年末に大掃除をする意味や由来とは
-大掃除NG日があるって本当?

年末に大掃除をする意味や由来とは<br />-大掃除NG日があるって本当?

12月の声を聞くと「今年も大掃除しなきゃなぁ…」と、ため息を吐きたくなる方もいらっしゃるのでは無いでしょうか。ただでさえ色々と忙しい年末。お掃除好きの方はともかく、オフの日を確保したら掃除よりもゆっくりしたいなと思ってしまうもの。面倒だしやらなくても良いかなと思いながらも、大掃除をしないと悪いことがありそう・運気が下がりそう…などマイナスなイメージが頭をよぎる事もありますね。風習って恐ろしい。

そんな年末の大掃除について、なぜ冬の寒い時期にわざわざ掃除をするのか、大晦日に大掃除をしてもよいのかなど気になることを調べてみました。大掃除を行う時期とその意味が分かると、ちょっとやる気が出るかもしれませんよ♪

なぜ年末に大掃除をするの? 大晦日との関係は?

大晦日とは

大晦日は一年の最後の日=12月31日のこと。
現在ではあまり使われていませんが、毎月の最後の日を「晦日」と言います。この呼び方は月の満ち欠けを基準とした旧暦(太陰太陽暦)の時期に作られたも。そのため月末は月が隠れる日=“月隠り(つきごもり)”が転じて晦(つごもり)になったと考えられています。余談ですが「晦」という字は訓読みだと“くら(い)”や“くら(ます)”となり、見えない・わかりにくい様子を表す時にも使われていますよ。

月の満ち欠けによって定められた一ヶ月は30日だったので、何月でも月末は三十日(みそか)だったのたとか。このため晦日と書いてツゴモリともミソカとも読むようになったのだそう。カイジツでも間違いではありません。そんな毎月ある晦日の中でも、12月は一年の最後であることから「大」をつけて大晦日と呼ばれるようになりました。こちらもオオミソカと言う方と、オオツゴモリと言う方が居ますね。

そして日本には古くから一年の福徳を司る神様がおり、それぞれのお家に年のはじめ(元日)に訪れるという信仰がありました。歳神様(としがみさま)」や「歳徳神(としとくじん)」と呼ばれる神様ですね。現在はお正月と言えば神社に初詣に行くイメージがありますが、古くは元日にお家まで来てくれていたのです。

年末のご挨拶として使われる「良いお年を(お迎え下さい)」という言葉も、元々は“来年が良い一年になりますように”という意味ではなく、しっかり準備をして年神様をお迎えしようねという意味合いだったと言われていますよ。

お正月と年神様についてはこちら≫

実は年越しも、歳神様のお迎えだった?!

また大晦日の夜=年越しも、この神様をきちんと起きてお迎えするように“一晩中起きている”という風習がありました。地域差もありますから一概には言えませんが、大晦日の夜から元日にかけての期間は「年籠り」と言って、家もしくは寺社で一年の感謝を捧げながら神様をお待ちする期間とされていました。

小さい頃は子どもが夜更かししても怒られない日だと思っていましたが、昔の人からすると起きていて良いのではなく、起きていることが義務という感覚だったんですね。年越しのときに寝てしまうとシワが増えるとか、白髪になるとか言われているのも「だから、ちゃんと起きてなさいよ」という戒めだったのかもしれません。

大掃除の起原は煤払い?

大晦日から元日にかけて、自分の家に歳神様をお迎えする大切な期間と考えられていました。なので大掃除もいらっしゃる神様に失礼がないよう・気持ちよく来ていただけるようにという意味合いがあります。もちろん私達人間の側からしても綺麗な状態で新年を迎えると気持ちが良いですし、一年の変わり目をしっかりと認識できるというメリットもありますね。

大掃除の起原・原型とされるのは、現在でも神社などで行われている「煤払い(すすはらい)」という神事。12月になるとニュースなどでも“○○神社で煤払いが行われました”ということが報じられますね。

この大掃除・煤払いが行われるようになったのは平安時代頃からと言われています。貴族に限ってはそれ以前という説もありますが、一般庶民まで割と広く浸透するようになったのは平安時代とする見解が主流で、掃除という言葉もその当時から使われていたそう。1000年以上の歴史があるんですね。

平安期には日にちは定められていなかったようですが、江戸時代になると大奥で12月13日に煤払いを行うことが定められ、一般庶民にもその習慣が浸透していくようになりました。これは旧暦(宣明暦)での12月13日は必ず二十八宿が“鬼”になり、婚礼以外は全てが吉となるので準備開始にも良いと考えられたためだとか。

このため12月13日は正月を迎えるための準備を開始する時期に良い日として「正月事始め」とされました。それと合わせて煤払いも13日に行われれるようになったと考えられています。普段しないことをするのは意識を切り替えるスイッチにもなりますね。ちなみに物忌みは飲食物に気をつけたり、人と合わないように家に籠もること。こうして心身を清めることで新年を迎える準備をしていたものが、年末の大掃除へと形を変えつつ風習として残っているんですね。

神社イメージ

煤払いの“煤”は何かが燃えた時に出る黒っぽい粉末や、天井や部屋の隅などに蓄積している細かい埃のことを言いますが、これを綺麗にすることで一年の間に蓄積した厄や穢れを払うことにも通じると考えることができます。こちらについても物忌みと合体したような感じがありますが…なんとも日本っぽい考え方ではないでしょうか。

これらのことから大掃除の発祥としては、建物内を綺麗にしようというよりも、穢れを祓って綺麗な状態で新年を迎えようという意味合いが強かったのではないかとも言われています。神事ですもんね。大掃除と言われると「面倒くさいなぁ…」と思う場面でも、厄払いや今年あった嫌なことを洗い流して来年の運気を高めようと思えばヤル気が出るかもしれません。

似ているけれども違う、大掃除と大祓

神社では基本的に年に二回「大祓(おおはらえ)」と呼ばれる、罪や穢れを取り払う神事が行われています。6月末日の大祓は「夏越しの祓(なごしのはらえ)」、12月末日に行われる大祓は「年越しの祓(としこしのはらえ)」と呼ばれています。こちらも701年に記された『大宝律令』にも宮中行事として記載があることから、かなり古い時代から行われていたと考えられます。平安貴族・皇族などの富裕層は穢を極端に恐れ、祓・厄除けなどに命をかけていたようなところがありますから、冬至かなり重要な儀式だったのではないでしょうか。

ただしこちらは通常よりも長い祝詞(大祓詞)を奏上したり、紙で作った人形を使って穢を払うガチの神事。名前や印象はどことなく似ていますが、煤払いを起原とする大掃除とは別物ですね。また大祓(年越しの祓)は12月末日=大晦日に行われていますが、大掃除は大晦日にしてはいけないと言われています。

大晦日はダメ?! 大掃除はいつするのが良い?

大晦日に大掃除をしてはいけない理由

一年の最後の日である大晦日に何かを行うというのは、実はあまり推奨されていません。31日に門松や松飾りなど正月飾りを付けるのも“一夜飾り”と言われて、良くない行為とされています。大掃除もまた年末に行うイメージや、31日に仕事がお休みになる方が少なくありませんが、大晦日に行うのは避けるべきだと言われています。

気になる12月31日に大掃除をしてはいけないと言われる理由は諸説ありますが、大きくは

  • 旧暦での大晦日は30日=現在の大晦日(31日)の朝にいらっしゃる
  • 大晦日は心身や家を綺麗にしたうえで、静かに神様を迎えるべき

という2つの見解が主流となっています。

ただし旧暦説については年神様が来るのは旧正月(2月)になるのでは、30日の夜も眠ってはいけないのかというツッコミも浮かびます。旧暦ではなく新暦を使うようになった現代では色々と齟齬がありますが、福を運んでくれる歳神様をお迎えするタイミングを逃さないように大晦日までに大掃除は終えておくのが確実ってことです。折角出向いたのにドタバタと掃除をしていたら「入っちゃいけないのかな」と思いますよね。

大晦日には年神様の引き継ぎ(入れ替わり)がある・神様にはお願いではなく感謝をした方が良いという話もありますから、大晦日はゆったり過ごしながら一年にあった良かったことや楽しかったことを思い出して感謝しても良いかも知れませんね。余談ですが昔は24時で日付が変わるのではなく、日没で一日が終わっていたので大晦日に入浴して一年の垢を落とす「年の湯」についても早めの時間に済ませた方が良いという話もあります。

大晦日以外にも大掃除をしてはいけない日がある

というわけで12月31日になるまでには終えておきたい年末の大掃除。しかし大掃除をしてはいけないとされている日は、大晦日以外にもあります。

12月29日の大掃除がダメな理由

12月29日に大掃除をするのがNGとされている理由は、ズバリ「語呂が悪い」から。日本では昔から9が“苦(く)”に繋がるとして、良くない数字と捉えられてきました。と言っても12月19日は大掃除をしてはいけない日とされているわけではありませんので、一年の最後の晦日=大晦日のように、一年の最後の9の日=大きい苦があると考えられたのかもしれません。縁起の良くない日だから大掃除は避けようという感じですね。

またお正月飾りについても29日に松を飾ると苦しみを待つ=苦松になる、餅つきをすると苦しみも一緒についた苦餅が出来てしまうとも言われています。とにかく日本人は12月29日が嫌いなのか、昔の人的に何か良くないことが起こりやすかったのか。

元日(1月1日)の大掃除がダメな理由

年末ではなく年始になっていますが、大掃除のタブーと言える最たるものが元日に大掃除をすること。年神様がいらっしゃるタイミングの問題はさておき、1月1日は間違いなく新しい年。このときに掃除すると折角来てくれた年神様を掃き出すことになってしまうと言われています。年末に大掃除をしていなくても来てくれた、心の広い年神様を追い出すのは酷いですよね。新年早々運気ダウンになってしまうので、止めましょう。

私達人間の感覚としても、お客さんとして招かれたのに、その家の人が掃除を始めたら腹がたちますよね。元日に大掃除をするくらいならば、語呂が良くないという理由の12月29日に大掃除をした方がマシな気がします。

大掃除をするタイミングは?

掃除機イメージ

大掃除を開始するタイミングとしては、12月13日以降が良いと言われています。これは江戸時代と同じく「鬼の日」か歳神様を迎える準備開始に良いと考えられるため。現在は暦が変わっていますから13日が鬼にはなりませんが、正月事始めの日として定着していますね。一年辛いことが多く「来年こそは…!」という方は、カレンダーで12月半ば頃にある鬼宿日を探して開始日にしてみても良いかもしれません。

暦が変わっただけではなく、現在は働き方も様々。「この日が良い」と言われても仕事で出来ない事もあるでしょう。なので12月13日から28日までの約二週間を使って、時間が取れるときにちょこちょこと普段しない部分のお掃除をしていくのが無難です。そして30日を予備日として間に合わなかった所・使用頻度が高く二週間くらいの間に汚れてしまう所をさっと掃除するようにしましょう。

年末年始休みがしっかりとれる方は28日と30日の2日間で徹底的に掃除をするという手もありますが…疲れてしまったり間に合わないところが出てしまう可能性もあるので、出来るところからキレイにしていくのがオススメですよ。慣例だからと義務感で嫌々掃除をするのではなく、今年一年の厄払い・来年の運気アップと考えるとモチベーションも上がりそうですね。

大掃除のポイント・重視したい場所はある?

新年(年神様)を迎える準備とは言っても、12月は何かと忙しいシーズン。仕事やプライベートの予定がギッシリで「家中全部は無理」という方も少なくないと思います。油汚れも寒いと落ちにくい・風邪をひいてしまう・欧米では寒い真っ盛りの大晦日ではなく春先に大掃除をしているじゃないか…などなど、様々な理由から年末には大掃除をしない派も増えているようです。接客業なら大晦日でも元日でも仕事というのも珍しくありませんしね。

しかし年末の大掃除は風習として定着しているので、やらないと運気が下がりそうとか、良くないことが起こりそうな気がするという面もありますよね。そういうのを全く気にしないという方であれば時間がとれるときに掃除していればOKですが、なんとなく不安だけど家全部をピカピカにするのは厳しいという方であれば、部分的にだけでも掃除をすると良いそうです。

年末の大掃除として重点的に綺麗にしたいポイントは玄関。年神様はきちんと玄関から入ってきてくださるので、玄関がキレイだと入ってきてくれやすくなると言われています。折れたカサが放置されていたり、買ったトイレットペーパーなどが積んであると確かに入りにくいですよね。靴がずらーっと並んでいるのも良くないそう。自分がお客さんの側だとして、入りやすいように整理整頓して綺麗にしてみると良いかも知れません。

大掃除のタイミングや大晦日の過ごし方が決められたのは昔の話。現代ではカウントダウンライブやパーティーがあったり、初詣に行ったりと、大晦日や元日に昔のようにお家に籠もって過ごすことは少なくなりました。年末もクリスマスパーティーや忘年会などで物忌みどころか暴飲暴食が気になる時期ですしね。年神様も時代の変化はきっとお分かりのはずだと思いますので、そこまで神経質になる必要はないかもしれません。

しかしホコリが溜まっていると空気が淀む=運気が停滞するという考え方もありますし、家が汚いのは健康にも精神衛生にも良くないもの。大掃除で綺麗にすべき場所はたくさん挙げられていますが、普段の使い方や掃除次第でそこまで大変にならない部分も少なくありません。予定のない休日をちょこちょこと掃除に当てると、年末に大変な思いをしなくて済みます。掃除は好きではないですが、小まめにやったほうが結局トータルで楽だということに遅ればせながら気づいたという…。