婚約指輪(エンゲージリング)の起源と由来
-ダイヤモンドの定番化は販売戦略?!

婚約指輪(エンゲージリング)の起源と由来<br/ >-ダイヤモンドの定番化は販売戦略?!

プロポーズの時に、もしくは婚約が成立した時にプレゼントされる婚約指輪。映画やドラマで「僕と結婚して下さい」とジュエリーケースを開けて、ダイヤモンドの付いた指輪が差し出されるシーンに憧れた経験のある女性も多いのではないでしょうか。婚約指輪もしくはエンゲージメントリングと言われれば何らかのビジュアルを想像できる方が多いとは思いますが、いつから婚約時に指輪を着けるようになったのか、ダイヤモンドを使用した指輪が婚約指輪の定番となった理由や背景はご存知でしょうか?

婚約指輪(エンゲージリング)について

婚約指輪とは

婚約指輪は、呼び名の通り婚約が成立している=結婚する約束を交わしていることを示す指輪のこと。エンゲージリングとも呼ばれていますが、英語では“engagement rings(エンゲージメント・リング)”と言います。国などによって違いはありますが、日本では男性から女性に贈ることが主。婚約指輪もペアリングにするという方もいらっしゃいますが、男性だけが婚約指輪をしているというケースはほとんど無いように思います。

婚約指輪は結婚指輪よりも華やかななデザインのものが多くなっています。これは夫婦で購入するものではなく、男性から女性に結婚の申し込み、もしくは婚約してくれたことに対する感謝の品・愛を誓う印としてプレゼントすることが多いというのが理由だと考えられます。結婚指輪は常時身に着けることを考慮して選ばれますが、婚約指輪はデイリーにではなく特別な日だけ着けるという方が多いのも要因でしょうか。

ただし、婚約指輪もペアリングで揃える場合はシンプルめなものが選ばれる傾向にありますし、宝石が飾られていないといけないという決まりもありません。購入するタイミングについてもプロポーズに使用するために婚約前に用意する方から、プロポーズが成功した後でに二人で買いに行くなど様々。日本のブライダル関係やジュエリー関係の企業が売り込んで広まった習慣ですから、特に守らないといけないルールや順序があるものでもありません。

婚約指輪の言い伝えと由来

左手の薬指にはめる理由

婚約指輪も結婚指輪も、日本であれば“左手の薬指”につけるのが一般的です。
古代、紀元前のエジプトやヨーロッパでは手の指の中で「薬指には最も太い血管が通っていて、心臓につながっている」と信じられていたためという説が一般的です。右手と左手では左手の方が心臓に近い位置にありますから、自分の心や命と最も近い位置=左手の薬指であると考えられていたんですね。そこに指輪を嵌めることで自分もしくは相手の心を繋ぎ止める意味になり、永遠の愛を誓うことに繋がる…というわけです。

ただし左手の薬指に婚約指輪を着けるのが「あたりまえ」という訳でもありません。国によってそれぞれの指や左右が象徴すると考えられているものは異なり、結婚指輪や婚約指輪に適していると考えられている指も違うんです。欧米文化と一緒くたに見てしまいがちですが、フランスやドイツなどでは婚約指輪は右手という方も珍しくないそうですよ。

ダイヤモンドが多い理由

現在は宝石なし、誕生石を飾ったものなど様々な婚約指輪が用意されていますが、代表的なエンゲージリングとしてはダイヤモンドが使われているものをイメージする方が多いのではないでしょうか。ジュエリーショップでも数が多いのはダイヤモンドを使った婚約指輪が多いですよね。

婚約指輪に使用する宝石としてダイヤモンドが使用されるようになったのは、ダイヤモンドが最も硬い宝石であること他の宝石よりも光の屈折率が高く輝きが強いためであると紹介されます。その硬さと輝きが「変わらない気持ち」「永遠の愛」を表現するという考えですね。花言葉のように宝石類にも“石言葉”と呼ばれる意味付けががありますが、ダイヤモンドの石言葉は「永遠の絆」「純潔」「不屈」など。結婚する約束をした証として贈る指輪に相応しい宝石であると考えれたことから婚約指輪=ダイヤモンドが定番となりました。

…というのは実は建前も少し入っていて、実際のところはダイヤモンドメーカーが特性を生かして「A Diamond Is Forever(ダイヤモンドは永遠)」というキャッチフレーズと共にキャンペーンを行った影響が大きいそうです。ともあれダイヤモンドの婚約指輪は一般的となっていますし、キャンペーンの影響もあって良い印象を持っている方がほとんど。透明のものであれば服装などに関係なく身に着けやすく、硬度が高いので傷がついたり割れたりしにくいという実用面のメリットもあります。定番としてダイヤモンドの婚約指輪が愛されているのはイメージと実用面、両方において無難だということでしょうか。

婚約指輪(エンゲージリング)のイメージ

婚約指輪(エンゲージリング)の起源と歴史

婚約指輪の起源は古代ローマ

婚約成立の印として男性が女性に指輪を贈る、婚約指輪の起源は古代ローマにあるという説が有力です。

現代日本での婚約というのは口約束のようなもの。婚約について民法での規定はありませんし、何らかの届け出をする必要もありませんよね。婚約解消された時などには証拠となるので完全なファッション行為とは言えませんが、通常であれば婚約指輪や結納は婚約が成立している証・結婚に向けて動く中で行われている風習の一つと言えます。婚約指輪を買わず、結納・結納返しを飛ばして結婚する方も珍しくありませんよね。

しかし、古代ヨーロッパやキリスト教の中での婚約というのは現在私達が思うよりも重い扱い。婚約も結婚に準じた契約であると見なされており、婚約の時点で様々な義務が発生することが多かったようです。結婚の約束をしている状態というよりも、法的に認められた関係だと言えますね。時代・地域・宗教にも異なりますが「結婚式をまだ挙げていないが夫婦と認められている」いうような捉えられ方でしょうか。

古代ローマでも婚約というのは現代日本人が思うよりも“結婚”の性質が強いものであったと考えられます。また、現在よりも女性の地位が低く、女性は父親や夫の所有物という思考が強かった時代でもあります。結婚というのも女性の所有権が変わる、売買契約に近いものだったというのが通説。結婚の形式についても家(主に父親)から花嫁を買うという形式をとる“Coemptio”というものが存在していました。このため婚約が成立した時に渡す、婚約指輪の起源とされているものも、未来の妻とその父親に渡す「手付金」という意味合いが強かったと考えられています。

ただしローマでの婚約指輪については諸説あり、歴史家のスーザン・ワゴナーは「女性の所有権を買い取るためものではなく、男性からの担保もしくは先取特権としての前払い」だったと記しています。婚約期間中に男性に何かあったり、結婚の約束が果たされなかったときのための保証金…現代でも納得できる考え方ですね。時代背景や男性から女性に贈ることが主だった事も考えると所有の印であったことも否定できませんが、将来妻となる女性に対しての誠意も含まれていたと思いたいところではあります。

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古代エジプト説もある

婚約指輪は古代ローマよりも更に遡って、5000年ほど前の古代エジプトで誕生したものであるという説もあります。古代エジプトでは始まりと終わりがない“円”の形は永遠を象徴するものと考えられ、その円の形を指輪を身に着けるという風習がありました。元々は冨の象徴としても指輪を付けていたそうですが、富の共同所有権を表すものとして結婚相手と指輪を交換するという形になったと考えられています。

この時点では婚約指輪の起源とも、結婚指輪の起源とも捉えられますが、古代エジプトでも結婚と指輪が結び付けられていたと言えるでしょう。血管が最も心臓に太く繋がっていると信じられた“左手の薬指”を、指輪をつけるに相応しい場所として重視する考え方も古代エジプトが発祥とされています。

結婚指輪の起源説・歴史はこちら>>

11世紀に婚約期間・婚約指輪が必須に

1215年になると第4ラテラン公会議でローマ・カトリックにおける正式な結婚までの手順が定められ、婚姻は婚約と結婚の二つの段階が必要である=結婚式の日までの間に一定期間をおくことが義務付けられます。ただしこれはローマ・カトリック式に婚姻手順を大幅に改定したものではなく、古代ローマから続いた結婚の風習を受け継ぐ形で法令化したところが大きいもの。個人的には家同士の結びつきを強めるために幼児のうちから婚約をすることも増え、当人達が結婚可能な年齢となるまでの期間についても重視した結果ではないかとも思います。

ともあれ、カトリックでは婚姻に至るために婚約したことを周知させる“婚約式”を行うことが必要と定められました。これによりキリスト教(カトリック教)が強かったヨーロッパの国々では、婚約成立時から指輪を身に着ける=婚約指輪が普及しました。

ダイヤモンドイメージ

ダイヤモンドは1477年以降

現在でも多く見られるダイヤモンドをあしらった婚約指輪が使われるようになったのは、15世紀以降のことと考えられています。実際にはそれ以前から存在していたという指摘もありますが、記録上でダイヤモンドの婚約指輪を初めて贈った人はオーストリア大公のマクシミリアン1世(後の神聖ローマ帝国皇帝)とされています。1477年、マクシミリアンはブルゴーニュ公国のマリー(マリア)と婚約する際にダイヤモンドで「M」の形を描いた婚約指輪を贈ったと伝えられていますよ。

ダイヤモンドに限らず、15世紀~17世紀頃は様々な婚約指輪が利用されていた時期でもあります。posie ring(ポージーリング)と呼ばれる内側に恋人への想いを刻んだ指輪や、ギメルリング(Gimmel Ring)というふたつの環が重なるタイプの指輪も流行しました。特権階級の方であれば宝石をあしらうということもあったようです。

オーストリア大公マクシミリアンはダイヤモンドを使った婚約指輪を贈りましたが、それを契機に結婚指輪=ダイヤモンドが一気に広まったわけではないんですね。ダイヤモンドのついた婚約指輪は1700年代に王侯貴族・富裕層の間で流行し始め、1800年代後半に南アフリカのダイヤモンド鉱山での採掘が増加したことと合わせて普及していきました。

現在のような指輪の普及は20世紀から

もっと早い段階から貴族階級や富裕層の方はダイヤモンドほか宝石類で飾った結婚指輪を贈っていたと考えられます。しかし当時はまだ一般庶民にまで浸透したとは言えない状態でした。さらに、20世紀初頭の世界恐慌の影響もあってダイヤモンドの供給は需要よりも高いという状態になり、値崩れも起こったようです。

そこでダイヤモンドの探査から小売までを出がける企業De Beersは、広告代理店N. W. Ayer & Sonに依頼し、世界恐慌が落ち着いた頃からキャンペーンを行いました。この時に制作された「A Diamond Is Forever(ダイヤモンドは永遠)」というキャッチフレーズは現在でも使われていますね。ダイヤモンドと言えば天然鉱物で最も硬いこと、かつ美しい輝きが特徴。この丈夫さと輝きが「永遠の愛のシンボル」であるとして、婚約指輪にダイヤモンドほど適した宝石はないと宣伝し始めたわけです。

中世とは異なり庶民でも頑張れば買える価格であり、宝石を贈る=社会的な成功や相手への愛を示す行為にもなると大々的に宣伝されたこともあり、このダイヤモンドの婚約指輪を押すキャンペーンは大成功。余談ですが給料の○ヶ月分の価格のものを購入するという話も、この時にダイヤモンドの大きさが「愛の大きさ」「人としての成功を表す」と広められたからなのだとか。…なるべくお金を使ってもらおうと、ダイヤモンド業界・ジュリー業界が押したという可能性が高いですよね。

ちなみに日本で婚約指輪を贈ることが普及したのは1650年代後半~1960年代にかけての時期。ごく最近のことなんですね。ウェディングドレスなどと同じく欧米では既にダイヤモンドの婚約指輪がポピュラーになっていた時期ではありますが、婚約指輪の風習が取り入れられた当初はダイヤモンドではなく真珠を飾った指輪の方が主流だったそうです。ダイヤモンドの方が主流になったのは1970年代、ダイヤモンドのエンゲージリングのTVCMの影響が大きいのだとか。

近年の婚約指輪事情について

婚約指輪のお値段は低下気味

婚約者にプレゼントするエンゲージリング。昔は「給料の三ヶ月分」相当の値段の指輪を贈るのが当たり前という風潮もありましたが、『ゼクシィ 結婚トレンド調査2017調べ』では20万円代~30万円代という層が約50%を締めています。近年はそこまで高いものを買うという方は減っていることが分かりますね。

また、ゼクシイさんの統計は“婚約指輪の相場価格”と購入者が対象のもの。同調査では約3割のカップルが婚約指輪(婚約記念品)を「なし」と回答しています。調査を行っているのがウェディング産業絡み=多い数字を出せる層にアンケートを実施しているという指摘もあります。結婚式をしない・身内内だけの地味婚タイプはウェディング産業とかかわらないですもんね。なので実際は婚約指輪を用意しないという方が更に多いと推測できます。婚約指輪の有無しは調査機関によって結果はかなり異なり、5割近くのカップルは買っていないのではという説もあるほど。

日本で婚約指輪は購入・装着が義務付けられているものではありませんし、もちろん婚約指輪を贈らないと結婚出来ないなんてこともありません。結婚やその後の生活にはお金がかかるので婚約指輪にお金をかけるよりは今後の貯蓄に…という方もいますね。もちろん定番と言えるダイヤモンドのエンゲージリングが欲しい・ドラマのように婚約指輪をパカっと出してプロポーズされたいという女性も少なくありません。夫婦になるとお財布も共同部分が大きくなりますし、好みや希望も人それぞれなので婚約が成立してから相談して選んだほうが無難ではありますね。

長く使えるセットリングも人気

結婚式もしくは婚姻届の提出を終えてから、結婚指輪はずっと身に着けるという方も多いですよね。対してかつて婚約指輪はプロポーズされてから結婚するまで、一年あるかどうかという期間だけ身に着け、結婚後は仕舞い込んでしまうというのが一般的でした。結婚指輪よりもお高いのに。一生の宝物…とは表現されますが、ジュエリーリフォームの品目としても上の方に登場するあたり「もったいないなぁ」と思う方は多かったと推測できます。

そこで最近は結婚指輪を着けるようになった後でも、婚約指輪を単なる記念品とはせず、結婚指輪と重ねづけしてアクセサリーとして利用するという方が増えています。ジュエリーメーカーも結婚前にはエンゲージリングを単体で、結婚した後はマリッジリングと重ね付け出来るように最初からデザインされている“セットリング”に力を入れているように見受けられます。ずっと重ね付けするのではなく、普段使いには結婚指輪だけ・お出かけには婚約指輪も重ねてと装いに合わせて変えることも出来ますね。

セット販売されていないものでも、同じブランドラインで揃えたり、デザインを考慮すれば結婚後も婚約指輪を活用することが出来ます。婚約指輪を選ぶときも単体のデザインだけではなく、重ね付けした時にバランスが取れやすいものを意識する方も増えています。順序としては婚約指輪→結婚指輪の順で選ぶことになりますから、婚約指輪次第で結婚指輪を選べる幅が変わってくることもありますね。こうなってくると、まずます男性が一人で頑張って婚約指輪を選ぶよりも、プロポーズの後にお二人で選びに行くのが無難なような気がします…。

参考サイト:Here’s the Real Reason We Propose With Engagement RingsYou’ll Never Guess What Engagement Rings Used to Symbolize in Ancient Times婚約指輪の由来って? 意外と知らない「指輪を贈る意味」

交際・婚約・結婚という流れの中で、重要な意味合いを持つエンゲージメントリング。女性がプレゼントしてもらうことが主なので女性の方が憧れのある小物ではないかと思います。アクセサリーが好きな女性も多いし、恋愛と結婚をテーマにしたドラマや映画では必ずと言って良いくらいに登場しますしね。

一つ主張したいのは、ダイヤモンドは永遠の愛の証・愛情を表すのに給料何ヶ月分のを買うべしというのはジュエリー業界の陰謀(?)だということ。今年の流行とか、デザインの縁起や由来であるとか、色々言われていますが…既成観念や各社商戦に踊らされず、後々まで納得出来るものを購入されるのが一番ではないでしょうか。ひねくれ者としては、婚約指輪としてシルバーブランドのペアリングを買ったとSNSにアップされている方を見かけるとちょっと嬉しく感じる次第。