お七夜は生まれた赤ちゃんの初祝い?!
-お七夜の意味・命名書についても紹介
生まれてきてくれた赤ちゃんをお祝いする行事の一つに“お七夜”というものがあります。お食い初めやお宮参りよりはマイナーではありますが、生まれて7日目に行われるお七夜は赤ちゃんにとっての初祝い。命名式と言われるように名前を発表したり、お祖父ちゃんお祖母ちゃんと初顔合わせをしたりする事もあります。無事に生まれてきてくれた赤ちゃんの歓迎会・これからの成長を願う行事ですから、ぜひ無理のない形で取り入れてお祝いしてみては?
目次
お七夜の意味・元々の由来とは
お七夜の意味・由来とは
お七夜は、赤ちゃんが誕生してから7日目の夜に行われるお祝いのこと。
無事に出産したことを祝い、これからの健やかな成長を願うのが目的です。また親類や神様(神棚)に赤ちゃんの名前を発表する“命名式”を行い、赤ちゃんの存在を認めてもらうという意味合いもありました。現在でもお七夜のお祝いに命名書を作る方が多いのではないでしょうか。
生後七日目にこうした儀式が行われるようになった背景には、また医療体制が十分でなかった頃の時代背景もあります。昔は赤ちゃんは生まれて数日間で命を落としてしまうことが珍しくありませんでした。各地域に「七つまでは神の内」や「三歳までは神様の子ども」などの言葉があることからも、生まれた赤ちゃんが大人になるまで生きられるかという事については非常に難しいことと考えられてたことが分かります。人生の節目ともされている行事に子ども向けのものが多いのは、大人への通過儀礼と言うだけではなく、健康に成長できますようにと神様のお力添えを願うという親心も大きかったのではないでしょうか。
ただ、現代では昔と感覚が違う部分もあります。
現代の感覚で言えばお七夜は生まれてきてくれた赤ちゃんに対しての感謝と歓迎、無事に生んでくれたママへの感謝と労りのためのお祝いと言ったほうがしっくり来る行事になっています。お七夜は赤ちゃんが生まれて初めて家族と行うお祝いもあります。赤ちゃんはお名前を披露して生まれてきたことを歓迎してもらう、ママは赤ちゃんを無事に産めたことを労ってもらう…と家族の絆も深まります。伝統的な形式に則って行おうとすると大変な部分もありますが、近年はママ&赤ちゃんファーストで無理なく楽しくお祝いをするのが主流となっています。
お七夜の由来と歴史
赤ちゃんの誕生を祝い、健やかな成長を願うお七夜。
その起源は分かっていませんが、平安時代に貴族階級の人々が子供の誕生を祝って行っていた「産立ちの祝い(うぶだちのいわい)」という行事が元になっていると考えられています。と言ってもこの貴族が行っていた「産立ちの祝い」は生まれた日を初夜として、3日目の夜を三夜・5日目の夜を五夜・7日目の夜を七夜・9日目の夜の九夜と呼んで、奇数日毎に行われていたようです。
このように“奇数”が重要視されたのは、中国から暦と共に奇数が陽数=縁起の良い数だという考え方が伝わったためと考えられます。五節句などもそうですが古代中国では奇数を特別視する思想がありましたから、その影響を受けた日本でも子供の成長の節目を祝うのに縁起が良い数を選んだように感じられます。子どもが生まれて連日祝宴というのも負担が大きかったという一面もあるでしょうが。
平安貴族によって行われていた「産立ちの祝い」は武家にも伝わります。江戸時代になると徳川家では「産立ちの祝い」の中の七夜を“命名の儀”として公式行事化しました。徳川家に子どもが生まれた際には七夜に公式に名前を発表し、諸大名から祝い品を受けるという形が定着化したわけですね。この行事が庶民にも知られるようになったことで、江戸時代には“お七夜”が名前を披露して赤ちゃんの成長を祝う行事として庶民にも広がっていったと考えられています。
当時は現代よりも大々的に公開してもらわない限り、雲の上の方々の儀式風習などについて庶民には知りようのない時代。特に関東圏であれば「産立ちの祝い」一連の流れを知らず、公式行事となった“お七夜(命名の儀)”だけの存在を知ったという方も珍しくなかったと思います。お金もあって宴席の用意も全て使用人がこなしてくれる貴族と、仕事の手を休めて自分達で祝前を用意しなくてはならない庶民の生活は別物。立て続けにお祝い行事を催すわけにはいかない庶民にとっては「産立ちの祝い」よりも“お七夜”という行事のほうが馴染みやすかったのでしょう。
生まれて一週間というタイミングが、赤ちゃんが生きていけるか否かが分かれる一つ目の分岐点として妥当だったことも“お七夜”が広まった一因でしょう。赤ちゃんに名前をつけて神様・社会に自分たちの子であると認めてもらうのに丁度良いタイミングだったのではないでしょうか。結果として赤ちゃんのお祝いとして“お七夜”だけが現在まで残っているのではないかと感じます。
お七夜にすることは?
命名式(名付け祝い)
お七夜は“名付け祝い”とも呼ばれているように、メインイベントと言えるのが赤ちゃんの名前を発表する命名式です。7日目に名前をつけるのは、古くは生まれて6日目までの赤ちゃんは神様(産神)から与えられた存在で、7日目を迎えて人間になるという考え方があった名残とも言われています。誕生から6日間の赤ちゃんは神様に準じた存在なので名前をつけるのは許されず、7日目になって初めて名前をつけたのだとか。乳児死亡率の高かった時代ですから、名前をつけてすぐに亡くなってしまうと感情的に辛すぎたということもあるかもしれませんけど。
……ですが、現代はそこまで赤ちゃんの死亡率は高くありません。生まれてくる前に性別も分かりますし、出産よりもずっと前から赤ちゃんの名前を決めていらっしゃるご両親も多いですよね? 命名式や名付けと言われるとお七夜まで名前をつけてはいけないように感じられますが、この場合の命名式というのは名前を書面にして命名書を作る・命名書を飾って赤ちゃんの名前をお披露目するというイメージです。現在ならSNSに名前の報告をするのをお七夜にするという方もいらっしゃるそうですよ。
赤ちゃんの命名式には“命名書”と呼ばれるものを書くのがポピュラー。誕生日や名前を紙に書いて、神様にご報告するというのが本来の形であったと思われます。お七夜で作成した命名書は神棚や床の間にお宮参りを済ませるまで飾ります。地域によって違う場合もあるかもしれませんが、定番と思われる命名書の書き方をご紹介します。
正式な命名書の書き方
がっつり形式に沿って行いたい場合は奉書紙と呼ばれる和紙、なければ半紙を使用して毛筆で記載します。
- 用意した紙を上下二つ折りにして、わの部分を下に
- 左右の三つ折りにして折り目を付けます
- 右のスペースに命名と書きます
- 真ん中のスペースには①父親の名前と続柄・②赤ちゃんの名前・③赤ちゃんの生まれた日付、の三点を書きます。山田太郎さんのご長男で太陽くんであれば、①が山田太郎長男、②が太陽。③には日にちだけではなく最後に“生”を付けます。
- 左のスペースには両親の名前と命名した日にちを書きます
- 右が一番上に来るように半紙を三つ折りに
- 奉書紙(半紙)で上包みして、上包みの表にも真ん中に「命名」と記載
出来たものは三宝に載せるなどして神棚や床の間に飾ります。
略式の命名書でも可
上記の手順を見て頂ければ分かるように、正式な命名書は人間向けと言うよりも、神様向けの印象が強いもの。書いた紙は折り込んで、更に上包みをするので、赤ちゃんのご両親にも家に来てくれた方にも見えません。そのためか最近は色紙タイプのような略式の命名書も販売されていますし、可愛らしく手作りする方も増えています。赤ちゃんと一緒に写真を取るにしても、可愛らしくて名前もしっかり見えるものの方が良いですよね。お子さんに付けた名前には由来があることが多いと思いますので、こんな子に育って欲しいというイメージも合わせて命名書を選んだり作れるのも嬉しいポイントです。
略式の場合は正式ほど細かいルールはありませんが、赤ちゃんの名前をど真ん中に大きな字で書くのが基本ルール。「命名 名前」にするか名前だけを書くか、両親の名前と続柄を書くのかなどは自由。シンプルにする場合は赤ちゃんの名前だけという方もいらっしゃいます。正式な命名書の書き方に基づいて、赤ちゃんの名前の右側に長身の名前や続柄・左に誕生日を入れるのがオーソドックスとはされていますが、逆でも問題ありません。横書きの方もいらっしゃいますから、自由度はかなり高いと思って良いはず。
ちなみに、神棚がない場合はベビーベッドの近くの壁などに飾ってもOK。見下さないように大人の目線よりも高い場所であれば、どこに飾っても問題ありません。外したものは記念品になるので、アルバムに一緒に入れるなどして保存してあげてくださいね。
祝い膳を食べる
お七夜は赤ちゃんが7日間を生き延びてくれたことを祝い、これからも元気に成長してくれることを願う行事。さらに名前が決められたことをお祝いする意味もありますし、祖父母や伯父伯母などの親戚に初めてお目見えという場合もあります。となれば必要になるのがご馳走、祝い膳を揃えて皆で食べるのが伝統的な形です。
祝い膳によく使われるのは赤飯・お頭付きの鯛・紅白の麩など。それに刺し身や茶碗蒸し・お吸い物などを合わせて“膳”にするのが定番ではありますが…鰤(ぶり)などの出世魚が使われたり、蛤のお吸い物を用意するという場合も。地域によっても、家庭によっても、献立は違います。更に近年では核家族化が進んだこともあって、赤ちゃんを生んだばかりのお母さんがご馳走を用意するのは大変。お母さんに負担がかからないように仕出し(ケータリング)で祝い膳を用意することも増えていますよ。
その関係もあって洋食オードブルやピザなど、昔ながらの祝い膳とは別のお料理でお祝いするご家庭も増えています。昔ながらの祝い膳で縁起を担ぐのも良し、出産という大仕事を終えたお母さんを労うのに好物を揃えるのも良し。ハレの日・お祝いの席であるという雰囲気を味わえれば十分ですから、あまり形式にこだわらず皆で楽しくお祝いできる方法を選べば良いのではないでしょうか。
赤ちゃんの手形・足形、記念写真をとる
お七夜を迎えることはお世話になった産科を退院し、これから暮らしていく環境の中で過ごす頃合い。産湯なども行事と言えなくはないですが、お家に帰って行われるお七夜は赤ちゃんととっては初めてご両親・家族と行う行事(儀礼)とも言えます。生まれたばかりで可愛い姿を記念に残すため、宴席に参列してくれた親戚や親しい方と皆で記念撮影をしたり、これからの成長と見比べられるように手形や足形を残すという方もいらっしゃいます。
生後すぐに生まれた赤ちゃんの手形・足形をとって記念にくれる産院もありますが、そうではないところもありますもんね。生まれて間もない赤ちゃんの成長は早いもの。お七夜やお宮参りなどのイベントの度に手形・足形をとって記録していくと成長の良い思い出になりますね。赤ちゃんへの負担が少ないインク、乾燥させればインテリア感覚で使用できる粘土などのグッズや、命名書・記念写真・手形(足形)がセットで納められるアルバムなども販売されていますよ。
負担なくお七夜を楽しむために…
お七夜はいつやる?
お七夜は赤ちゃんが誕生してから7日目の夜に行うことが名前の由来です。現在の私達の考え方では生まれた日を「0」として7日間を数えますが、そこは昔からある儀式。昔の日本では0の概念がなかったので、生まれた日を「1日目」としてカウントします。赤ちゃんが1日生まれであれば、お七夜が行われるのは7日の夜になります。
ただし“お七夜”とは言え、帝王切開をしされたり産後の肥立ち・赤ちゃんの様子などから入院が長引く場合もあります。退院できたとしても産後の体調は人それぞれですし、お父さんの仕事の都合などもあります。なので、現在は「七日目」にはこだわらず、赤ちゃん&お母さんの体調が良く都合がつけやすい時に行えば良いという考えが主流。産後の体調が良くないときや、ご実家が遠方の場合などはお宮参りと一緒にお七夜(命名式)を行う場合もあります。
14日以内の届け出が義務付けられている出生届とは異なって、お七夜や命名式というのは家族内で行うお祝い。義務ではありませんから、無理をしてまで行うべきものではありません。そもそもお七夜というお祝いに馴染みのない地域もあります。無理のないタイミングで、楽しく開催できるということを第一に行うようにしましょう。赤ちゃんは最初に顔見せだけ参加して別室に寝かせる、ママがしんどくなる前に宴会をお開きにする・赤ちゃんの元へ行って一緒に休めるようにする手筈を整えておくと確実ですね。
誰を呼ぶ? 招待されたら?
お七夜は祝宴ではありますが、ごく内輪、基本的には家族と言える範囲内で行われます。オーソドックスなのはママパパの両親(赤ちゃんにとってのお祖父ちゃんお祖母ちゃん)をお招きする程度。ご両家揃ってお家に呼ぶのはスペース的に難しい・どちらかの実家が遠方であるなどの場合には、お七夜は母方・お宮参りは父方などと分けるお家もあります。もちろん赤ちゃんとパパ・ママ・兄弟だけでお祝いしても問題ありません。夫の実家にはトラブルを避けるように事前に連絡しておいた方が確実ではありますが。
一つ注意したいのは、名付け親がいてお七夜で命名式をする場合にはご招待するということ。名付け親を抜きにして命名式をするというのは失礼になってしまうので、声をかけるようにしましょう。家族のしきたりや名付け親との関係性にもよりますが、名付けてもらったお礼としてお金や商品券をお渡しする場合もあります。
場合によっては親ではなく親しい兄弟・友人を呼びたいというご夫婦もいらっしゃるかもしれません。親しいお友達や兄弟に呼ばれた場合には、お食事代の意味がある「御酒肴料」、もしくは無難に「御出産祝」と表書きを書いて祝いを持参しましょう。お祝いと返礼のやり取りが面倒な場合は招待時に一声かけておくと、お互いに気楽にお祝いを楽しめます。
赤ちゃん&ママの服装は?
お七夜はお母さん&赤ちゃんの体調を考慮して家で行われるのが一般的。ですのでご家庭によっても異なる部分はあるでしょうが、基本的には出席者の参加者も“ある程度”きちんとした服装であればOKです。形式張るほどフォーマルな装いやガッツリ着物を着込んでしまうと、場違い感が出てしまう場合もあります。お祖父ちゃんお祖母ちゃんならまだしも、兄弟や友人の場合はちょっと気まずいですよね。お祝いの席ではあるけれど、内輪なものだということを考慮した服装のチョイスをお勧めします。
ちなみに赤ちゃんの服装はベビードレスやロンパースなど。退院する時に着せたベビードレスを使いまわしたり、普段遣い可能なレベルのお洋服を着せるという方が多いようです。今の時代、各自のスマホでばっちり記念撮影されますから、後々見直した時にお子さんが愛されていたと感じられるような可愛らしい服を選んであげてください。
参考サイト:お七夜~お祝い事/お七夜とは?命名式との違いは?由来や現代の祝い方について
これだけご紹介していて何ですが、私自身はお七夜に参加したことはありません。母に昔の話を仕来りを尋ねつつ、友人達に何をやったかを聞いて(足りない部分はインターネットを参考に)書かせていただきました。出身が北海道なので、本家が広島県の我が母はやったそうですが、やらない家庭も多いんですよね^^; 昔々の“お七夜”は村の人や助産婦さんを呼んで宴会をする事もあったそうですし、ガッツリ祝い膳を揃えて、墨をすって字を書いて…とお祝いされて嬉しいと言うよりも大変そうな印象があります。
現在に近づくにつれて小規模化していますから、現在ならば家族だけで決行するのが余計な気を使わなくて良いんじゃないかなと思ったり。お七夜をしたかと聞いた友人はほぼ女性なので「産婦なのに夫の実家に気を使うのはウンザリ」というようなネガティブな意見も多かったです。男性の方は是非参考にして欲しいと切に願う…! 古い感覚では赤ちゃんを生んだらママは添え物的な扱いをされますが、近代的な目線で出産を終えて疲れている奥さんを労りつつ、お七夜のお祝いを行うのがベターなのではないかなと。
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