サムシングフォーと靴の中の6ペンス
-結婚式に揃えたい5つの幸運アイテムとは

サムシングフォーと靴の中の6ペンス<br/ >-結婚式に揃えたい5つの幸運アイテムとは

欧米では幸せな結婚生活を贈るおまじないとして、結婚式で“古いもの・新しいもの・借りたもの・青いもの”の4つを身につけるという習慣があります。日本でも「サムシングフォー」という呼び名で知られるようになり、4つのラッキーアイテムを揃える方が増えていますね。

日本でも結婚式の新定番となりつつあるヨーロッパ伝統の縁起物サムシングフォーや、セットで登場する幸福の縁起物「6ペンスコイン」について、起源や由来はご存知でしょうか。それぞれの意味が分かると用意する際に困りませんし、日本の結婚式への取り入れ方アイディアも紹介しますよ。

サムシングフォーと6ペンスの由来・歴史

サムシング・フォーとは?

サムシングフォーは欧米で結婚式の際に“花嫁が身に着けると幸せな結婚生活を過ごせる”ラッキーアイテムとして信じられてきた4つのものの総称。

  • Something Old(何か古いもの)
  • Something New(何か新しいもの)
  • Something Borrowed(何か借りたもの)
  • Something Blue(何か青もの)

という4つのアイテムを身に着けるという結婚式の際の習慣を指します。

サムシングフォーは古い時代から欧米で信じられてきたジンクスであると紹介されることもありますが、古いと言ってもビクトリア朝時代のイギリスから始まったおまじないとされています。と言っても、それ以前にも花嫁が自分を守ったり、幸せな今後を願ってお守りのようなものを身に着ける風習はあった可能性が高いでしょう。ウェデングブーケなども悪霊を寄せ付けないための“花嫁さんのお守り”として使われていたという説がありますしね。

古いもの・新しいもの・借りたもの・青いものの4つを結婚式で身に着けると良いという伝承は17世紀頃からあったのではないかとも考えられていますが、1800年代後半頃という説が有力視されています。もしかすると各地に個別に存在していたジンクスが統合され、19世紀に花嫁が身につけると良いものとして詩に登場したのかもしれません。

4つの“Something”を揃えようという風習が広まってからと考えると、その歴史は約200年位。しかし現在では他ヨーロッパの国々やアメリカで伝統となっており、日本など欧米文化の影響を受けた国々でも取り入れられています。現在欧米の伝統的なブライダルスタイルとして紹介されるものの多くが、実は19世紀に確立した習慣。長い歴史から見れば短い間に世界的に普及したとも言えます。

サムシング・フォーは和製英語、ジンクスも…

欧米では花嫁が身に着けると幸せになれるおまじないとして“サムシングフォー(Something Four)”と英語のような呼び方が使われていますが、実はこれは和製英語。本場の情報を…と思って英語のサイトを調べても“Something Four”という言葉は出てきません。誰がこの和紙英語を使い始めたのかは分かっていませんが、おそらくブライダル産業が宣伝のために、興味を引きやすく分かりやすいサムシングフォーという言葉を作ったのでは無いかと思います。

ついでに「サムシングフォーは花嫁さんが幸せになれるジンクス」と紹介されることもありますが、ジンクス(jinx)という単語も本来の意味では“縁起の悪い物(こと・人)・不運を招くもの”という意味。日本では縁起が良くなるおまじないを意味する場合でもジンクスという言葉が使われていますが、英語で幸せを招くおまじないという意味では使いません。「サムシングフォーは花嫁さんが幸せになれるジンクス」っていうのはブライダル産業が広めた、和製英語的表現と言えそうですね。

靴の中の6ペンスコイン

日本ではサムシングフォーが花嫁が身に着ける4つのラッキーアイテムとして紹介されていますが、実はもう一つ花嫁が身に着けたい幸運のアイテムが存在します。サムシングフォーの由来とされるイギリスの古い詩では

Something Old,
Something New,
Something Borrowed,
Something Blue,
A Sixpence in your Shoe

と5つのアイテムが登場します。4つの“Something”だけではなく、(花嫁の)靴の中の6ペンスも必需品扱いなんですね。ただし4つの“Something”が幸運のオブジェクトとされているのに対して、6ペンスコインは成功と繁栄を表すオブジェクトであると信じされています。イギリスでは花嫁がこの5つを揃えるのが定番のようですが、アメリカでは4つの“Something”だけを揃えて靴の中の6ペンスは用意しないことが多いそう。

本とハート

日本でドレスを着た西洋式ウェデイングが盛んになったのは1960年代以降で、アメリカ式の影響のほうが強かったと考えられます。また6ペンスコインはイギリスで1551年から1967年まで製造されていたコイン。発祥のイギリスでは日本の「五円玉はご縁があるのよ」的な身近な硬貨だったと考えられますが、日本では入手が困難だったということも考えられますね。

ちなみに、サムシングフォーや6ペンスコインの習慣はイギリスの伝承童謡『マザー・グース (Mother Goose)』の歌が由来と解説されることもありますが…筆者が調べた限りどこに収載されているのか発見できませんでした。マザーグースは伝承童謡の総称で1000以上の童謡が含まれているので発見できなかっただけかもしれませんが……英語で“Mother Goose something old”などと検索をかけても出てくるのは日本語のサイトばかり。

日本語版wikipediaにも「マザーグース由来の根拠は見当たらない」と書かれていますし、欧米(英語)のサイトでも上記でご紹介した詩は「traditional rhyme(伝統的な韻)」や「old English poem(古い英国の詩)」とだけ解説されています。個人的にはサムシングフォーを広める時に、古い英語の詩⇒日本人にも馴染みがあるマザーグースとして紹介したのではないかと疑っています…。

サムシングフォーと6ペンスの意味

Something Old(サムシングオールド/何か古いもの)

サムシングオールドは祖先から受け継がれる伝統・愛情・財産を意味していると解釈されます。

結婚式の際に古いものを身に付けるのは、花嫁の祖先や育ってきた家庭を意味するとされています。古くからある伝統・先祖から受け継がれてきた家族(血縁)の絆の象徴であるという見解もあります。「結婚しても家族の絆は無くならないよ」という意味にも取れますね。なので花嫁さんが身に着ける“サムシングオールド(何か古いもの)”はお母さんやお祖母ちゃんなど家族・血縁関係にある人から譲り受けたものを使うのが一般的になっています。

さらに、古いものを貰って身に着けることは魔除けの意味もがあったという説もあります。古くはヨーロッパで悪意を持って睨みつけると相手に呪いをかける、悪魔の目(イビルアイ/邪視/魔眼)と呼ばれるものがあると信じられてきました。邪眼はヨーロッパだけではなく世界各地に分布していた民間伝承で、現代の日本では漫画やアニメなどでも登場しますね。

ヨーロッパでは邪眼は魔女=女性が持つという迷信もあったことから、結婚を迎えた乙女は嫉妬されターゲットになりやすいと思われたようです。しかし古いものをもらって身につけていると、邪眼の持ち主は乙女ではないと思って呪わないと考えられていたそうです。

Something New(サムシングニュー/何か新しいもの)

サムシングニューは嫁いで新しい生活を迎える花嫁の幸せ・希望を意味していると解釈されます

古いものが花嫁の過去・これまでの人生を象徴しているのに対して、新しいものは結婚してからの新生活の象徴。今後の幸せや希望を表すものであると共に、結婚に向けて新品を用意する=新しい生活でもお金に困らないようにと言う意味合いもあるのだとか。新しい生活でも幸せであることを願って身につける“サムシングニュー(何か新しいもの)”はこれから染まっていくという意味でドレスやベール・ウェディングブローブなど白いものを使うことが多いようです。

サムシングフォーのイメージ

Something Borrowed(サムシングボロー/何か借りたもの)

サムシングボローは幸せな結婚生活を送っている人にあやかるアイテムと解釈されます。

結婚式に借り物を付けるなんて…と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、この“サムシングボロー(何か借りたもの)”は自分の母親や祖母・幸せな家庭を築いている友人からアイテムを借りることで、その幸福や幸運を分けてもらうという考えから取り入れられました。日本人式に言えば“ご利益にあやかる”という感じですね。

加えて“サムシングボロー(何か借りたもの)”にもサムシングオールドと同じく、邪眼対策・悪霊よけのお守りという意味があったという説もあります。古い時代のヨーロッパには、邪眼で見られてしまうと花嫁は不妊になってしまうという伝承もありました。結婚し家庭を築いている女性の運を分けてもらうのと、この邪眼=不妊対策を兼ねて、昔は子宝に恵まれるようにと下着を借りることもあったのだとか。

Something Blue(サムシングブルー/何か青もの)

サムシングブルーは花嫁の純潔や貞操・今後の幸福を象徴するアイテムであると解釈されます。

日本では清純を表す色=白というイメージがありますが、古い時代のヨーロッパでは聖母マリアのシンボルカラーである青が純潔を表す色であると考えられていました。そのほかに青色が象徴すると考えられていたのは愛・忠実さ・謙虚さなどもあり、童話『青い鳥』に使われているように幸せを呼ぶ色としても愛されていました。現在でこそ花嫁のイメージに適した色は白という印象が強いですが、昔は花嫁の純潔(貞操)を表すにしろ、今度の生活の幸せを願うにしろ青色が適した色であると考えられていたんですね。

青いガータを付けると悪魔の目(邪眼)対策になるという伝承もあったそうですよ。

A Sixpence in your Shoe(靴の中の6ペンスコイン)

日本ではサムシングフォーが大々的にブライダルショップ・サイトで紹介され、花嫁のラッキーアイテムとしては触れられないこともある6ペンスコイン。サムシングフォーが花嫁の人生と幸福を象徴するアイテムなのに対して、6ペンスコインは富と繁栄・安定を象徴するアイテムであると解釈されています。

そもそも馴染みのない6ペンスコインというのは、イギリスで1551年から1967年まで製造されていた硬貨。1971年に廃止されたため、現在では“幻の6ペンス”とも呼ばれています。6ペンスコインはそのデザインや歴史から人気があり、廃止が通達されたときには反対運動も起こったほど。イギリスでは6ペンスコインが今でも人気があり、廃止されたというプレミア感もあってか幸運の象徴として扱われています。結婚式は勿論のこと、お守りとして所有したり、クリスマスプディングに入れるアイテムとしても使われているようです。

詩の中では“A Sixpence in your Shoe”と記されていますから、より詳しく言えば“花嫁の左の靴に入れた6ペンスコイン”というのが伝統的な形として紹介されています。なぜ左の靴なのか理由は紹介されていませんが、個人的な推測としてはウェディングロードを歩く時の父親のポジションの関係ではないかと思います。

日本では新婦の父も新郎もどちらも新婦の右に立ちますが、実は欧米では父親は左側に立つのが一般的。新郎は右側に立ちますが、花嫁の父親は新婦サイドの人間なので新婦サイド(祭壇に向かって左側)が立ち位置とされています。6ペンスコインを花嫁の靴に入れるという風習が出来た当初、花嫁の父親はウェディングロードを歩いく前に娘の靴に6ペンスを入れていたと伝えられています。自分の側だから入れやすかったのではないでしょうか…。

実際は何を用意すれば良い?

サムシングブルーのイメージ(青ガーター)

サムシングブルー

サムシングブルーは花嫁の純潔・夫となる人に対する忠誠を象徴しているという見解が主流。そのため結婚式では人目につかないところに身に着けるのが良いと考えられ、伝統的には青いリボンと白いレースで装飾されたガーターリングを身につけることが多かったようです。ガーター・トスでも使われるように、昔々には花嫁のガーターリング=処女・貞操の証でもあったそうですからね。そのほかウェディングドレスの中に青い糸で刺繍をしたり、青いリボンを縫い付けるなどの方法もあります。

そんな訳でヨーロッパではガーターリングが一般的だと紹介されることが多いですが、実はサファイア・アクアマリン・タンザナイトなどの青い石のジュエリーを付けるのも伝統的サムシングブルーを意識したかは定かではありませんが、白いウェディングドレスを広めたビクトリア女王もサファイアのブローチを結婚式で身につけていました。

サムシングブルーの青は純潔&夫への中世と言われると封建社会的で嫌だなぁ……と思う方もいらっしゃるでしょう。現代は男女平等ですから、青は幸せを呼ぶ色・信頼を象徴する色だという方を採用することをお勧めします。そうすれば見えない所にという縛りもなくなるので、もっと様々な形でサムシングブルー(青い何か)を取り入れることが出来ます。ペディキュアを青にしたり、ウェディングブーケに青い花を加えたり、アクセサリーに一点青を入れたりなどなど。白いウェディングドレスを着る場合は、青を入れると全体が引き締まった印象になるというメリットもありますよ。

サムシングオールド、サムシングボロー

日本では結婚式の花嫁衣装(洋装)というとレンタルしたり、お金に余裕があれば買い揃えるのが一般的。しかし昔の欧米ではウェディングドレス・ウェディングベール・アクセサリーなどは母もしくは祖母からを譲り受け、リメイクして使うのが一般的でした。最近でも海外の映画やドラマなどを見ると母親や祖母のドレスを直すようなシーンもありますよね。こうした品を活用して身に着けるのが“サムシングオールド(何か古いもの)”になりますので、広まった当初は特に意識せずともお古の品を身に着けていたと考えられます。

近年はお母さん層もドレスを着たり婚約指輪を交わした年代になっていますから、そういったものがお家にある場合は頂くというのも手。思い出の品を受け継ぐことにもなりますし、リメイクするにしろ何かと物入りな結婚式では費用節約になるのもありがたいですね。サムシングオールド(古いもの)は結婚式で使ったものに限られないので、ジュエリー類や髪を止めるピンを貰ったり、服を一着もらって生地で小物を作るなどしてもOK。

サムシングボロー(借りるもの)の場合は、結婚している友人に借りるという方が多いようです。結婚式に使ったベールやリングピロー・アクセサリー類などが人気ですが、より気軽にお願いできるものとしてはハンカチ・コスメ・香水などもあります。友人たちにも祝福して欲しい・幸せを分けて欲しいという思いからお友達に頼む方が多いようですが、母親や祖母から借りても問題ありません。サムシングフォーの話をして、お継母さんから何かお借りするというのも交流のきっかけになるかもしれませんね。

サムシングニュー、6ペンス

サムシングニューは結婚式のために新しく購入するものであれば何でもOK。新しいスタートを意味するため白が好ましいとされていますから、ウェディングドレスやシューズ・ベールなどを購入される方が多いようです。ウェディングドレス一式をレンタルされる方であれば手袋・ハンカチ・ストッキングなど手頃なものがオススメです。アメリカなどではあまり“白”にこだわらず、新しい香水や口紅などを購入するのもポピュラーなようですよ。

最後に6ペンスコイン。こちら普通のお店ではほとんど販売されていませんが、ブライダルショップや楽天市場のようなネットショップでは取り扱っているところが結構あります。銀貨タイプのアンティークコインであればお高めですが、銅貨タイプであれば2000円以内で購入できるものもありますよ。花嫁さんの幸せアイテムと言うだけではなく“幸運の6ペンスコイン”とも呼ばれているので、式が終わった後もお守りとして役立ってくれるかもしれませんね。靴に入れるのに抵抗がある方は、新郎のポケットに入れてください。

参考サイト:Meaning Behind Something Old, New, Borrowed and Blue Wedding TraditionClassic Wedding Tradition With a Modern Twist… And a Sixpence in Her Shoe!

日本でサムシングフォーとして注目されている、幸せな結婚生活をおくれるイギリス発祥のおまじない。調べてみれば人生における時間軸としての意味があったり、様々な方面から幸せを運んできて欲しいという願いが込められていることが分かりますね。邪眼に呪われて子どもが出来なくなってしまうのを防ぐ…なんてオカルトチックな話が起源という説もありますけど(苦笑)

6ペンスコインの値段を調べるのに楽天さんとアマゾンさんを見ていたんですが、自分の結婚式用にというよりも結婚する友人への贈り物として購入されている方も多いみたい。結婚のお祝いに頂けると嬉しいですよね。幸せはお金じゃないと言われそうですが、結婚生活に経済的安定は必要だと思います。。逆に“幸運の6ペンスコイン”として、結婚式に来てくれた方への引き出物や、トス系演出の景品などに使う方もいらっしゃるようです。