ウェデイングブーケの由来と意味
-ブートニアが必要な理由とは?
ウェディングドレスを着る時にはセットと言って良いくらいの存在、ウェディングブーケ。日本では単に「ブーケ」と言ってもウェディングブーケを連想するほど、結婚式のイメージが強いですよね。なぜ結婚式に花嫁さんがブーケを持つようになったのか、花婿がブートニアと呼ばれる花飾りをつけるのはかぜか、その起源とロマンチックなエピソードをご紹介します。結婚式にはブーケとブートニアを使いたくなる…かも。
目次
ウェディングブーケ/ブートニアとは
ウェディングブーケ(ブライダルブーケ)とは
ウェディングブーケは結婚式などの時に、花嫁が持つ花束のこと。
洋装で結婚式を挙げる場合には、ウエディングドレス・ウエディングベール・ウェディングブーケの3つが花嫁衣装に欠かせないアイテムと言えるではないでしょうか。近年は様々なタイプの花束がブライダルブーケとして使われるようになっていますが、ウェディングドレスと同じく白い花を基調とした花束が多く使われているのも特徴。
ちなみに日本で「ブーケ」と言うと花嫁さんが持っている花束を連想することが多いと思いますが、ブーケはフランス語で花束全般を指す“bouquet”が語源。その言葉が伝わる前から日本にも花束は存在していたので、習慣的に普通の花束=花束、結婚式で花嫁が持つ花束をブーケと呼び分けるようになっているようです。ただブーケは花束を意味しているので、ウェディングブーケもしくはブライダルブーケと呼ぶのが正確ではあります。
ウェディングブーケは古い時代、男性がプロポーズをする時に女性に渡した花束が起源と考えられています。花嫁の持つブーケはプロポースされた証=結婚する花嫁の幸せの証でもあるわけですね。なので伝統的にはウェディングブーケの費用は男性持ちとなっています。
白いお花が多く使われているのは、花嫁の純真無垢なイメージを表現するために使われています。白が純白・純潔さを連想させる色というのは世界共通なのかもしれませんね。そのほか邪悪なものを跳ね除ける色であると信じられていたためという説もありますよ。お花の色については後付け的な部分もあるのでこだわり過ぎる必要はありませんが、プロポースされて結婚式を迎える喜びを表すアイテムとして結婚式には揃えると良いのではないでしょうか。
ブートニアとは
ブートニアは新郎の左胸に飾る花飾り・コサージュのこと。
ブートニアという言葉はフランス語でボタン穴を意味する“boutonniere”が語源で、ジャケットの襟についているボタン穴に通す事から新郎が付ける花飾りの呼称としても使われるようになったと言われています。現在は左衿にピンで止めるコサージュタイプのほうが主流ですが、呼称はそのまま残っている形です。
ブートニアについても、求婚を受け入れた女性は渡された花束から一輪を抜き取り男性の胸に飾る…という古い時代の風習に倣っていると言われています。言ってみれば、ウェディングブーケがプロポースされた証・花嫁の幸せの証であるならば、ブートニアはプロポーズが成功した花婿の幸せの証ですね。
近年は費用の関係から男性がブートニアを付けなかったり、演出・ファッションの関係から女性のブーケとは別の花を選ぶ方も珍しくありません。しかし花束から一本を男性につけるという由来から、ブートニアとして使う花はウェディングブーケの花と合わせるのが正式な形とされています。ブーケと同じ花のブートニアはプロポーズをして受け入れられた証でもありますから、迷ったときには花嫁のブーケとお揃いのものを選んでみて下さい。
ウェディングブーケの起原説と歴史による変化
全ては古代ローマの風習から?
諸説ありますが、ウェディングブーケ(ブライダルブーケ)の起源は古代ローマで行われていたプロポーズの風習にまで遡るという説が一般的です。古代ギリシアやローマには男性は愛する女性のために野山で花を摘み、花束を作って女性に渡すことで結婚を申し込むという風習があったと伝えられています。女性が男性のプロポーズをお受けする場合は、貰った花束から一輪だけ花を抜き取って男性の胸元に挿すというのが婚約の流れであったのだとか。
ウェディングブーケはプロポーズしてもらった証、ブートニアはプロポーズを了承してもらった証、とも言えます。花嫁の持つウェデイングブーケと、花婿が左胸に挿すブートニアは「花嫁のブーケに合わせる」ことが定番とされていますが、それもこうした由来あってのことでしょう。現在では愛を誓った証として結婚指輪を交換しますが、昔はお花が指輪の代わりであったとも言えますね。
ただし、ローマの結婚式ではお花を束ねたブーケではなく花輪・花冠を身に着ける形でした。花嫁と新郎はこれから始まる新しい人生と希望・豊穣を象徴するものとして花輪を身に着けていたのだそうです。豊穣を願う意味もあったことから、お花だけではなく、彼らにとって豊穣の象徴であった穀物も編み込んでいたそうですよ。私達の想像するウェディングブーケとは全く別物ですが、この花輪をウェディングブーケの起源と見る説もあります。
中世には花嫁のお守り(悪霊祓い)に
古代ギリシアやローマでは結婚式に花冠をつけていたと言われていますが、中世頃になると芳香のある植物を使い「悪霊を寄せ付けないようにして身を守る」という考え方が広まります。人々はローズマリー・ディル・タイムなど香りの良いハーブを束ねた“ノーズゲイ(nosegay)”もしくは“タッジーマッジー(Tussie Mussie/Tuzzy Muzzy)”と呼ばれる花束を作り、魔除けや虫よけとして活用していました。悪いものから身を守って幸せな生活を遅れますように…という願いを込めて、こうしたハーブ・スパイスを束ねたものをお守りがわりに新婦が持つようになったと考えられています。事実か不明瞭とされる古代ローマの風習ではなく、中世のタッジーマッジーがウエディングブーケの起源という説もあります。
余談ですが、古い時代には各国共通で強い芳香を持つものは悪しき物を払う力があると考えていました。日本では香りによる邪気払いが元となっている風習に菖蒲湯などがありますし、ヨーロッパではペストの感染を防ぐためにハーブを活用していたという歴史もあります。病気は悪霊が空気を汚している=汚染された空気を清める必要があるという考え方だったのかもしれませんね。実際に香気の強い植物は抗菌・消毒作用を持つものが多いので、あながち間違いでもなかったり。先人たちの知恵というのはすごいものですね。
体臭対策という説も…
ちょっと残念だけど、現実的な説。15世紀頃、ヨーロッパでは特権階級を除いて毎日お風呂に入るという習慣はありませんでした。服も今みたいに小まめには着替えられなかったそう。なのでブライダルブーケなどの飾り物は花嫁さんの体臭を誤魔化す、香水のような役割を果たしていたのではないかという見解もあります。
上で紹介した“悪霊を寄せ付けない”説とも重なりますが、当時のウェデイングブーケにはバラ・ローズマリーなどのハーブ類・ニンニクの茎などが使われていました。フローラルな香りがいっぱいの現在のウエディングブーケと違い、当時のものはかなりスパイシーで強い香りが漂っていたと考えられます。イメージ的にはお花屋さんの香りではなく、カレーとか香草焼きっぽいですよね。
海外サイトでは“当時の人々は一年に一度、5月にしか入浴しなかった”という噂が書かれていることもあります。さすがに一年に一回というのは盛り過ぎな気もしますが、乙女と言えども人間。多少なりとも体臭はあったでしょうし、気にしていたと考えられます。体臭消しだけのために花嫁がウェデイングブーケを持っていたとは考えにくいですが、体臭対策としての面があったことも否定はできませんね…。
ウエディングブーケが広まったのは1800年代
ウェディングブーケの起源説をご紹介しましたが、中世までは花は花でも花輪が使われていたり、魔除けが主体だったりと、現在のウェデイングブーケとは少し違うタイプのものが使われていました。それ以前から結婚式に花束(ウエディングブーケ)を持つ風習はあったと考えられますが、ウェデイングブーケが現在のような形になり、結婚式の定番となったのは1800年代以降と考えられています。
ウェディングブーケが広まるようになったきっかけは1840年のヴィクトリア女王とアルバート王子の結婚式と考えられています。ヴィクトリア女王は結婚式にギンバイカ(マートル)とオレンジの花を使った花冠を身に着けました。この花冠が時代と共にブーケへと変化したと言われています。時代による変化か、女王と同じものを身に着けるのは不敬と感じで形を変えたのかは定かではありませんが…。
ちなみに結婚式の後にヴィクトリア女王は使用したギンバイカの小枝を植え、現在でもイギリス王家の花嫁たちは結婚する時にヴィクトリア女王が植えたギンバイカを使ってウエディングブーケを作るのが伝統となっています。ヴィクトリア女王は純白のウエディングドレス+レースを使った(透けて見える)ウエディングベールという姿を初採用したとも言われていますから、現在の結婚式スタイルに大きな影響を与えたお方とも言えますね。
それはさておき、20世紀に入ると庶民も貴族文化を取り入れ、それを簡略化したような結婚式を挙げるようになります。なので、白いウェディングドレスにブーケを持つ花嫁の姿が一般的になったのは1900年頃。同時期にブーケが重要なアイテムだというアピールの一つとして、古代ローマのブーケ・ブートニアの風習も再び脚光を浴びるようになったのではないかと考えられています。そこから各々の好み・各国のお花にまつわる伝承・流行などによってアレンジが加えられ、現在のように多種多様なウエディングブーケが使われるようになっていきました。
花言葉をメッセージにする風習も
起源は定かではないものの、floriography(花言葉)が広まったのも19世紀のヨーロッパから。当初は上流階級の方々に花にメッセージを込めることが流行し、新郎が新婦に愛を伝えるためのメッセンジャーとしても花・花束が使われるようになりました。現在では花もしくはブーケとしてみた場合のビジュアルからウェディングブーケを選ぶ方も多いですが、伝統的なウエディングプランであったり、伝統あるヨーロッパの地域などでは「花言葉」が重視されることもあります。
日本での歴史は1960年代から
かつて日本の結婚式は着物を着て行う“神前式”もしくは“仏前式”が主流でした。開国を迎えて明治に入ると洋服を着るなど西洋スタイルの生活式に変化していきますが、戦後まで結婚式は和装で行われることが一般的だったようです。しかし第二次世界大戦から20年後、経済成長がピークになった高度経済成長期頃(1960年代)になると洋風スタイルの結婚式が広まっていきました。キリスト教徒ではないけれど結婚式は教会(教会堂風の施設)で、ウェディングドレスを着てキリスト教徒風に式を挙げるという形ですね。
なので日本では1960年代半ば頃から、ウェディングドレス+ウェディングブーケという風習が広まったと言えるでしょう。ウェディングブーケは1900年代前半にはヨーロッパやアメリカで広まっていましたから、日本にはウェディングドレスとブーケは一緒に導入されたも言えますね。日本人としてはそれぞれ別の起源という感覚がなく、最初からドレスとブーケはセットとして認識されていたのでしょう。
元々日本で行われていた結婚式で花束を持つという風習はありませんでした。しかし西洋式の結婚式の普及で花嫁がブーケを持つという習慣が根付き、近年は和装婚の時にマッチする“和風ブーケ”というものも用意されています。和風ブーケにも色々な種類がありますが、ピンポンマムなどを使ったボールブーケタイプが人気のようですよ。
近年はダースンローズ(Dozen roses)が人気
ウエディングブーケに関わる伝承を交えた、ゲスト参加型の演出として近年はダースンローズもしくはブーケセレモニーと呼ばれるものが注目されています。これにもウェディングブーケの起源とも言われるエピソードが関係しています。記でも紹介したように古代ローマの風習であるという説と、中世ヨーロッパの青年のエピソードとして紹介されているものがありますが、基本的に流れは同じですね。
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昔々、ある男性が女性にプロポーズするため野に咲く花を集めて花束を作り、愛する女性に花言葉と共に愛の言葉を伝えました。男性の思いを受け取った女性は、花束の中から一輪の花をとって男性の胸元に飾り「はい、喜んで」とプロポーズを受けたそうです。
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このエピソードと、呼び名ともなっているダースンローズ(Dozen roses)=12本のバラを結びつけて出来たのがダースンローズという演出。バラの花には色だけではなく贈る数にも意味が付けられており、12本(1ダース)の意味は「私のものになって(Be mine)」とされています。まさにプロポーズのための本数ですね。その他に、12本のバラにはそれぞれ「感謝」「誠実」「幸福」「信頼」「希望」「愛情」「情熱」「真実」「尊敬」「栄光」「努力」「永遠」の意味を持ち、12本のバラを贈るとこの全てを誓いますという意味になるという説もありますよ。
ダースンローズの方法としてはゲストの方にバラを1輪ずつ持っておいて頂き、新郎はゲストからお花を受け取りその場で花束を作っていきます。完成した花束をもって新郎は新婦にプロポーズの言葉を添えて贈り、新婦はOKの証として花束から一輪を抜き取って新郎の胸元に…という流れ。公開プロポーズにはなるので新郎新婦と参加者の好み次第にはなりますが、結婚式に来てくれた方もただ見ているだけではなく参加出来るということで人気なのだそう。
そのほかブーケを使った演出としては、花嫁が結婚式列席した独身女性に向けて花束を投げるブーケトスも定番ですね。ダースンローズは日本で最近作られた演出のようですが、ブライダルブーケトスは14世紀頃のイギリスが発祥と言われています。アジア圏ではそこから派生させた男性版のブロッコリートスが行われていますし、本場(?)イギリスでは新郎が新婦のガーターベルトを投げるガータートスもあります。
こうしたイベントは独身者が対象で、取り合いの競争的なニュアンスがあるので日本人的には平和なダースンローズの方が親しみやすかったのかもしれません。結婚式にどういった演出・参加型イベントを行うかは、新郎新婦の好みだけではなく、参列してくれる方々のタイプを見極めて選ぶようにすることをお勧めします^^;
参考サイト:The History of the Bridal Bouquet/ゲスト参加型のウェディング!「ダーズンローズ」の演出♪
起源としては諸説あり、これが世界初のウエディングブーケというものには辿り着けませんでした。ですが、プロポーズに使われた花束にしろ、厄払いのお守りとして使われていた花冠・花束にしろ、花嫁を愛する花婿・幸せを祝福する人々の気持ちが元になっていることは分かりますよね。スパイスをガンガン盛り込むのはアレですがハーブを入れたブーケを作ったり、花言葉を調べてみると楽しいかもしれません。
学生時代に「フォーマルウェア検定」なるものを受けた際、ウェディングブーケ・ブートニアはセットでと覚えた記憶があります。最近は披露宴でのお色直しだけではなく、結婚式のウェディングドレスも自由度が高い。ですが、一応伝統的とか正式とか言われているものには、それ相応の由来と意味があることが多かったりするのです。一世一代の大イベント(?)結婚式。流行りだけではなく、背景も考えてみてはいかがでしょうか?
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