新郎が主役のグルームズケーキとは
-個性が光るもう一つのウエディングケーキ
新郎へのサプライズ演出として、人気のグルームズケーキ(花婿のケーキ)。ウエディングケーキよりも自由度が高く、思いっきり個性を表現できることもあって注目度が高まっています。結婚式では何かと花嫁に注目が行きがちなので、花婿さんが主役として注目されるイベントという面でも嬉しいですよね。とは言え、日本ではまだ披露宴の定番というほどポピュラーではないグルームズケーキ。欧米での歴史や取り入れるメリットやアイディアを見てみませんか?
目次
グルームズケーキ
グルームズケーキ(Groom’s cake)とは
グルームズケーキは新婦から新郎へとプレゼントするケーキのこと。英語で書くと“Groom’s cake”で、直訳すれば花婿(新郎)のケーキという意味になります。最近注目されている日本のウェディング関連ワードはサムシングフォーなど和製英語が多く紛らわしいですが、グルームズケーキというのは正真正銘の英語。逆に珍しいようにも感じます。
グルームズケーキはウェディングケーキのように“これが定番”という形はありません。簡単な説明としては花婿のためのケーキとなりますが、新郎の趣味や好きなものをイメージしたケーキが用意されることも、新郎が美味しいと思っているケーキが登場する事もあります。ウェディングケーキほど伝統や格式があるものではないので、自由度が高いという点からも人気となっています。
日本では2011年にウイリアム王子がチョコレートビスケットケーキをグルームズケーキとして選んだこと・英国史上初めてロイヤルウェディングで振舞まわれたことで「ウェディングケーキが2つ?!」「Groom’s cakeって何?」と急激に注目度が高まったようです。インターネットで世界の情報が気軽に見られる時代でもありますから、調べてみたら車、映画やアニメのキャラクター、酒瓶、サッカー場などユニークでものすごく目を引くケーキがたくさん出てきて、自分たちの結婚式にも…という方が増えたと考えられます。
またグルームズケーキのもう一つのメリットとして、結婚披露宴であまり注目を浴びない新郎を引き立てるという点もあります。女性はウェディングドレスや打ち掛けなど華やかな衣装を身に着け、お色直しもあります。式場のカラーやウェディングケーキのデザインも花嫁衣装と合わせることが多く、演出に使う小物類やギフトもやはり女性の好みを反映することが多いはず。
結婚式・披露宴全体を通してガーリーだったりフェミニンだったりと、女性的なイメージの方が強いのではないでしょうか。結婚式は女性(花嫁)の晴れ舞台なんて表現されることもあるほどですし。しかし、結婚式は新郎新婦が二人揃ってこその主役。そこで新郎の好みを反映させた、ある意味では結婚式と披露宴のイメージとはマッチしないくらいのデザインと言えるグルームズケーキの出番というわけです。新郎が主役になれるタイミングでもあり、参加者に新郎の個性を知ってもらえる機会でもありますね。
グルームズケーキを出すタイミングは?
欧米ではグルームズケーキは結婚披露宴、その前日のリハーサルディナーなどで登場します。地域の伝統や宗教によってはウェディングケーキと並べてはいけない=結婚式の朝食・リハーサルディナー用とされているところもあるそう。また、特にアメリカなどでは「食べられるの?!」と言いたくなるような精巧なデザインのケーキが多いので、ウエディングケーキが霞んでしまわないように別々に出すという方もいらっしゃいます。
しかし、日本の場合はウェディングケーキと並べてはいけないなどの規定はありませんし、リハーサルディナーをしない方も珍しくありません。なので日本では披露宴の時にウェディングケーキの隣に飾るか、ケーキ入刀の演出の後にサプライズとして登場させることが多くなっています。サプライズの演出にすると、結婚してくれてありがとう・(おそらく女性のほうが発言権・決定権の強い)結婚式の計画を一緒にしてくれてありがとうなど、感謝の気持ちを伝えることにも繋がります。サプライズプレゼントをしてもらった新郎側もきっと喜んでくれますし、楽しい結婚式として記憶に残るのではないでしょうか。
グルームズケーキの歴史
グルームズケーキの起源
グルームズケーキが確立したのはもっと後の時代ですが、1600年代にはグルームズケーキの始まりであるとされる花婿のパイ(groom’s pie)が使われていたという背景があります。
結婚式・結婚披露宴にケーキを食べるという習慣の起源は古代ギリシアもしくは古代ローマにまで遡ると考えられています。当時の材料や技術の関係から当時のそれはケーキと言うには語弊がありますが、豊穣や子孫繁栄を象徴する“麦”を使ったクッキーやビスケットのよう焼き菓子が結婚式で使われていました。この伝統は中世以降も続き、結婚生活や新郎新婦の生活を願うためにレーズンやナッツなどが加えられ、時代と共にフルーツケーキと同一化していったようです。
そして17世紀になると花嫁のパイ(bride’s pie)と花婿のパイ(groom’s pie)と、2つのデザートが作られるようになります。Bride’s Pyeは結婚式の時にゲストの方々と食べるもの、groom’s pieは参加してくれた方々に持ち帰っていただくものとして区別されていたようです。また、それとは別に16世紀頃のイギリスにはケーキ(焼き菓子)を積み重ねて新郎新婦がキスをするという風習もありました。17世紀頃には結婚式に使われる小麦粉の焼き菓子は三種類あったと言えそうですね。
しかし18世紀以降になると積み重ねたフルーツケーキに薄く伸ばしたマジパンをかぶせ、アイシング加工を施したケーキが登場します。力や理由については諸説ありますが、19世紀に入るまでには花嫁のパイ(bride’s pie)と花婿のパイ(groom’s pie)を用意するという風習は無くなっていき、ウェディングケーキ一つという形に統合されたと考えられています。
グルームズケーキはビクトリア朝から
グルームズケーキの起源とされる花婿のパイ(groom’s pie)は18世紀頃に廃れてしまいました。しかしビクトリア朝時代、19世紀後半のイギリスで花嫁側の印象が強いウェディングケーキと対になる形で、花婿側のケーキであるグルームズケーキが用意されるようになります。
この頃には積み重ねたり、表面をアイシングするウェディングケーキは既に存在していましたが、当時の人々はこうしたウェディングケーキは「新郎新婦のためのもの」と言うには女性的なデザインと風味であると感じていたそう。また現在でもそうですが、結婚式は女性(花嫁)の方が注目される演出が多く、新郎はあまり脚光を浴びないという点でも不満があったと考えられますね。
この頃にグルームズケーキとして使われていたのは、ラムなどのアルコール類やナッツ・チョコレートを混ぜたフルーツケーキのような重くみっしりしたケーキ。1897年に『The British Baker』に掲載されたレシピも濃厚なフルーツケーキに類するもののようです。こうしたケーキが作られた背景としては、ヨーロッパ各地で古くから結婚式にフルーツケーキやナッツケーキを食べる風習があったことに加えて、アルコールやチョコレートが男性的な材料であると考えられていたためではないかという見解もあります。
グルームズケーキはさほど時間差なくアメリカにも伝わり、特にアメリカ南部で人気を博します。19世紀後半~20世紀初頭頃にはケーキもフルーツケーキ系ではなく、チョコレートケーキ・チーズケーキ・レッドベルベットケーキなどが使われるように変化していきました。ただし、イギリスやアメリカ全域で19世紀以降食べ続けられてきたというわけではありません。20世紀後半頃にはグルームズケーキ=アメリカ南部に残る古典的な結婚式の伝統という認識だったそうです。
そして誰が始めたかは分かっていませんが、グルームズケーキは新郎の好みのケーキを用意する⇒新郎の好きなものや趣味をデザインしたケーキを花嫁が贈る形へと変化していきます。近年は再び伝統文化が脚光を浴びたことや、製菓技術の向上で精密な形が作れるようになったことから再びグルームズケーキが人気に。ウイリアム王子がグルームズケーキを用意されていますし、日本でもデザイン性や自由度の高さが注目されていますね。フェイスブックやインスタグラムなどでも個性的なグルームズケーキが公開され話題となっていますから、今や世界的なトレンドになっていると言っても過言ではないかもしれません。
グルームズケーキのおまじないも
昔のグルームズケーキやその元になったとされるグルームズパイは、レセプションとしてカットはされるものの宴席の中で食べるものではなく、ゲストの方々に持ち帰ってもらう用のお菓子でした。現在の引き出物やギフトのような感覚で使われていたこのケーキ、ちょっと不思議なジンクスがあります。未婚の女性ゲストがカットされたグルームズケーキを持ち帰り、枕の下にケーキを入れて眠ると将来の夫の姿が夢に現れるというもの。枕の下にケーキを入れるということを考えるとフルーツケーキ時代の言い伝えなのかなと思いますが…現在は「そんな話もあったらしいよ」と語られる程度。実践した乙女がいたのか気になる話ではありますけれど。
グルームズケーキの種類・デザイン
新郎の趣味・好みの“形”で決める
最近の日本でグルームズケーキとして話題になっているのは、おそらくこちらではないかと思います。新郎が好きなものや趣味のアイテムなどを模ったケーキを作っちゃおうというパターンですね。少し偏見も入りますが「アメリカっぽいなぁ」と思うような、食べ物というよりは見るもの的な印象が強いケーキ類ですね。写真写りの良さと、会場の盛り上がり面はかなり強いと思います。
新郎の好きなものと一口で言っても、何をデザインするかは実に様々。新郎の好きな車やバイクなどの乗り物系から、スポーツチームのキャップやユニフォーム、お酒の銘柄、ギターなどの楽器類、動物などが定番でしょうか。スターウォーズなどの映画やアニメのキャラクターも人気がありますね。
そのほかに寿司などの好物をケーキで作る、仕事に関わるアイテムを作った、登山やウィンタースポーツが好きだから山をフィールドで作っちゃった……などバリエーションは無限。強いて言うなら仕事は嫌な思い出があったり、公表したくない趣味があったりする可能性はあるので地雷を踏むことにならないようには注意した方が良いかもしれません。
ユニークなグルームズケーキをインスタなどから取ってきてズラズラっと貼っているサイトもありますが、個人的にそうした“ナントカまとめ”みたいな作りは好みではないのと、日本でオーダーすると結構なコストだよなという思いもあり……参考になりそうなサイトをいくつかご紹介するに留めます^^;
見ているだけでも楽しいですが、結構重いので注意!
新郎の好きな“味”で決める
こちらは普通なのであまり特注が組まれていたりはしないのですが、新郎の好きな味のケーキをグルームズケーキとして使うこともあります。欧米でもみんなが特集されるような作り込まれたグルームズケーキを特注しているわけではなく、チョコレートケーキやアップルパイなど花婿さんの好きなケーキを用意する方が定番ではあるそうです。ウイリアム王子のチョコレートビスケットケーキもこちらに入りますしね。
予算やお願いするケーキ屋さんにもよりますが、新郎の好きなものの“形”に精巧に作られたものはマジパン・砂糖の割合が多くなる傾向にあります。味には好みもありますし、パティシエさんの腕もありますけど…味を楽しむと言うよりは“見た目”重視になる可能性が大。見た目のインパクトは弱く並べるとウェディングケーキに負けてしまうかもしれませんが、ゲストの方に美味しく食べて頂くことが第一なら新郎の好きな“味”で選んだほうが無難ではあります。
甘いものが苦手な方ならビターチョコケーキや塩っ気の効いたチーズケーキ・キャロットケーキなどを用意するということも出来ます。アメリカではグルームズケーキにスタンドを使って積み重ねたドーナツタワーやクッキータワーをグルームズケーキに使うこともあるようです。合わせ技で、新郎に関連するアイテムをカップケーキの上に乗せたり、ケーキポップスにアイシングで書いている写真も見かけますね。
ウェディングケーキの代わりにケーキポップススタンドが使われる時代ですから、ミートパイなどを活用しても良いかもしれません。甘い物が苦手なゲストの方もいらっしゃるので、意外と喜ばれるのではないでしょうか。
参考サイト:History of Groom’s Cakes/Should You Have A Groom’s Cake? Classic Tradition Becomes The Trend Again
デザインケーキは味より見た目重視というのは個人的な見解ではありますが、画像検索で「Groom’s Cake」だと個性的な形状のケーキがたくさん出てくるのに「Groom’s Cake tasty」と検索すると急にシンプルなケーキが多くなります(苦笑)ので遠からずなのではないかなと。でも凝った精巧なデザインのグルームズケーキを登場させて新郎とゲストをびっくりさせたいというジレンマがありそう。
自分が女であるせいもあるかもしれませんが…母親からは結婚式の思い出話を聞きますが、父親からはほとんど聞いた覚えがありません。多分「母さんキレイだったぞ」「〇〇さんが来てくれた」「寒かった」くらいじゃないかな。年代的に照れもありそうですが、今のようにダーズンローズやグルームズケーキなどの演出がなかった時代。新郎は添え物的な、ちょっぴり複雑な心境があったのではないかと思います。ぜひ旦那様も楽しめる演出を!
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