純白のウェディングドレスとベールの意味
-定番の花嫁衣装の由来や起源とは?

純白のウェディングドレスとベールの意味<br/ >-定番の花嫁衣装の由来や起源とは?

結婚式といえば“純白の花嫁”という言葉もあるように、和装スタイル・洋装スタイル問わずに白い服に身を包んだ花嫁さんの姿が定番中の定番。真っ白なウェデングドレス・ウェディングベールを着たお姫様のような姿に、一度や二度は憧れを抱く女性も多いはず。

多くの日本人によって「ドレス姿の結婚式といえば白が鉄板」という認識がありますが、いつから結婚式に着るドレス=白色というのがポピュラーになったのかご存知でしょうか? 白いウェディングドレスの歴史や、結婚式で白色が広く支持されている理由を紹介させていただきます。ドレスとのバランスが良い頭飾りというイメージのあるウェディングベールにも、ちゃんとした由来がありますよ。

純白のウェディングドレスの起源・歴史とは

白いウェディングドレスの始まり

花嫁の衣装は純白のドレス…というのはずっと昔からの伝統のように思われがちですが、実は広まってから約200年と新しい感覚です。白いウエディングドレスが定番化したきっかけは1840年に、イギリスのヴィクトリア女王が着用したことと考えられています。

ヴィクトリア女王が白いウエディングドレスの元祖のように扱われていますが、彼女の結婚式以前から白いウェディングドレスは存在していました。1406年にポメラニア公国のエーリクと結婚したイングランドのフィリッパ王女が、王族としては初めて白いウェデングドレスを着たことが分かっています。1558年にはスコットランド女王メアリー1世がフランスの王太子フランソワと結婚する際に白いウェディングドレスを着ていたという話もあります。

しかし当時のヨーロッパでは白いドレスを選ぶ人はほとんど居らず、彼女たちの例はかなり特殊。そんな中で、ヴィクトリア女王は1840年のアルバート王子の結婚式で白いサテンのウェディングドレスを身にまとって登場します。ヴィクトリア女王が白いドレスを採用したのは「純潔」を表し、最愛のアルバート王子に対して1人の女性(妻)として「貞操と服従」を誓うことを表現したと紹介されることもあります。しかしベルギーのブラッセルレースに押されて不況に陥っていた自国デボンシャーのホニトンレースを後押しした、100万ドル以上のドレスを身に着ける王侯貴族が多い中で倹約しているという姿勢を国民に示したなど、政治的な理由もあったと推測されています。

ちなみにヴィクトリア女王は結婚式の際に慣例であったティアラを付けず、ギンバイカ(マートル)とオレンジの花を使った花冠・ドレスと揃いで作ったお顔の見えるホニトンレースのベールを身に着けていました。靴もドレスと合わせて白。白いウェディングドレスを普及させただけではなく、ウェディングブーケや白くて三段重ねのウェディングケーキが定番となったのもヴィクトリア女王の結婚式がきっかけとされていますから、現在“ロイヤル・ウエディング”と呼ばれている伝統的な結婚式の形を確立したのがヴィクトリア女王であるとも言えますね。

ウェディングケーキの由来と歴史はこちら>>

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当時はポピュラーではなかった白尽くしの花嫁姿ですが、白いドレスを身にまとい、花冠とヴェールを付けたヴィクトリア女王はとても素敵だったようです。当時の新聞は可憐でありながらもゴージャスなヴィクトリア女王の結婚式の様子を書きたて、その素晴らしさは大西洋を越えて当時植民地だったアメリカへも伝えられます。ヴィクトリア女王の結婚式とドレスネタは数ヶ月にわたって書きたてられていたそうですから、当時の人からするとかなりセンセーショナルな話題だったのでしょうね。現在なら王女様が黒いドレスで結婚式をするくらいの感覚だったのかも。

文章だけではなくイラスト付きの報道もあり、イギリスやアメリカの若い女性はヴィクトリア女王の白いウェディングドレスに憧れを抱くようになります。当時はまだ洗濯乾燥機や洗濯機がなかった時代なので、白いドレスを純白の状態で維持することは冨の誇示にもなるということで、最初は上流階級の人々がヴィクトリア女王のマネをして白いウェディングドレスを着るようになったようです。庶民はまだウェディングドレスを仕立てれられるほど裕福な人は少なく、自分が持っている中で上質なもの・教会が貸し出しているものを着ていたんだとか。

後に女性誌『Godey’s Lady’s Book(ゴーディーズ・レディース・ブック)』では

Custom has decided, from the earliest ages, that white is the most fitting hue, whatever may be the material. It is an emblem of the purity and innocence of girlhood, and the unsullied heart she now yields to the chosen one.

-1849, Godey’s Lady’s Book

と記載されています。意訳にはなりますが「素材は何であれ、花嫁にピッタリな色として白が最も適切だという慣例はすぐに確立された。それは少女時代の純潔さと無邪気さの象徴であり、選んだ結婚相手の一人にだけ与える穢れ無き心の象徴だ」という評価。ヴィクトリア女王結婚式が1840年なので、たった9年でそこまでウェディングドレス=白が支持されるようになったことが窺えますね。

白いウェディングドレスとベールのイメージ

ヴィクトリア女王以前のウェディングドレスは?

白いウェデングドレスが誕生したのは17世紀頃、普及したのは19世紀という見解が一般的です。しかし結婚式に着るドレス=ウェデングドレスというもの自体はそれよりもずっと前、起源としてはローマ帝国にまで遡ると言われています。キリスト教の布教によって教会で結婚式が行われるようになった関係で、王侯貴族の花嫁が婚姻儀礼用のドレスを用意したことが始まりだというのが定説。現在の形に近い“ドレス”としてはそうなりますが、更に古い紀元前の古代ギリシャでも花嫁衣装はあったと考えられています。ドレス文化のヨーロッパに限らずに言えば、日本を始め世界各地に「結婚する時に着る特別な衣装」は存在していますしね。

ヨーロッパの“ドレス”にだけ話を絞れば、中世までドレスの色は様々でした。結婚式に特別なドレスを用意する王侯貴族や富裕層は青・赤・緑など鮮やかな色合いに染めた絹やベルベットの布地に、金糸・銀糸の刺繍を施したゴージャスなものが定番。この時代の特権階級の結婚というのは恋愛感情よりも政治的な意味合いが強いですから、花嫁衣装は新婦側の家の経済力や社会的地位を誇示するアイテムだったわけですね。逆に一般庶民の方は手入れがしやすく使いまわしの効く黒色・茶色・グレーなど暗色系のドレスが好まれたようです。現在では黒いウェディングドレスというとかなり個性的ですが、数百年前までは普通だったんですね。

余談ですが、ヴィクトリア女王が白いウェディングドレスを選んだのは「純潔(純粋)」さを表すためだったと紹介されることが多いものの、当時の感覚では“青”が純潔さを表す色であったという見解もあります。青色は聖母マリアの象徴の色でもあり「花嫁の純潔」を意味する色ともされていました。サムシング・フォーの一つに“Something Blue”と青いものが入れられているのも、純潔を表す色だからと考えられています。そのためか、ヴィクトリア女王も白で統一した花嫁衣装の中でアルバートから贈られたサファイアのブローチを付けていらっしゃいます。

では逆に白は何を象徴する色なのかと言えば、ズバリ冨の象徴
当時はお洗濯も大仕事でしたし、ウェディングドレスは結婚式以外にも着回すのが一般的。漂白技術が未発達だったので白いドレスと言っても生成りと白の中間くらいの色味だったようですが、それでも汚れは目立つし管理も大変ですよね。そう考えると白いウェディングドレスが富と社会的地位を表すとして上流階級を中心に広がっていったのも分かる気がしますが、ヴィクトリア女王は全身で富と権力を表した事になりロマンチックなエピソードは少し色褪せてしまいますね。

一般普及は第二次世界大戦後

ヴィクトリア女王が着用したことで爆発的に普及したと言われる白いウェディングドレスですが、19世紀後半頃に白いウェディングドレスを着ることが出来たのは富裕層が中心でした。中流階級以下の若い女性も憧れはしたでしょうが、冨の象徴とも言われた白いドレスを結婚式のために購入できたわけではありません。セレブだけに許される贅沢という感覚ですね。

そして世界大戦が始まると富裕層に含まれている女性も、贅沢な白いドレスで結婚するのは不適切だと身を慎むようになったそうです。それでも裕福な人々はよりエレガントなウェデングドレスを手に入れようとし、漂白・染色技術を駆使した現在のような純白のウェデングドレスや、マトンスリーブのウェデングドレスなど新しいデザインも登場しています。

第二次世界大戦が終わり景気が良くなったこと、機械織りや量産体制が整いウェデングドレスの値段が下がったことで、やっと一般人も白いウェディングドレスを着たホワイトウェディングを行えるようになりました。結婚式の一回だけしか着ない、特別なドレスを購入するようになったのも第二次世界大戦後からなんですね。ハリウッド映画の結婚式のシーンに白いドレス・白いベールを身に着けた花嫁が頻繁に登場したことも、世界中に結婚式=ホワイトウェディングというイメージを定着させるのに一役買ったのではないでしょうか。

日本にも第二次世界大戦後から西洋スタイルの結婚式の情報が伝わりました。高度経済成長期頃(1960年代)頃には白いウェディングドレス+ベール+ブーケという花嫁衣装を着て、チャペル(教会堂風の施設)で挙式するというスタイルの結婚式が一般化します。日本に欧米の結婚式が伝わった時点では既にむこうでホワイトウェディング形式が成立していますから、日本で洋風スタイルの結婚式といえば“白”というイメージなのも納得ですね。元々神前式でも白無垢を着ていましたから、違和感なく受け入れられたのかもしれません。

新郎新婦のイメージ

白という色の意味や象徴

現在、多くの方に白は「清純さ」「清楚さ」「無垢さ」を表現する色と捉えられています。結婚式に着るウエディングドレスが純白が良いと言われるのも、清純さを表して花嫁を引き立ててくれるためという見解が主流ですよね。昔は青が清純の象徴として一番だったとも言われていますが、何にも染められていない色である白というのは清純無垢な花嫁・結婚式のシンボルカラーとして相応しいと考えられています。また白=何にも染められていないというイメージから白いドレスを着ることで「あなたの色に私は染まります」という新郎へのメッセージになる、「新しい生活へのスタート」を意味しているという説もあります。

日本には白無垢もある

日本で伝統的に行われてきた和服を着用する結婚式で、最も格式の高い女性用の婚礼衣装とされるのが白無垢。無垢が使われるようになったのは室町時代頃、始めは武家が最高位の婚礼衣装として使うようになり、時代と共に庶民にも広がっていったと考えられています。

白無垢が最高位とされた理由としては、日本では古くから神官が白い服を身に着けるという習慣があり、日本では邪気を払ってくれる神聖な色=白という認識があったためと考えられています。また白は色々な色に染まることから、花嫁の「嫁いだ家の家風に染まる」という覚悟を示しているという説もあります。まだ染まっていない=純潔であるという意味にも繋がりますよね。

ウェディングベールについて

ウエディングベールの歴史

ウェディングベールはブライダルベールとも呼ばれる、結婚式の時に花嫁さんがつけている頭と顔を覆う布のこと。頭や顔を覆うベールというものはヨーロッパ、アジア、アフリカなど各地に古くから存在していました。ウェディングドレスとセットのものはヨーロッパ圏のベールが起源と言えますが、そこに絞っても起源は古代ギリシアかそれよりも更に昔であると考えられています。少なくとも古代ギリシアや古代ローマには既にベールを身に着けるという習慣は存在していたようです。

より古い時代にはベールは高貴さの象徴であったとことが分かっています。紀元前1790年頃のものとされる『ハンムラビ法典』では奴隷や売春婦がベールを着用することを禁じており、ベールを纏っている女性は一定以上の階級であるという風に見分けることが出来たのだそう。

古代メソポタミアとペルシャでは結婚相手の女性に夫がベールを着用させるという風習もあったようです。普通に街を歩いていてベールを被っている女性=既婚女性というわけですね。これは女性を邪悪な目から保護し、周囲の男性から向けられる欲望を退けるという意味があったためと考えられています。現在でもイスラム圏の女性が極力肌を見せないよう顔をすっぽりとベールで覆っているのも、周囲の(男性の)目から身を護るためなのだとか。

また古代ローマでは結婚という特別な日を迎えた花嫁に、悪霊や魔物が悪さをしないようにとベールを被せる習慣があったと伝えられています。この時に使われたベールは現在のように頭や顔だけを覆うものではなく、全身をすっぽりと進みこむタイプのものだったようです。ブライダルメイドの起源も花嫁に悪霊を寄せ付けないボディーガードとされていますから、とにかく古代ローマでは花嫁=悪霊に狙われないように守るべき存在だったのでしょう。悪霊だけではなく男性から向けられる欲望・好奇の目など現実的なものからも身を守ってくれる、ベールは万能の厄除けアイテムというところでしょうか。

聖母マリアもヴェールを被っているように、こうした古代の風習・考え方はキリスト教にも受け継がれました。女性のベールは謙虚さと服従を象徴するものとして推奨され、かつてカトリックでは女性信者には礼拝時のベール着用が義務付けられていました。中世では結婚式が終わるまで花嫁はベールをとらず、式終了後に花婿が花嫁のベールを持ち上げてやっと“夫”であると認められるという風習もあったのだそう。キリスト教の影響もありましたが、当時はまだ悪霊のような邪悪なものから花嫁を守る意味もあると信じられていたようですよ。

古代から脈々と受け継がれてきベール文化ですが、18世紀半ばにビクトリア女王が自身の結婚式で白レースのベールを身に着けたことでそのイメージが変化したと考えられています。キリスト教においては服従や謙虚さの象徴とされていたベールですが、ビクトリア女王から爆発的に広がった白いウェディングドレスと共に貞操・純潔さを表すアイテムとしてのイメージへと変化していったようです。日本人の場合は存在を知った最初から、白い婚礼衣装一式=純潔・無垢さのシンボルという捉え方をしていますけれど。

ウェディングベールのイメージ

ウエディングベールの選び方・演出

古くは花嫁を悪霊・欲望など邪悪なものから守るためのアイテムとして、また慎み深い女性や処女を象徴するアイテムとして使われたウェディングベール。しかし現在日本ではキリスト教などの信者を除けば、ファッションアイテムとしての意味がほとんど。バージンでないと付けてはいけないとか、1回目の結婚式しか使えないなんて決まりもありませんし、着用するウェディングベールの色や長さ・形にも規定はありません。

一応イメージと利便性の問題から、教会でフォーマルかつ厳格な結婚式を行いたい場合にはウエディングドレスの裾よりも長いくらいのロングベールが、カジュアルな結婚式や屋外の場合は動きやすいミドル~ショートベールが良いとは言われています。しかしルールというわけではありませんので、着用するウェデングドレスとの兼ね合い・どんなイメージを出したいのかによっても変わってきます。

ウェデングドレス・ウェディングベールと言えば白が定番となっていますが、一口に白と言っても色味や素材感は様々。ドレスと統一感のあるベールを選ぶのが無難ではありますが、少し素材感を変えるなどしてオシャレを楽しむ方もいらっしゃいます。近年は白ではなく淡いピンクや黄色などのカラードレスを選ぶ方もいらっしゃいますから、ベールの選び方にも個性が出る部分があるのかもしれませんね。

ウェディングベールとバージンロードはセット?

ウェデングベールを被った花嫁が父親に手を引かれてバージンロードを歩き、新郎が花嫁のベールを持ち上げて顔を露わにする“ベールアップ”と呼ばれる一連の流れがあります。誓いのキスにいく前段階のセレモニーとして定番ですよね。この流れは生み育てた親元から人生を友にするパートネーの元へ…という演出として行われていますが、古くは髪と顔を覆うベールは花嫁が処女であることを象徴するものとされていました。

だからこそ、父親に付き添われて歩く花道の呼び名が“バージンロード”と呼ぶようになったとも言われています。ちなみにバージンロードというのは日本の結婚式場業界が勝手に作った和製英語で、英語ではwedding aisle(ウエディング・アイル)もしくはwedding road(ウェディングロード)と呼びます。日本でバージンロードは生まれた日から今までの人生を表しているとも言われていますが、名称にしろ処女の象徴にしろ何だかガッカリ感が…。

ウェディングベールにまつわる結婚式の演出にはバージンロードを歩く父・ベールアップする新郎だけではなく、バージンロードを歩く前に花嫁のお母さんがベールを下ろしてあげる“ベールダウン”もあります。ベールは魔除け・厄除けの意味があるアイテム。それをお母さんがセッティングしてあげるのは、これからも花嫁の安全と幸せを願うという意味になるのだとか。実際にはそんなこともないですが、建前上は「これまで愛情たっぷりに育ててくれた母親が手伝う最後の身支度」でもあります。

バージンロードで父親から新郎へと花嫁が渡されるのは、昔々の“所有権を譲渡する”儀礼であったという説もあります。角が立たない別の由来も沢山紹介されていますが、その女をモノ扱いするという由来説から抵抗を覚える方も少なくないそう。ある意味では女同士、母が行うベールダウンの演出が由来とか意味とかを掘り下げていっても一番ほっこりして感動の演出と言えるかもしれませんね。

参考サイト:Why so many brides wear white on their wedding dayThe history and meaning of wedding veilsウエディングドレスのベールの意味とは?どんな種類があるの?

定番となっている花嫁のドレスや小物類の話になると高確率で登場するビクトリア女王。彼女の影響力ってものすごいよねと思います。もしもビクトリア女王が真っ赤なドレスで結婚式をしていたら、結婚式の定番は赤だったのかなとどうしようもないことを思ったりします。中国では赤が結婚式の色で、白はお葬式の色という話も知られていますしね。

日本や西洋では白=純白・清楚というイメージがありますが、実は色のイメージは国によってバラバラ。ネットの関係などでグローバル化している部分もありますが、世界共通じゃないってことは念頭に置いておきたいですね。そしてベールの起源でも悪霊除けが出てくるっていう。日本の結婚式でも「懐剣の儀」など魔除けニュアンスのある儀式が多いですし、中国でも節句とかの起源は邪気払いなので、おめでたい時・幸せな時を狙って悪いことがやってくるという感覚は共通なのかもしれないなあ……とか。