ドラジェ(コンフェッティ)の言い伝え
-結婚式ギフトに使われる由来・意味とは

ドラジェ(コンフェッティ)の言い伝え<br/ >-結婚式ギフトに使われる由来・意味とは

ドラジェは結婚式のイメージにも合うパステルカラーの色合いが可愛らしいお菓子。主な用としてはゲストの方に配る引き出物…というほど仰々しくない“プチギフト”ですが、幸せのお菓子・幸福の種という謂れからオシャレなウェルカムアイテムとしても人気があり、ウェディングケーキ類の飾り付けに使う方もいらっしゃいますね。しかしなぜ“幸せ”を象徴するお菓子なのか、贈り物は“5粒”なのかご存知でしょうか?

ドラジェ/コンフェッティとその意味

ドラジェ(コンフェッティ)とは

ドラジェはお砂糖でアーモンドをコーティングしたお菓子のこと。結婚式のギフト用としては白もしくはパステルカラーのものがポピュラーですね。フランスでは古くから結婚式の招待客にお渡しする引き出物のような感覚で利用されており、イタリア・ギリシア・中東などでも結婚式に使用するお菓子としては定番の存在なのだそう。

日本でも定着しているドラジェという呼び名はフランス語の「dragée」をカタカナにしたもの。フランスではドラジェに“幸福の種”という意味があると紹介されたことや、見た目の可愛らしさから日本でも結婚式にいらしてくれた方へのギフト用お菓子として人気となりました。ドラジェという言葉が広まりすぎた影響か、たまに結婚式のお返しのお菓子をドラジェと言うと思っている方もいらっしゃるくらいだとか。

そのくらい日本ではドラジェ=結婚式の引出物用という印象が強いですが、フランスでは結婚式のほか出産・洗礼・誕生日など様々な慶事で使われる祝い菓子。味や食感は全く別物ですが、ビジュアルや祝い菓子としての伝統は和風イメージの結婚式の際のギフト(引き出物)としてじわじわと人気が出ている香川県の祝い菓子「おいり」と似た印象ですね。どちらもカラフルで可愛らしいギフトを用意したいという方に人気です。

ちなみにドラジェと一口に言われる、砂糖コーティングをされたお菓子でも種類は色々。上に掛ける砂糖ペーストの硬さで荒く糖衣掛けしたソフトドラジェ・ゼリービーンズなどのように固い糖衣をかぶせたものはハードドラジェと別れますし、中身もアーモンドに限りません。他のナッツ類・チョコレート・リキュールなどに糖衣掛けものもドラジェに含まれるので、広い意味ではM&M’Sなども含まれるようです。

と言っても、日本で結婚式のギフトとして使われているドラジェは『多産』『繁栄』など縁起物とされるアーモンドを入れるのがポピュラーですね。アーモンドをお砂糖でコーティングしただけのものが伝統的なレシピではありますが、味や食感を良くするためアーモンド+チョコレート+糖衣というタイプも少なくありません。日本では“ドラジェカラー”なんて言葉もあるようにパステルカラーの印象が強いですが、金・銀・マーブルなど様々な色味のものもありますよ。

ドラジェ? コンフェッティ?

時々ドラジェではなくコンフェッティと呼ぶ方もいらっしゃいますが、ドラジェがフランス語なのに対してコンフェッティ(confetti)という言い方はイタリア語由来どちらも間違いではありませんが、日本ではブライダル産業などが「ドラジェ」としてPRをしていることが多いので、ドラジェと呼ぶほうが一般的かもしれません。

ちなみに英語でもフランス語に準じた“Wedding dragees(dragée)”と表記されることもありますが、そのものズバリの“sugared almonds”だったり“Jordan Almonds”などと言う呼び方のほうが多く使われているようです。英語でDrageesだとケーキを飾る金銀のシュガーボールなども含まれますし、confettiだと紙吹雪の方の意味の方が強くなってしまします。

ドラジェの意味・込められた願いとは

ドラジェは使われている素材や製法・渡す数・色などによって様々な意味が込められているお菓子。
アーモンドは子孫繁栄や幸福の象徴とされていますし、アーモンドの甘苦い風味は人生の味を表しているという詩的な表現もあります。それに甘い砂糖を掛けることで、新郎新婦のこれからの夫婦生活が甘くなりますように・より人生を楽しめますようにという意味に繋がります。アーモンドの意味も含めると「甘く楽しい結婚ライフと子宝に恵まれた幸せな人生を」という感じでしょうか。

ドラジェイメージ

またドラジェは数によって願いや意味が異なります。1粒の場合には「約束」を、三粒の場合には「家族」「夫婦」「子供」を表すと言われています。結婚式でプチギフトとして使われることが多い5粒の場合は「幸福」「子孫繁栄」「富(豊かさ)」「健康」「長寿」の意味に。ヨーロッパでは花嫁が自分のベールを切り分けてドラジェを包んだというエピソードもあるので、ゲストの方に配る場合には「2人の幸せをゲストのおすそ分けします」という意味も通じるお贈り物になります。

さらに、黄色いドラジェは「感謝」を示す、白いドラジェは結婚式のためのものなど、色によっても意味が違うという説もあります。5粒それぞれの色が幸福・子孫繁栄・富・健康・長寿を表していると紹介されているのを目にした覚えもあるのですが、こちらについては調べた限り“色”ではなく“数”が象徴するもののようです。結婚式のギフトに使う場合も、色の配分はそこまで悩まなくても良さそうです。

ドラジェ(コンフェッティ)の歴史

起源はイタリア(古代ローマ)

日本でドラジェはフランス式結婚式のアイテム・フランスの祝い菓子という印象がありますが、その起源は紀元前177年の古代ローマとされています。貴族お抱えの菓子職人だったジュリアス・ドラゴタス(Julius Dragatus)という人が、アーモンドにはちみつをコーティングしたお菓子を考案したと伝えられています。中世までヨーロッパにサトウキビから抽出された砂糖は存在しなかったので、甘み=ハチミツで出すものだったようです。

彼の勤務先の貴族はこの蜂蜜コーティングされたアーモンドを非常に気に入り、婚礼や出産などの慶事に内祝いとして知り合いや市民に配ったと伝えられています。この古代ローマの貴族の風習は王宮や他の貴族にも広まり、ヨーロッパの貴族達は大規模なお祝いの時に配るお菓子として蜂蜜がけアーモンドを使うようになっていきました。

諸説ありますが、ドラジェ(dragée)という呼び名はこのお菓子を考案した菓子職人のドラゴタス(Dragatus)に由来しているのではないかという説もあります。またイタリア語のコンフェッティ(confetti)については、ラテン語ので甘いものや美味しいものを指す「tragemata」という言葉が語源という見解が有力。アーモンドの蜂蜜コーティングと現代のドラジェは全くの別物ですが、こうした語源説も合わせて考えると古代ローマ発祥と言われるのも納得できるかもしれません。

神話のアーモンドと、象徴としての意味

ギリシア神話ではアーモンドにまつわる伝説があります。それはトロイ戦争から帰る途中に難破してしまった青年デモフィーンと、トラキアの王女フィリスの物語。船が修復されたことでデモフィーンは国に戻りますが「用事を片付けたら帰ってくるから結婚しよう」と王女フィリスへ約束します。しかしギリシアに帰ったデモフィーンは別の少女と恋に落ち、王女フィリスはずっとデモフィーンの帰りを待っていましたが病気にかかって無くなってしまいます。

神々は可哀想な王女フィリスの亡骸をアーモンドの木へと変え、デモフィーンを待ち続けた海岸に立たせてあげることにします。数年後に再びトラキアを訪れたデモフィーンは王女の死を知って後悔し、フィリス王女であったアーモンドの木を抱きしめて涙を流しました。王女フィリスは戻りませんでしたが、アーモンドは美しい花を咲かせるようになったと伝えられています。

……とは「なんて救いようのない話!」と思いませんか?
婚約者に浮気されたフィリス姫のエピソードがあるアーモンド。結婚式のお祝いに使うのは縁起が悪いようにも思いますが、古代ギリシアやローマではアーモンドは一本の木に実をたくさんつけること=多産や繁栄に通じると捉えられていました。この事から“幸福の象徴”とも考えられるようになっていきます。

古代の人々にとっては、結婚したら子供をたくさん生むというのが幸せの証と考えられてきました。ウェディングブーケブライダルメイド達サムシングフォーなど現在に伝わる結婚式の伝統というのも、古代ローマでは悪霊よけとして行われていたという説が有力。厄除けを重視した理由の一つには、悪霊や邪眼に目をつけられてしまうと不妊になるという伝承がありました。なので神話での悲しいエピソードよりも、子孫繁栄と幸福の方を重視したという可能性が高いのではないでしょうか。ギリシア神話では悲恋の末に姿を変えられた植物がいっぱい登場しますしね。

アーモンドイメージ

フランスで砂糖コーティングが発明

紀元前からハチミツでコーティングされていたアーモンドですが、1220年ごろにフランス・ヴェルダンの薬剤師がハチミツに砂糖を加えてコーティングすることを発明しました。全く別業種の薬剤師が現在のハードコーティングドラジェの原型を発案したのは、アーモンドの保存と輸送のためだったと伝えられています。また、当時まだ貴重だった砂糖は薬の一種と考えられていたという説もあり、この技術は主にお菓子作りの方ではなく、医薬品に砂糖をコーティングするために取り入れられたようです。

15世紀になると砂糖が入手しやすくなったことで、結婚式のお祝いに使われていたアーモンドも砂糖でコーティングされるようになります。元々ドラジェの原型とされるハチミツアーモンドは慶事の内祝いとして使われていたものですし、入手しやすくなったとは言っても砂糖は高級品。豊かさを象徴するものでしたし、結婚式に使うと新郎新婦の幸せを願う縁起物のように捉えられますね。メディチ家やルクレツィア・ボルジアなどが使用したこともあり、糖衣でコーティングしたドラジェは結婚式や洗礼などのお祝いに欠かせないお菓子として各地で定着していきました。

イタリアでは新郎新婦に投げていた?

教会から退場する新郎新婦にかけるものと言えばライスシャワーやフラワーシャワーなどがありますよね。しかし、古くは砂糖でコーテイングしたアーモンドやドライフルーツ・アニスシードなどが新郎新婦に投げつけられていたと伝えられています。こうしたシャワー(スローイング)系の演出は“食べ物に困らず豊かに暮らせますようように”という考えから始められたと考えられていますから、シュガーコーティングしたアーモンドやハーブシードなどでも目的には沿っていたのでしょう。

しかし当たると痛いですし、怪我をしてしまう可能性もあります。そこで1875年頃からイタリアでは色鮮やかな紙吹雪が結婚式に使われるようになりました。イタリアでは糖衣がけしたお菓子をドラジェではなくコンフェッティと呼んでいたので、その代替え品である紙吹雪も“Confetti”と呼ばれるようになったのだとか。ドラジェと紙吹雪の起源・語源は遡れば同じもの…ちょっと不思議な気分になりませんか?

シャワー系演出の起源・意味はこちら>>

結婚式でドラジェを使うアイディア

ドラジェの渡し方・演出

伝統に則ったドラジェの渡し方としては、チュールに包んだものを手渡しすることとされています。これは元々、結婚披露宴が終わった時に花嫁さんが自分のウェディングベールを切り、それにドルジェを包んで招待客に配っていたというエピソードがあるためです。しかし現代では使用したベールを切るというのは現実的ではありませんし、食べ物でもありますからチュールだけと言うよりもチュール+小さいプレゼント袋・ミニギフトボックスなどに入れることが多くなっています。

また日本でも新婦さんが各テーブルを回って一人もしくは一組ずつに手渡しするのが望ましい…とされていますが、こちらは披露宴のスケジュールやゲストの人数次第。お見送りの際にそれぞれに手渡しするほか、各テーブルの代表者に渡す・あらかじめお席に置いておくなどの様々。数については幸福・子孫繁栄・富・健康・長寿を表した5粒というのが定番ですね。ドラジェ自体やその意味を知らない方もいらっしゃるので、披露宴に参加してくれたことへの感謝とともにドラジェの由来を書いたカードなどを添えると丁寧です。

ラッキードラジェという演出も

近年は披露宴の演出としてケーキの中にドラジェを仕込んでおく“ラッキードラジェ”という演出があります。デザートの中からドラジェが出てきた方にはスピーチをお願いしたり、ちょっとした景品をお渡しするのがポピュラー。見せるだけではなく、会場全体で盛り上がれるサプライズイベントと言えますね。

ドルジェは元々ヨーロッパで縁起物的に扱われている祝い菓子でもありますし、ラッキードルジェという呼び名のとおりに「当たった人は幸せが訪れる」というジンクスもあります。当たってスピーチを頼まれてしまうと罰ゲームのように感じてしまう方もいるので、司会の方に由来や意味などを紹介して頂くと良いでしょう。

ドラジェは手作りも出来る

ウェディング会社や会場で用意してもらう・ネットショップで買うというイメージのあるドラジェですが、さほど難しくなく手作りすることもできます。手順としてはアーモンドを乾煎りして、砂糖(グラニュー糖)と着色料に水を加えて作ったコーティング液に浸して乾燥させるだけ。コーティング液は分量を調べて作っても上手くいかないことがあるので、市販のアイシングパウダーを使うとより確実です。

ただし手作りする場合には乾かす時の接地面が平らになってしまったり、凹凸が出来てしまったりと、販売されているようなきれいな形にするのは結構大変。そこでお勧めしたいのがアイシングデコペンなどを使ってちょっとした飾り付けをする方法。コーティングした上から更にアイシングでお花などの模様が描かれているドラジェは買うと結構高いですが、アイシングデコペンなどを使うと手軽かつ低コスト。

ゲストの方へ簡単なメッセージなどを書くと他では見ることのできない“オリジナル”が作れますし、感謝の気持ちも伝わりやすくなると思います。もちろんシンプルなドルジェもふんわりした雰囲気で可愛らしいですが、マンネリ感があるかも…と感じていらっしゃる場合などは少し手を加えてみるのも良いのではないでしょうか。

日本では「フランス(イタリア)の結婚式といえばコレ!」と紹介されることの多いドラジェですが、近年欧米では伝統的なドラジェではなくチョコレートボンボン、ゼリービーンズ、ミニマカロン、トリュフチョコレートなどを使うカップルも少なくないそう。結婚式の正式なドラジェはアーモンドとされていますが歴史を遡ってみると色々なものがシュガーコーティングされてお祝いに使われていましたし、広義ではM&M’Sやゼリービーンズもドラジェに含まれるそうですから、個性的なギフトをお渡ししたいという場合にはこの辺りもアイディアに繋がるかもしれません。

参考サイト:History of Jordan Almonds「ドラジェ」に込められた様々な意味

見た目も可愛らしいプチギフトとして人気のドラジェ。名前やパステルカラーなビジュアルは知っていても、意外と知らないこともあったのではないでしょうか。恥ずかしながら私は流行りだした当初、ギフトのことをオシャレな言い方をしているものだと思っていました。

すっごい余談。drageesで検索をしつつも分からない単語があったのでページ翻訳機能にお世話になったんですが…なんとdrageesが“ドラ○もん”に翻訳されるという衝撃事実。時と場合によって違うみたいですが「結婚式のドラ○もん」と表示されたときには目が点になりました。