バナナのルーツはニューギニア? アジア?
バナナの歴史・プランテンとの違いも紹介

バナナのルーツはニューギニア? アジア? <br/ >バナナの歴史・プランテンとの違いも紹介

小さいお子さんからお年寄りまで幅広い層に人気のフルーツ、バナナ。果物としてはもちろん、お菓子やジュースのフレーバーとしても定番になっています。

欧米から熱帯地域まで様々な国の人々がバナナを食べていますが、バナナの歴史というと日本では昔高級だったらしいぞ、くらいのイメージ。バナナの原産や、世界に普及した経緯は意外と知りません。そんなバナナについて、種類やルーツ・歴史を調べてみました。

バナナとは? 概要と種類

バナナとは

バナナは、バショウ科バショウ属に含まれる植物のうち、果実を食べる品種もしくは果実そのものの総称。果物としてのバナナは、日本ではトロピカルフルーツの一種として親しまれています。独特の芳香と、ねっとりとした食感・甘みは老若男女問わず愛されていますね。

現在、私達が食べている栽培バナナの学名はMusa × paradisiacaと記すのがオーソドックス。
かつてはバナナの実の部分の風味などから、いくつかの学名が使い分けられていました。しかし、現在存在する食用バナナの原種は、マレーヤマバショウもしくは台湾バナナと呼ばれるMusa acuminataとリュウキュウバショウ(学名:Musa balbisiana)の2つ。どの品種も同じ祖先を持つことがわかり、現在は全てMusa × paradisiacaという通用学名でまとめることが多くなっています[1]。

現代ではバナナの祖先であるマレーヤマバショウやリュウキュウバショウの実を、食用利用することはほとんどありません。しかし、大昔には食用とされていたため呼称にはバナナが付き、バナナの説明も「バショウ科バショウ属に含まれ、果実を食べる品種」と大まかなくくり方になってしまします。

植物学者や雑学王ではなく普通の消費者目線であれば、バナナ=Musa × paradisiacaの栽培品種、という認識でOKでしょう。その栽培品種も数百種類と数が多く、品種によって風味や特徴も相当違っています。

Musa × paradisiaca以外のバナナ

日本で食べられているバナナはMusa × paradisiaca系統の品種がほとんど。なのですが、世界にはMusa × paradisiacaとその元となった原種以外にも、果実が利用され「バナナ」と呼ばれているバショウ属の植物がいくつかあります。

代表的なものとしては、南太平洋諸島で食べられているフェイバナナ(fe’i banana)があります。フェイバナナは学名をMusa troglodytarum L.もしくはMusa fehiなどと表記されることが多く、私達が普段食べているバナナとは別の起源を持つと考えられています。フェイバナナの果実は赤っぽいオレンジ色をしているものが多いことが特徴。

実はバナナは木にならない

バナナがなっているアレ、背も高く幹も太いので「バナナの木」と表現されることもありますが、実は木ではありません。バナナは樹木ではなく多年草(多年生植物)で、木の幹のような部分は、実際には“偽茎”という葉が重なって出来た部分。ちなみに、バナナの茎は地中にあります。

このため、園芸学や植物学上でバナナは果物ではなく“野菜”に分類されています。イチゴやスイカなどと同じような扱いです。実際に野菜として利用されることは少なく、主に果物として食されることから“果実的野菜”という区分で扱われることもあります。

分かりにくいですし、ピンとも来ないので、この記事では果物と書きます。

デザートバナナとクッキングバナナの違い

栽培バナナ(Musa × paradisiaca)の品種は数多くありますが、大きくは2系統に分かれています。

  • デザートバナナ:そのままデザート感覚で食べられる品種
  • クッキングバナナ:主に料理の食材として使われてる品種

どちらも2つの野生のバナナ、マレーヤマバショウ(学名:Musa acuminata)と リュウキュウバショウ(学名:Musa balbisiana)を先祖に持つことは同じ。なので国によっては区別しないこともあるのですが、バナナ産地ではない地域では上記のように用途によってわけて考えています。

デザートバナナ

デザートバナナのイメージ画像

デザートバナナは私達日本人が慣れ親しんでいる、そのまま皮を手でむいて食べるバナナのことです。柔らかい食感と、甘さが特徴的な果物ですね。現在のように学名が統一される前は、カール・フォン・リンネの分類によってMusa sapientumと記されていました[1]。

デザートバナナは炭水化物の中には糖類が多く含まれていて甘いので、熟したものであればそのまま美味しく食べることが出来ます。もちろん煮たり、乾燥させたり、パンや焼き菓子に練り込んだりと、調理してから食べられることもあります。

クッキングバナナ(プランテン)

クッキングバナナ(プランテン)イメージ画像

クッキングバナナは英語圏だと「Plantain(プランテン)」と称されることが多い果物。クッキングバナナという呼び名の通り、果物として生でそのまま食べるのではなく、料理に使われることが主となっています。日本では料理用バナナと呼ぶこともあります。カール・フォン・リンネの分類では、学名Musa paradisiacaと記されていました。

世界的に食べられているデザートバナナと比べると、クッキングバナナ(プランテン)主にインド、エジプト、インドネシア、アメリカの熱帯地域で生産・利用されています。見た目の違いとしては、クッキングバナナはバナナと比べてサイズが大きく、皮が厚いことが特徴。

また、クッキングバナナ(プランテン)は炭水化物の大半をデンプンが占めていて、果物というよりも芋などの野菜に近い食味[2]。このため、地域によってはプランテンを主食・炭水化物源として食しています。その場合は熟して甘くなったものではなく、未熟でデンプンの多いものが使われています。料理方法は地域によって様々ですが、焼く・蒸す・揚げる・炒めるなど加熱して利用されます。

ただし、熟すと甘みが増してデザートバナナと同様に、生で食べることも可能です。熟したものはスイーツ感覚で食べられていたりするので、このあたりがバナナの区分を曖昧にしていることもあるのでしょう。未成熟~完熟まで、熟し度合いによって食べ方を変えられることもありますし、品種も様々。このためクッキングバナナ(プランテン)の果皮の色は緑色、黄色、暗褐色まで様々です。

バナナのルーツと語源・普及の歴史

バナナのルーツは不明

バショウ属の植物は古くから地球に存在し、人々に食べられてきた果実。いつマレーヤマバショウ(Musa acuminata/アクミナータ種)と リュウキュウバショウ(Musa balbisiana/バルビシアナ種)が交配して、私達の食べているバナナの原型ができたのかは断定されていません。

バナナの親と言えるアクミナータ種は東南アジア原産。バルビシアナ種の原産地は特定されていませんが、南アジア東部・東南アジア北部・インド亜大陸北東部などに自生していることが分かっています[3]。また、アクミナータ種は“人間によって栽培され、初期に作物化された”グループにカテゴライズされている果物[4]。人が栽培する中で分布域を広げ、自然とアクミナータ種と交配したと考えられています。

バナナのイメージ画像

栽培バナナはニューギニアから始まった?

現在、最古の栽培バナナと考えられているのは、ニューギニア。ニューギニア南部にある“クックの初期農業遺跡(Kuk Swamp)”の調査から、紀元前8,000年~紀元前5,000年頃までにはパプア人によってバナナの栽培が行われていたことが分かっています[3]。当時ニューギニアで栽培されていたのはバンスキー(Musa acuminata subsp. banksii)というアクミナータ種の亜種

バンスキーは単為結果性で、種がほぼない品種でした[4]。このため食用として適している、と栽培化された可能性が示唆されています。ともあれ、この栽培化されたバナナはポリネシア系民族によって太平洋の島々に、マレー半島を通ってインドなどの南アジアへと伝播していきました。結果、交配が起こり、現在のバナナに近い品種が誕生したと考えられています。このため栽培バナナのルーツはニューギニア、と紹介されることもあります。

中東を通ってバナナは広がっていく

交易商人の手によってバナナは中東やアフリカ東海岸へも伝えられていきました。

2020年に『Proceedings of the National Academy of Sciences USA』に掲載された論文では、エジプトとの交易拠点であったイスラエルのテル・エラニ遺跡(Tel Erani)から発掘された遺跡の調査によって、3000年以上前に亡くなった人々がすでにバナナを食していた事が報告されています[5]。アフリカ東部へと伝わったバナナは、アフリカ内の交易によって徐々に西部へと広がっていきました。

また、紀元前400年頃にはマケドニアのアレクサンダー大王がインドへ遠征した際にバナナを持ち帰り、エジプト(アフリカ)に伝えたとの伝承もあります。アレクサンダー大王の時代にはバナナをイチジクと呼んでいた、旧約聖書『創世記』に登場する「知恵の実」の正体はリンゴでもイチジクでもなくバナナだという説もありますが、このあたりの伝承については真偽がわかっていません。

バナナの語源はアラビア語

私達が現在も使っている“バナナ(banana)”という呼び名は、アラビア語で指を意味する言葉「banan」が語源というのが定説。これが西アフリカでウォロフ語「banaana」に変化し、更にスペインもしくはポルトガル語を経由して、英語bananaになったと考えられています。

指を意味する言葉が果物の呼称になったのは、単にバナナの形状が指に似て見えた、当時のバナナは現在のものほど果実が大きくならず大人の指くらいのサイズの果物だったなどの説があります。

手のように見えるバナナのイメージ画像

16世紀にバナナはアメリカへ

それ以前にもヨーロッパには伝わっていたバナナではありますが、気候が栽培には適さなかったこともあり、ヨーロッパでは異国のフルーツとして多少知っている人がいた程度。現在のように身近な果物となったきっかけは、15世紀になってポルトガル人がカナリア諸島でバナナを再発見したことです。

15世紀ころ、バナナが伝わった当初の英語圏では、果物の総称としてアップル(appel )という言葉が使われていました。このため、バナナを“appel of paradis”と呼んでいた時期もありました。

彼らはカナリア諸島などでバナナ農園を作ってを栽培させるようになり、16世紀になるとスペイン人によって南北アメリカへもバナナが持ち込まれました[6]。ただ、バナナはぶつかると黒くなってしまいますし、痛みやすい果物。長い船旅には適さなかったため、オレンジなどのようにヨーロッパで貴族たちに大人気ということにはなりませんでした。どちらかというと、果物としての美味しさではなく、栄養価の高い主食として奴隷などの食事に使われていたようです。

19世紀、フルーツとしての地位を獲得

バナナが急上昇するのは19世紀頃から。
アメリカ合衆国はもう独立していますね。

1800年代初頭には東南アジアなどから甘みの強いバナナの品種が導入され、少しずつ甘い果物としても認識されつつあったようです、また、この頃は蒸気船や鉄道が発達し、輸送時間が従来よりも短縮されています。そこに目をつけたロレンツォ・ダウ・ベイカーは1870年代にジャマイカから種を持ち帰り、アメリカの消費者に向けて中南米でバナナの栽培をスタート。後にボストンフルーツカンパニーとなります[6]。

ロレンツォ・ダウ・ベイカー以外にも、バナナ栽培に目をつける資本家はいました。彼らは中南米やフィリピンなどに大規模なプランテーションを作り、商業作物として大量生産を行いました。この結果、安価な果物としてバナナはアメリカやヨーロッパでも広く食べられるようになっていきます。

日本でのバナナ普及は20世紀

日本に初めてバナナが伝えられたのは戦国時、織田信長がバナナを最初に食べた日本人だという伝承もあります。が、正式にバナナが輸入されるようになったのは日清戦争後(1903年)に台湾から持ち込むようになって以降のこと。

明治~大正中期くらいまでは庶民には手の届かない高級果実として扱われていましたが、大正後期になると輸入時に熟してしまったバナナを売りさばく露天商の「バナナの叩き売り」が行われていましたし、昭和にかけては奮発すれば庶民でも買えるくらいの存在になっていたようです。

しかし太平洋戦争が始まると輸入が停止し、第二次世界大戦後になると輸入は再開したものの高価な食材へと逆戻り。後の1963年のバナナ輸入自由化によって再び価格が下がり、現在のように誰でも買える身近な果物となったと言われています。お爺ちゃんお婆ちゃんがバナナを好きなのは、ちょうど高級フルーツからお手頃フルーツへ変化したタイミングを経験されているのもあるのかもしれません。

【参考サイト】

  1. バナナ (種)
  2. Plantains vs. Bananas: What’s the Difference?
  3. Multidisciplinary perspectives on banana (Musa spp.) domestication
  4. Musa acuminata – Wikipedia
  5. The Aroma of Distant Worlds
  6. BANANAS: THEIR HISTORY, CULTIVATION AND PRODUCTION 

うちのお婆ちゃんはガッツリとバナナ世代でした。とりあえず牛乳もしくはヨーグルトとバナナ食べとけば大丈夫みたいな(笑)健康食とか完全栄養食みたいなイメージがあったのでしょうね。調べるとそこまで栄養バランスがめっちゃ良い食品ではないので、バナナだけで凌ぐのは止めたほうが良いと思いますが。

バナナの起源と歴史については、調べてみたものの、不明瞭な部分が多かったです。学者先生たちの間でも色々な説があるくらいですから、難しいんでしょうね。某ローマ温泉漫画の、バナナお持ち帰り事件を思い出しました。