おせち料理の由来と歴史とは?
…種類毎の重箱への詰め方・食べ方も紹介

おせち料理の由来と歴史とは?<br />…種類毎の重箱への詰め方・食べ方も紹介

彩り鮮やかで色々なものが詰まっている「おせち料理」は、昔の人からすれば毎日贅沢なものを食べている現代人にとっても特別なもの。最近ではおせち無し派も増えているようですが、正月にないとちょっと寂しい…という方が多いのではないでしょうか。かなり早い時期から各社がおせち販売に力を入れていることもあり全てを家で作るという方は少なくなりましたが、作れるもの・食べる量の多いものは作るという方も多いのではないでしょうか。そんなわけでお正月にはおせち料理を食べるという習慣の成り立ちから、おせち料理の種類・重箱への詰め方・食べる順などをご紹介します。

おせち料理と、その起原・由来とは?

おせちとは

おせちは節句(節会)の時に食べられる料理の総称。このため漢字では御節料理と、節句の料理を意味する表記になります。元々は季節の変わり目である節句に、神様に感謝を示すために供える・人が食べる料理であると説明されますね。しかし一般的にはお正月料理を指す言葉として使われることが多いのではないでしょうか。おせち料理と言われて柏餅やちまきを思い浮かべる方はあまり居ないはずです。

時代と共にお正月に食べられるおせち料理は、縁起をかついだお祝い料理としての意味合いが強くなったとも言われています。縁起物と言われる良い意味をもつ食材を使って構成されているというのも特徴ですね。重箱に入れられて段が分けられているのも、重ねることで「めでたさが重なる」という意味が含まれています。四段目は縁起が悪いという理由で「与の重(よのじゅう)」と呼ぶ文化もありますね。

また日本人の昔ながらの信仰・気遣いが見え隠れしているのもおせちの特徴。おせち料理は作り置きが出来るものを基本に構成されていますが、これはお正月に火を使うことを避けるという物忌みの風習の名残であるとも、かまどの神様を休めるためだとも言われています。かまどの神様だけはなく、女性を家事(料理)から解放するという意味があったのではないかという説もありますよ。と言っても現在はおせち料理をつくる時間や段取りを考えると頭が痛い…という方も少なくありません。デパートや通販などで購入される方が多いことも報道されていますね。

商売としておせちを売りに出されている以上は他店と差別化する必要もありますから、近年のおせちは昔ながらのものから、コンパクトなもの、洋風・中華風おせちなど色々なバリエーションがありますね。一見別物と思える洋風おせちでも昔ながらの風習になら祝い肴・口取り・煮しめ・酢の物・焼き物の5種類があり、縁起物である食材が使われているものがほとんど。めでたさを重ねると言われる段数についてはさておき、縁起物を揃えて神様を歓待しよう・家族の健康や繁栄を祈ろうという根底部分は変わっていません。

おせち料理の歴史

おせち料理の歴史は古く、起原は平安時代頃とも、更に古い弥生時代とも言われています。
縄文時代まで私達の先祖は狩猟や採集がメインの生活をしていたと言われています。実際のところは縄文人も農耕をしていたとか、縄文時代も農耕をしていたと・稲作もあったという見解が最近は多いんですが…まぁ、教科書的には弥生に日本でお米を主食とする農耕民族の比率が多くなったと言われています。縄文か弥生かはさておき、農耕生活は気温や天気など人の手ではどうにも出来ないものに左右されます。現在のようにハウス栽培とか工場生産とかではないですから、作物の出来は天(神様)の采配次第だったわけです。

このことから縄文末期~弥生にかけて、日本では自然(神様)というものが重要視されるようになります。自然に作物が無事にできたことを感謝して、その作物を神様にお供えする儀式が行われるようになっていきました。余談ですが大変なご馳走とされていた米をついて餅を作り、それを神様に捧げるようになったのもこの頃。日本に最初に伝えられた米は赤米でお餅作りに適していたということもあるのでしょう。今でも一部地域では赤米=祭祀用として使われていますね。

飛鳥時代頃には大陸から暦が伝わり、季節の変わり目を「節」として捉える考え方も日本に導入されます。これが日本に元々あった神様に感謝を捧げる風習と合体して「節句」と呼ばれるようになり、と呼ばれる様々な宮中行事が行われるようになっていきます。その季節によって行うことは様々ですが、大雑把に言ってしまえば節会というのは宴会のようなもの。節会の際に供される節句料理は「御節供」と呼ばれ、今のおせちの原型になったとも言われています。

感謝祭のお供え物を起原ととるか、日にちなど形式が決められた時点を起原ととるかによって、おせちの成立時期をいつにするかの見解が分かれるということですね。といっても当時の御節供はお正月のものだけを指すわけではなく他の節句の食事にも使われていましたし、献立も高盛りのご飯とか瓜の漬物とか現在のおせちとは別物だったようです。身分区別も貧富の差も大きかった時代ですから、当時は節会を行うのは皇族や公家などの貴族階級くらいだったというのも現在とは違いますね。当時は白米も最先端かつ最高級だったので、特権階級の食事もしくは神様への捧げ物という扱いでしたよ。

お米イメージ

では現在のような賑々しい料理が「おせち」になったのは何時かというと、これはずっと後の江戸時代頃。徳川幕府が五節句を式日と定めたことや、家や武家だけではなく庶民にも季節行事を行う余裕ができたことから、御節供もしくはそれに準じた料理をみんなが食べるようになったと言われています。

とは言え庶民は有閑貴族のように遊び暮らせる訳ではありませんし、余裕ができたと言っても限度はあります。諸説ありますが、そこで特に新年を迎える重要な日であるお正月が特に重視され、その他の節句料理については省略されていきます。その結果、庶民にとっては「御節供料理はお正月に食べる料理」という認識が定着していったという考察が主流です。

また江戸時代には西日本で「蓬莱飾り(蓬莱台)」また関東では「食積(くいつみ)」と呼ばれる、白米・熨斗鮑(のしあわび)・伊勢海老・勝栗・干し柿・野老・昆布・ホンダワラ・橙などの縁起物を床の間に盛り付けることも行われていました。これは三宝に乗せて年神様へのお供えにするだけではなく、新年の挨拶に見えたお客様に振る舞ったり家族で食べるものでもありました。しかし段々と飾るだけで食べないという儀礼的なものとなり、来客用としては箱詰めされた料理が使われるようになります。蓬莱飾り(食積)と御節供が合体したとも言えますね。

このあたりから現在の私達がイメージする「お正月のおせち料理」にかなり近いものが使われるようになったと言えるでしょう。重箱を使うのが一般化したのは明治くらいと言われていますから、箱を重ねて「めでたさを重ねる」としたのもごく最近のことと考えられます。ただし江戸時代末期から明治にかけての頃には膳に盛られるもの・重詰めの2つが用意され、膳の方を御節・重の方を食積と呼んでいたそう。重箱に入った方を「おせち(御節)」と呼ぶようになったのは、第二次世界大戦後に百貨店などが「おせち」という名称で販売したことがきっかけと言われていますよ。

おせちの種類・重箱への詰め方や食べ方は?

おせちの種類について

おせちは一種の和食フルコース(会席料理)であるとも言えます。そのためおせち料理とされる品々は大まかに祝い肴・口取り・酢の物・煮物・焼き物の5つに分けることが出来ます。しかし食べる順となると祝い肴(三つ肴→口取り)が最初というのはどこも共通ですが、それ以降の酢の物・煮物・焼き物を食べる順番は地域によって異なりますので、下記では一般的な懐石料理の順番を参考に紹介させていただきます。

使われる食材・縁起物としての意味はこちら>>

祝い肴三種イメージ

祝い肴三種(三つ肴)

肴という文字が使われているように、基本的には酒の肴。和食で言う先付け(お通し)のお祝いバージョンというところですね。地域によっても差がありますが、関東方面では「黒豆・数の子・田作り」の三種が、関西方面では「黒豆・数の子・たたきごぼう」の三種が使われることが多いようです。

口取り

口取りは正式には「口取り肴」と言う、料理の初めににお吸い物と一緒に出される物のこと。祝い肴三種がお通しの意味合いが強いのに対して、こちらは前菜もしくは八寸と言えば分かりやすいのではないでしょうか。と言っても、どちらも“肴”であることは間違いないので三つ肴と口取りをまとめて「祝い肴」とする場合もあります。

大昔の口取りは熨斗鮑・昆布・勝栗を三方に乗せたものを指していましたが、時代と共にきんとん・かまぼこ・卵焼き・昆布巻きなどが使われるようになりました。使う品の数も3品から9品までの奇数であれば良しとされており、海の幸と山の幸の両方を使用した甘みのある料理の盛り合わせとなっています。

余談ですが北海道と東北の一部地域には「口取り」と呼ばれる、練り切りの和菓子も存在します。北海道のスーパーでは必ずと言って良いくらい、年末年始になると登場しますよ。和菓子の口取りは鯛や海老・松竹梅・その年の干支など色々な縁起物を模って作られており、口取り肴のポジションではなくおせちを食べた後のデザートとして食べられています。練り切りの口取りとは別に、かまぼこや栗きんとんはおせちとして食べていますよ。

焼き物

鯛・海老・伊勢海老・ブリなど、縁起物とされている海の幸の焼き物が使われるのが一般的。おせちの中でも最もご馳走感があるのがこの「焼きもの」の部分ではないでしょうか。最近は鰻登りという言葉が良いと「うなぎ」が使われていたり、ニーズの変化からステーキなど肉系の料理が入れられていることもありますよ。

煮物

煮物ではなく煮しめであるとか、七宝煮・筑前煮であるとか、地域によって呼び方や具材選び・切り方などは違いますが総称しての“煮物”とお考え下さい。使われる食材にもそれぞれ意味がありますが、煮物全体にも野菜や鶏肉など色々な具材を一緒に煮ることから「家族が一緒に仲良くいられるように」という願いが込められています。

酢の物

読んで字の如く、紅白なます・酢蓮根・菊花カブなどの酢の物。和食では前菜としてではなく、「口直し」として酢の物が使われます。

重箱の詰め方にはルールがある?

おせちを自作する・作るのに手がかかる部分だけ買うという方にとって、頭を悩ませるのが「おせちの詰め方」では無いでしょうか。レイアウトや色の問題もありますが、そもそも何段目に何を入れれば良いかだけでも混乱しますよね。人によって言うことも違ったりして、嫁ぎ先で実家のやり方をしていたら怒られたという話もあります。パーティープレートに全部盛ってやろうかと思った事がある方もいらっしゃるはず。

結論から言いますと、諸説あります。
外さないほうが良いのは「一段目に祝い肴三種を入れる」こと。それだけ。

まず正式な重箱の段数についても四段重・五段重という説に分かれています。結構な激戦に見受けられますが、核家族化+昔のように親戚が一堂に会してお正月をするわけでもないという時代の変化から、がっつり作る場合でも四段重というの見解が多いようです。

さらに詰め方についても、
一の重は祝い肴三種
二の重に口取り+酢の物
三の重に焼き物
与の重に煮物

一の重は祝い肴(三つ肴&口取り)
二の重に焼き物
三の重に酢の物
与の重に煮物

一の重は祝い肴
二の重に焼き物
三の重に煮物
与の重に酢の物

など様々。自分のやり方が代表的なものだ・正当だと主張する方もいらっしゃいますが、実はかなり色々なパターンがあります。間違っていると言われたくない場合は、血縁の年長者や地域のお年寄りなどに聞いてみるのが確実でしょう。各段の料理の数を5種・7種・9種の吉数で詰めると縁起が良いとする説もありますから、家族だけで楽しむような場合は皆の好きなもの・料理の量・色味などを考慮して決めても全く問題ありません。

五段重の場合

近年一般家庭ではあまり見かけない五段の重箱。こちらを使う場合の詰め方(順番)にも、正月料理が大まかに五種類なのでそれぞれを一段ずつ入れていく・五の重を「控えの重」として家族の好物を詰めれば良いなど諸説あります。

また「五段目は空にしておく」という考え方もあります。理由としては年神様から授かった福を詰める場所であるとも、来年は5段目まで一杯に詰められますようにという願いを込めるとも言われていますが、なかなか洒落た考え方ですよね。家に五段の重箱があるけど詰め切るのは大変…という時は福を入れて頂く場所として空けておくと良いかも知れません。

三段・二段重の場合

一応おせち料理を入れるのは四段もしくは五段が正式であるとは言われていますが、実際には人数や食べる量を考えて三段~二段重を使う家庭のほうが現在は多いとも言われています。仕舞う時に場所も取りませんしね。

厳密な決まりはありませんが

三段の場合は
一の重に祝い肴
二の重に焼き物・酢の物
三の重に煮物

二段の場合は
一の重に祝い肴・酢の物
二の重に煮物・焼き物

と詰められる場合が多いようです。

おせちの詰め方は縁起担ぎと言うよりも和食のルールであったり、戦後に売り出されたデパートのおせち料理だったりがベース。違う詰め方をしたとしても縁起が悪くなるということも無いので、あまり気にせずに盛り付けてみてください。最近はハレとケの境が少ないと言われているように普段の食事でも色々なものを食べられますし、三が日ずっとおせちを食べることも少ないでしょう。お重にこだわらないという方も増えている時代ですから、無理をせず生活スタイルに合わせた取り入れ方をするのがベストですよ。

おせちと祝い膳イメージ

祝い箸を使って食べる

おせちを食べる時はいつものお箸ではなく「祝い箸」を使うと、さらに縁起が良くなるという説があります。祝箸は紅白の袋に入っていたり水引が付いているもの…というわけではなく、両端が細くなっているお箸のこと。はらみ箸や俵箸・柳箸・両口箸などというのも、祝い箸の呼び名です。ちなみに長さは末広がりで縁起が良いとされている「八」を使って、八寸(約24cm)で作られていますよ。

祝箸の箸の先端が両方とも細いのは、片方を神様が使う=神様と一緒に食事をするため。箸の片側は神様が使用する部分なので、ひっくり返して取り箸にしたりするのは厳禁です。神様と一緒に食事をしようという考え方は、神様にお供えしたものを人が頂くと加護やご利益が得られる「神人共食」という考え方が元になっています。赤ちゃんの「お食い初め(箸祝い)」なども同じ理由で祝い箸が使われていますね。おせちを食べる時に祝い箸を使って運気を高めようというのも、より歳神様の力を頂けるようにということでしょう。もちろんおめでたい気分の演出としても、特別感のある箸袋に入った祝い箸は活躍してくれますね。

お正月に祝い箸を使いたい場合は、箸袋に家族一人一人の名前を書いて大晦日から神棚に供えておきましょう。神様がいらっしゃる松の内の間は綺麗に洗って使い続け、松飾りと同じくとんど焼き(お焚き上げ)に出すのが正式な使い方とされています。できるだけ運気を高めたい、良い一年になって欲しいと思っている方は祝い箸の扱いも作法に則ってみると良いかも知れません。

口取りと言われると「練り物のお菓子」だと思う里の出身です。北海道は色々なところから開拓などに人が集まっているので、お正月などの作法も地域というよりも家々によって違います。家は丸餅派でしたし。結婚後の「これが常識でしょう!」というトラブルも少なくないらしいです。おせちを重箱に詰めないでプレートに並べてやろうか、というのも知人の言葉だったりします(笑)

おせち料理について調べましたが「元々は歳神様のお供えである」というだけで、現在の品目やらは江戸時代以降に作られたものが結構多いそう。お重の段数や詰め方などにもかなりいろいろな説がありますから、好きなように作る(買う)のが一番でしょう。歳神様がこれを備えなさいと決めたものでもありませんから何かが無いと悪いことが起こる危険性も無いですし、祝い肴三種が揃っていればおせちになるという見解もありますし。