお菓子としてバームブラックと呼ばれる焼き菓子が食べられています。バームブラックはアイルランドが発祥の、レーズンなどのドライフルーツを練り込んだパンもしくはフルーツケーキ。カブのランタンと同じくらいに歴史が古いと考えられています。

食事・デザートとして食べる以外に、バームブラックにはもう一つ楽しみがあります。ドライフルーツだけではなく、バームブラックには指輪・布切れ・コイン・えんどう豆などが仕込まれています。指輪は結婚、布切れは貧困などそれぞれのアイテムには意味があり、自分が食べるバームブラックから何が出てきたかで占いをするんです。フォーチューンクッキーを兼ねたような行事食ですね。

古代ケルトの考え方で、ハロウィンの日(10月31日)は“この世と霊界の境界があやふやになる”とされていました。このため古くは占いに適した日とされており、真夜中に明かりをつけずに未婚の女性が鏡を見ると結婚相手が見える・林檎の皮を細く長く剥き続けると長生きするなど、おまじないのような伝承もあります。バームブラックもそうした風習の名残と言えるかもしれません。

ソウルケーキ(Colcannon)

こちらもアイルランドやイギリスでハロウィンによく食べられている焼き菓子…として紹介されます。しかしケルト文化やアメリカ式ハロウィンではなく、カトリックのAllhallowtide期間もしくは「諸聖人の日前夜祭(All Harrows eve)」の行事食としての意味合いが強いものとなっています。子ども達の“trick or treat”の原型と考えられるソウリング(souling)の際に、子どもや貧しい人達に配った歴史がありますしね。

ソウルケーキはケーキと呼ばれているものの、私達が想像する“ケーキ”とは少し離れた存在。中央に十字の切れ込みを入れるか、十字になるようにレーズンやキャラメルを飾るのが特徴。地域によってかなり作り方にも違いがあり、食感や見た目としてもスコーン系からショートブレッド・クッキー系まで様々。味付けもスパイスを使うことが特徴ですが、使用されるスパイスは地域や家庭によって違うそう。個人的にはスパイスクッキーならぬ、スパイスビスケットという印象です。

カラベラ/シュガースカルについて

メキシコでは11月2日の「死者の日(Dia de los Muertos)」にカラベラ(骸骨)の形に砂糖やチョコレート・ナッツなどで作られたお菓子を食べる風習があります。メキシコにおける「死者の日」は諸聖人の日の翌日にローマカトリックが定めた日程ですが、メキシコではアステカの風習と習合して“死者の魂が戻ってくる日”と日本のお盆のようなイベントとなっています。

メキシコの「死者の日」は元々はアステカ暦で9番目の月の行事だったのが、スペインに侵略された関係でカトリックに合わせた11月に変更されました。日程は11月1日と11月2日の二日間とされていますが、地域によっては10月31日に前夜祭をすることもあります。こうした関係からドクロの形をしたお菓子・鮮やかに彩色されたカラベラ(メキシカン・スカル)グッズなどもハロウィンに流用されています。

メキシコにはハロウィンとは別に、骸骨風のフェイスペイントや仮装をしてパレードをする風習があります。しかしメキシコの「死者の日」というのはハロウィンのように悪霊に扮するイベントではなく、亡くなった人を供養する日本の“お盆”的なニュアンスが強いもの。ハロウィンの仮装のスカルは恐怖の対象としてですが、メキシコの死者の日に登場するカラベラも恐怖の対象では無いんですね。メキシコで頭蓋骨が親しまれている理由については諸説ありますが、元々先祖の髑髏をお祀りする風習があったことだけではなく、スペインに征服されていた時代には“骨になれば自由だ”というニュアンスがあったという見解もありますけど。

こうした理由から、ハロウィンの仮装の衣装としたり、メキシコ風のスカル(sugar skull)のフェイスペイントを使うのは文化の盗用(cultural appropriation)だと批判する声もあります。日本でもハロウィン時期になると華やかで可愛らしいシュガースカルグッズが出回りますが、使われる側の心境は…。

参考サイト:Halloween – WikipediaWho Invented Candy Corn?第58話 Soul cake/ Harcake ~ソウルケーキ~

アイルランドで食べられている「バームブラック」なるお菓子。指輪やコインを入れるのは衛生的にちょっと心配ですけど、マーブルチョコとか飴玉入れたら楽しいと思うんだ。それで作ってみようかなと、得意ではない英語と睨めっこして二十分……悩んで止めました(苦笑)トラディショナルレシピだと私にはちと面倒・簡易版レシピで作るならばフルーツケーキ買えば良くないかと心の声が言うのです。マメな方はハロウィンのご馳走にせひ←

ハロウィンの食べ物や装いについて調べていて、メキシコ文化との問題を初めて知りました。日本は色々と宗教や文化面では緩い国なので、パレードに芸者や忍者がいても笑って終わらせる方が多い気はしますが(私は着物ゾンビがいても不快にはなりませんし)。確かにハロウィンで神父の格好をしたら法律で罰せられるのに、自分達の格好を勝手にモンスターの一種にするなと言いたくなる気持ちも分からなくはないですね。