マカロンはフランスではなくイタリア発祥?!
-呼び名の由来や歴史・マコロンとの違いは?

マカロンはフランスではなくイタリア発祥?!<br />-呼び名の由来や歴史・マコロンとの違いは?

カラフルで可愛らしい見た目のお菓子、マカロン。独特の歯ざわりや味のバリエーションが豊富な点も楽しいですし、ファッション小物などにモチーフとして使われることも多い存在です。世界各国の様々なスイーツブームがありますが、マカロンは一過性のブームではなく日本に定着したお菓子と言えますね。

ところで、マカロンと言えばフランス菓子に数えられる洋菓子の一つ。
…ですが、実はイタリアが発祥という説もあることはご存知でしたか?
意外と知らないマカロンの定義や種類、今なお決着がついていないマカロン発祥説や歴史を紹介します。

マカロンのイロハ

マカロン(Macaron)とは

マカロンは卵白(メレンゲ)・砂糖・アーモンドを主原料とする洋菓子です。
丸く絞って焼き上げた円盤状の生地2枚の間に、クリームやガナッシュを挟んだお菓子が最もオーソドックスなタイプですね。コロンとした形状やカラフルな色味など、可愛らしい見た目から日本でも大ブームとなり、現在ではすっかり定番のお菓子として定着しています。

日本の一般的なマカロンは“パリ風マカロン”

日本で「マカロン」と聞いて多くの人が想像する、生地の間にバタークリーム、ガナッシュ、ジャムなどが挟まれているマカロン。このマカロンはフランスでは“マカロン・ムゥ(Macarons mous)”もしくは“マカロン・パリジャン(Macaron parisien)”などと呼ばれています[1]。

呼び名に使われている「mous」は柔らかい、「parisien」はパリ風を意味するフランス語です。マカロン・ムゥが正式名称ではありますが、柔らかいマカロンだと分かりにくいためか、英語では“French macaroon”、日本語だとマカロン・パリジャンをわかりやすくした“パリ風マカロン”と表現されることが多いです。

マカロンの種類・バリエーション

MacaronとMacaroon

英語でマカロンは“Macaron”ですが、まれに“Macaroon”と書かれていることもあります。もともと古い綴りでは「-oon」が使われており、イギリスではMacaroon=パリ風マカロン(マカロン・ムゥ)を指す言葉として使われていることが多いようです[2]。

しかし、北米ではパリ風マカロン=Macaronと書くのが一般的。“Macaroon”とoが2つの綴りは、アーモンドの代わりにココナッツを使ったマカロンを指すために使用されることが多いです。

ココナッツマカロンは摩り下ろしたココナッツを使用するので、パリ風マカロンのように滑らかな生地ではありません。イメージとしてはココナッツクッキーに近いです。呼び名は似ていても、見た目も食感・風味も全く別物ですね。このため、フランスでココナッツマカロンは“Rocher au coco(congolais)”とマカロンとは別の呼び名が使われています。

パリ風じゃないマカロンもある?

私達が一般的にマカロンと呼んでいるお菓子は“パリ風マカロン”と呼ばれています。
ということは“パリ風”ではないマカロンもあるということです。

同じフランスでも、地域によって色々なマカロンがあります。
例えば、サン=テミリオンで作られている、マカロン・ド・ サン=テミリオン( Macarons de Saint Emilion)は、マカロン・クラックレ (macaron craquelé) と呼ばれる表面がひび割れたクッキーのような見た目。ソフトクッキーに近いねっとりとした食感です。また、アミアンで作られているマカロン・ダミアン (macaron d’Amiens)は、円柱形のアーモンドビスケットのようなお菓子。

マカロン・ド・ サン=テミリオンも、マカロン・ダミアンも、私達がイメージする2枚の生地でクリームを挟んでいるタイプではありません。表面もふっくらツヤツヤではなく、クッキーやビスケットのような、素朴な見た目です。フランスではココナッツを使ったマカロンは別の呼称を使っていることも考えると、マカロン=ベース生地がメレンゲでアーモンド粉を使った焼き菓子と言えるのかもしれません。

作り方による分け方も

同じマカロン・ムゥでも、生地の作り方の違いから「フランス式」と「イタリア式」という区分をされることも[2]あります。生地の作り方の違いから、オーブンの設定温度や焼く時間にも多少の違いがあります。

フランス式では卵白を泡立ててから砂糖を加えて更に泡立ててフレンチメレンゲを作り、最後に粉砂糖とアーモンドパウダーを入れて混ぜることで生地を作ります。

イタリア式の場合は、卵白を泡立てた後に、砂糖と水で作った熱いシロップを加えるイタリアンメレンゲを使います。アーモンド粉+粉糖+卵白を混ぜたものに、イタリアンメレンゲを馴染ませながら加えていくという方法でマカロン生地を作ります。

マカロンとマコロンの違いは?

マカロンとマコロンの違いイメージ

日本にはマカロンとよく似た「マコロン」というお菓子もあります。
食味の違いで言えば、マコロンと呼ばれているお菓子はカロンよりもサクッとかため、クッキーに近い食感です。マカロンが様々な味・色があるのに対して、マコロンは薄茶色でバリエーションもあまりありません。どこか懐かしい風味の、素朴なお菓子という印象ですね。

材料では、マカロンはアーモンドと卵白・砂糖・小麦粉が主原料なのに対して、マコロンはアーモンドの代わりにピーナッツ(落花生)を使用している点が大きな違いです。

とは言え、マコロンの原型はマカロン。
マカロンは江戸時代に日本に伝わりましたが、当時の日本にはアーモンドがなく、また口にも馴染んでいませんでした。そこで入手しやすく馴染みのある落花生を使って、マカロンに似たお菓子「マコロン」が作られるようになりました。

英語版wikipediaでは、世界各地のマカロンのバリエーションとして、日本のマコロンも紹介されています。英名は、日本語の音をそのまま採用した“makaron”[2]。また、日本人女性のマカロン好きは海外の方からすると驚きのようで“女性向けの携帯アクセサリー、シール、化粧品などに使われている”との紹介もあります。

マカロンの発祥説と歴史

現在の「マカロン」発祥はパリ

現在私達がマカロンと呼んでいる、2枚のメレンゲ生地の間にフィリングが挟まっているタイプのお菓子は、フランスの首都パリで誕生しました。“マカロン・パリジャン(Macaron parisien)”と呼ばれているのも納得ですね。マカロン・パリジャンを最初に販売したのは、パリにあるLa Maison Ladurée(メゾン・ラデュレ)というパティスリーとされています。

1890年頃からラデュレではマカロン生地の改良を行っていたそうで、ラデュレ創業者のいとこであるPierreDesfontaines(ピエール・デフォンテーヌ)という方がガナッシュを挟んだタイプのマカロンを完成させ1930年に売り出しました[3]。このため現在のマカロン、マカロン・パリジャンの発祥はラデュレとされています。

ちなみに、ラデュレは1993年にグループホルダーに買収されています。そこから急激に店舗数を増やし、今では日本にも10店舗以上、世界各地に店舗・レストランを展開しています[4]。ラデュレは2006年に映画『王妃マリー・アントワネット』に登場するペストリーを手掛けたり、スキンケア商品やマカロンの色から着想を得たメイクアップコレクションを発表するなど幅広い事業を手掛けています。

カラフルなマカロンのイメージ画像

マカロンのレシピは17世紀からあった

マカロン・パリジャンが誕生したのは20世紀に入ってからですが、マカロンと呼ばれる食べ物はそれ以前からヨーロッパに存在していました。マカロンがいつから食べられていたのか、その時点から“マカロン”と呼ぶべきなのかは意見が別れますが、少なくとも17世紀に発刊されたレシピ本にはマカロンのレシピが掲載されています。

記録に残っている最古のマカロンレシピは、1617年頃にフランスでJohn Murrellが記した『A daily exercise for ladies and gentlewomen』との説が有力です[3]。それ以降、17世紀~18世紀にかけてはフランスやイギリスでマカロンのレシピを掲載したレシピ本がいくつか発刊されているそうです。

また、18世紀頃のフランスでマカロンは王侯貴族が好んで食べていたお菓子でもあります。マリー・アントワネットもマカロンが好きだったと伝えられているため、映画『王妃マリー・アントワネット』にも登場しているのでしょう。フランス革命が起こった1789年まではマカロンの商品化が認められず、王族が独占していたという逸話もあります[5]。

マカロン普及にはナンシーが一役買っている?!

フランスのマカロン名産地に、フランス北部のナンシーもあります。
“マカロン・デ・ナンシー(macaron de Nancy)や”“レ・ソール・マカロン(les Soeurs Macarons)”と呼ばれている、ナンシーのマカロンはマカロン・パリジャンの成立以前、18世紀末から作られています。

Macaron de Nancy - IMG 2841

マカロンは肉食を禁じられていた修道院で、栄養補給が出来る食べ物として使われていました。卵白とアーモンドなのでタンパク質や脂質が補給できそうですね。

そしてフランス革命が起こった際、ナンシーに逃れてきた修道女二人が生活のために1792年からマカロンを販売しました[2]。このとき販売されていたのがマカロン・デ・ナンシー、アーモンドパウダー入りのメレンゲクッキーのようなお菓子です。

ナンシーで修道女達が作っているマカロンが美味しいと評判になり、販売している修道女達=マカロンシスターズ(les soeurs macarons)という呼び名とともに有名になっていきます。フランス革命までマカロンの商品化が認められていたかったという説もありますから、マカロンはあまり庶民に馴染みのない食べ物だった可能性が高いです。しかし、フランス革命の最中から売り出されたマカロンが話題になったことで、フランスで親しみのある食べ物として普及していったのかもしれません。

マカロンのルーツ・発祥説は諸説ある

フランスでは17世紀からレシピも残っているマカロン……ですが、マカロンにまつわるエピソードはそれよりもずっと古い時代から各地に存在しています。私達の思うマカロンとは別の、メレンゲとアーモンドで生地を作ったお菓子は8世紀頃以前から既に食べられていた可能性が高いので「発祥の地争い」のような状態になっているのですね。

イタリアからフランスに伝わった説

マカロンのルーツとして有力視されているのは、元々イタリアにあったものがフランスに伝わったという説です。この説の根拠には“マカロン”という呼び名の語源が第一に挙げられます。

マカロンの語源については主に、下記の2つの見解に分かれますが[2][4]。

  • 「生地を打つ」を意味するギリシャ語のmakaria→イタリア語でmacare
  • 「つぶす」を意味するイタリア語maccaroneまたはmaccherone

このどちらかから、イタリア語のマカロニ(maccheroni)という言葉が派生しました。パスタの一種であるマカロニと、マカロンの語源は一緒だと考えられているんです。実際に中世ころにはマカロニとマカロンの区分が曖昧な時期もあり、時代と共にレシピや食味に合わせて使い分けられるようになったという見解もあります。

ルーツを辿れば古代ローマから食べられていたアマレッティがマカロンの原型であるという説もあります。アーモンドは紀元前1000年よりも前に古代エジプトに伝わっていたようですから、古代ローマにもあったでしょう。また、アマレッティの特徴は卵白を使用した生地でもありますので、お菓子の作り方という面でも共通点はありそうですね。

ただ、より現在のマカロンに近いと見られているのは、8~9世紀頃にイタリア、ヴェネツィアの修道院で作られていたクッキーのようなお菓子。16世紀ころのイタリアでは、マカロンと製法・材料がよく似たアーモンドクッキーのようなレシピも数多く残されています[3]。マカロンという呼び名ではありませんが、似たペイストリー・お菓子はイタリアで古くから食べられていた可能性は高いですね。

そんなイタリアで親しまれていたマカロンの原型がフランスに伝わったのは16世紀、カトリーヌ・ド・メディチ(メディシス)がアンリ2世のもとへ輿入れしたことがきっかけと考えられています。この時イタリアから様々な人がカトリーヌに付き添い、文化・食材・調理方などをフランスに伝えました。そのなかにイタリアのアマレッティや リチャレッリのようなお菓子のレシピも含まれていたというのがイタリア発祥説です。

シュークリームソルベなどのお菓子のレシピも、カトリーヌ・ド・メディチがイタリアの食文化を伝えたことからフランスで誕生したとの見解が主流。マカロンもイタリアから伝わったレシピが、フランスで技工を凝らしたお菓子にグレードアップしていきました。

8世紀フランスで考案され、独自の進化を遂げた説

フランスでも8世紀(791年)にはロワール地方のコルムリー修道院で、マカロンが作られていたという声もあります。現在でもコルムリーは伝統菓子として、リング状のマカロン“Macaron de Cormery”が作られています。マカロンと言われると違和感があるくらいですが、これがコルムリーのマカロン。

Cormery macarons

リングのような特徴的な形状については、誕生秘話と呼べるエピソードが伝えられています。

当時コルムリー修道院でお菓子作りを担当していたジャンは腕が良く、彼がメレンゲとアーモンドパウダーを使って焼いたお菓子は「美味しい」と好評でした。上司のセラフィン神父はジャンの菓子をもっと売るために、コルムリー教会のお菓子だとひと目で分かる形にしようと思い立ちました。しかし、どんな形が良いかは思いつけず、神様にお告げを求めてお祈りをすることにしました。

夜明け前、セラフィンは「ジャンが作業している調理場に行き、最初に見た物の形を模せ」というお告げを得ます。そのころジャンは既に働いていて、火で僧服を焦がしてしまったところでした。お告げに従って調理場を覗いたセラフィン神父が最初に見たものは、焼けて穴の空いた僧服の下にあるジャンのヘソ。神様のお告げには逆らえず、そのまま焼き菓子はヘソの形に作られるようになったと伝えられています[6]。

ヘソの形についてはともかく、8世紀にはマカロンの原型と言えるレシピが既に存在していたと考えられますね。このため、カトリーヌ・ド・メディチの輿入れとは関係なく、フランスで時代や地域ごとにマカロンは変化し、最終的にマカロン・パリジャンまで行き着くと仰る方もいらっしゃいます。

【参考サイト】

  1. マカロン・ムゥ|パティシエWiki 
  2. Macaron – Wikipedia
  3. History Of The Famous French Macarons
  4. L’HISTOIRE DE LADURÉE
  5. Macaron: All about it! History, Recipes, Classes and Where to Buy
  6. Le Macaron de Cormery

女子の好物!というイメージがあるマカロン。ホワイトデーのお返しにも結構使われているようですし、カラフルなマカロンが並んでいるとテンションが上りますよね。ただ、個人的にはマコロンも捨てがたい。見た目のオシャレさはありませんが、カリカリした食感と懐かしい甘味は疲れている時にほっこりするお味。

マコロンだけではなく、現在私達が食べている「マカロン」のルーツやバリエーションとされているお菓子にも、どこかマコロンと似た印象があります。マカロン・ムウ(マカロン・パリジャン)は都会の洗練された手法のお菓子、各地で食べられているそれ以外のマカロンは懐かしく温かみのあるお菓子と言えるのかもしれません。