グミキャンディーはドイツ発祥なのか?
-グミのルーツや歴史、ゼリーとの違いとは

手軽に買えるお口のお供として、日本でも多くの方に親しまれているグミ。コンビニなどでも結構売り場が広く取られていますよね。コンビニ・スーパー・100均など至るところでグミが販売されており、様々な噛み心地×フレーバーが楽しめるようになっています。
グミには輸入商品もありますし、海外のキャンディーショップの特集ではカラフルなグミ売り場が取り上げられることもあります。日本のお菓子ではなく世界的に親しまれているお菓子というイメージはありますが、どこの国が発祥で、いつ頃から食べられていたのかご存知でしょうか?
身近だからこそ意外と考えたことがないグミの歴史、ゼリーとの違いなどについて紹介します。
目次
グミ(グミキャンディー)とは
グミとは
グミは硬めで弾力のある歯ごたえが特徴ののお菓子。
果汁やシロップなどをゼラチンで固めることで、もちもち~ゴムのような弾力のある独特の食感が生み出されています。透明感のあるきれいな見た目もゼラチンの恩恵。ただし近年はビーガンの方向けに動物性のゼラチンではなく、植物性のペクチンなどを使用したグミが作られていたりもします。ゼラチン使用がグミの必須条件というわけでもありません。
グミの発祥国はドイツ。
私達が使っている「グミ」という呼び名もドイツ語に由来しています。
ドイツ語ではゴムのことを“Gummi”と言います。
とはいえ、グミの語源となった「ゴム」は輪ゴムやタイヤなどのゴムではなく、アラビアガムと呼ばれるアカシア属樹木の分泌物を乾燥させたもの(アカシア樹脂)[1]。このアラビアガムに水を含ませると、ゼラチンのように膨らみます。このため、ゼラチンが普及する以前は増粘剤として使用されていました。
初期に作られていたグミにもアラビアガムが使用されており、ゴムのような食感が特徴的でもある砂糖菓子にも“Gummi”が付けられたと考えられます。余談ですがチューインガムはドイツ語で“Kaugummi”、こちらもゴムを意味する“Gummi”が含まれていますね。
ちなみに、英語でグミはゴムのような+キャンディー菓子で“Gummy candy”。キャンディー部分を省略してGummiesなどとも呼ばれています。発音などの違いはありますが、私達が使っているグミという呼び名に近いですね。
ワイングミ?
グミ発祥国のドイツでは
- fruchtgummi(フルーツグミ)
- weingummi(ワイングミ)
というグミの区別があります。
日本でワイングミと言えば、カルディさんで話題になった「ワインをゼラチン等で固めた大人向けのグミ」というイメージ。フルーツグミのほうは原材料に果汁をちゃんと使っているよ、という印象がありますよね。
ですが、ドイツの区分は別物。
- fruchtgummi(フルーツグミ)は酸味料としてフルーツ酸(クエン酸)または乳酸
- weingummi(ワイングミ)はワインまたは酒石酸
を使用して作ったもの、という材料面での区分です。
また、ワインを使用したweingummi(ワイングミ)であっても、製造過程でアルコールは蒸発するため、基本的にはノンアルコール[1]。大人向けのお菓子ということはなく、子どもも普通に楽しむことができます。
日本では9月3日がグミの日
一般社団法人 日本記念日協会さんによると、UHA味覚糖株式会社が9月3日を「グミの日」として制定しています。9月3日なのは9(グ)と3(ミ)という語呂合わせからと、とてもわかりやすいですね。9月3日にはUHA味覚糖株式会社、カンロ株式会社などのメーカーさんと日本グミ協会さんが協力して、グミの魅力を伝えるためのキャンペーンなども行われていたようです。
グミとゼリーの違いは?
果汁などの液体を固めたお菓子には、ゼリーもあります。
ジュレに近いようなゼリーやコービーゼリーなどであればグミとは食感が全いますよね。基本的にゼリーもグミも材料はほぼ同じなのですが、大きな違いはゼラチンの比率(濃度)と水分量とされています。
ゼリーは水分が多くゼラチンの使用比率が少ないため、柔らかくみずみずしいゲル状になります。反対にグミは水分量が少なく、ゼラチンが多く含まれているのでガッチリとしたゴムのような弾力ある歯ごたえに仕上がります。また、グミは最初からお菓子として考案されたレシピであるのに対して、ゼリーは元々食事のためのレシピとして考案されたものであるという背景の違いもあります。
しかし、ゼリービーンズなど「ゼリーキャンディー」と呼ばれるタイプのお菓子になると、グミとの境目が曖昧になります。グミはゼラチンで固める、ゼリーはペクチン、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカなど植物性物質で固めるという区分を提唱する方もいらっしゃいますが、ゼラチンを使っているゼリー・ゼラチンを使っていないグミもあります。
もっと分かりやすい違いはないか調べていたところ、candyblogでちょっとお面白いグミキャンディーとゼリーキャンディーの見分け方が紹介されていました。その方法は、お菓子を持って引きちぎってみるというもの。グミキャンディーであれば伸びた後にブツッと千切れる、ゼリーキャンディーであれえば粘着性の糸をひきながら細く伸びるという区分です[2]。
すべての条件に当てはまるかはさておき、ゼリービーンズやジェリーベリーなど代表的な“ゼリーキャンディー”では当てはまるのではないかと。ハリボーなどは千切れますし。日本では新食感系グミなど独自の進化も進んでいますから、新商品をを買ったら、左右に伸ばしてみたくなりますね。
グミの発祥地、ルーツはどこ?
ドイツのハリボーが世界初のグミを販売
グミ発明したのはドイツのHans Riegel(ハンス・リーゲル)というのが定説となっています。
彼は製菓会社で働いていましたが、1920年に独立し、 ドイツ中西部のボンにHARIBO(ハリボー)を設立します。私達にとってもお馴染みのHARIBOというのは「HAns RIegel BOnn」と自分の名前と出身地の最初の2文字を組み合わせた社名だったんですね。
ハンス・リーゲル氏は最初、小さなキッチンで無色のハードキャンディーを作っていたと伝えられています。その時点でも地元で評判のお菓子ではあったようですが、ハリボー社に転機が訪れるのは2年後。1922年に、彼はアラビアガムを使用して、クマの形をしたフルーツ味のキャンディーを作りあげ、Tanzbären(踊るクマ)として売り出しました[3]。これがハリボーの看板商品とも言える“GOLD BEAR(Goldbär)”の始まりです。
後に材料はアラビアガムから、当時お菓子作りでよく使われるようになっていたゼラチンに切り替えられました。1900年代初めまでゼラチンは高価な製菓原料で、セレブのための料理に使われるという扱い。
当時の市場にはワインガムやロクム(ターキッシュ・ディライト)などもっちりした食感のお菓子はありましたが、これらのお菓子にゼラチンは使われていませんでした。ハンス氏はゼラチンをいち早く取り入れることで、しっかりとした歯ごたえと弾力がある新たなお菓子=グミキャンディーを完成させたのです。
ちなみに、日本の情報を検索するとwikipediaを筆頭に“硬い菓子を作ることで子供の噛む力を強くし、歯にかかわる病気を防ごうと作られた”という紹介もよく見かけます。しかし、英語やドイツ語で検索していくつかの記事を見ましたが、こうした健康菓子エピソードは発見できませんでした。ハンス氏の話なのか、他の方の話なのか…。
なぜ、ベア(熊)だったのか
ハリボー社と言えば「グミベア」と呼ばれる、クマの形をしたグミが代表的。日本でもよく見かけます。ハリボーが世界中に愛されるようになったのはグミの食味だけではなく、このクマを模した形も一役買っていた可能性が高いです。半透明でカラフルなこともあって綺麗ですもんね。
ところで、どうして犬や猫などではなくクマだったのか疑問ではありませんか?
これは、当時のヨーロッパではフェスティバルの時に、クマを連れたサーカス団などが人気だったためだとか[3]。今でもサーカスで踊ったり芸を披露してくれるクマは人気者ですが、当時はさらに娯楽のない時代。立ち上がった愛嬌のあるクマは、楽しいお祭などのイベントごとを連想させるアイテムだったのでしょう。
イギリスのJelly Babies説もある
ゼラチンを使った、弾力ある歯ごたえが特徴的な「グミ(グミキャンディー)」は、ドイツでハリボー社の創設者ハンスリーゲルによって生み出されました。しかし、それ以前からイギリスでは既に柔らかい食感・噛み心地を売りにしたお菓子が存在していたという見解もあります。
イギリスでは、1918年に現在のJelly babies(ジェリーベイビー)と呼ばれているお菓子の原型といえる、“Unclaimed Babies”が販売されています。それ以前から類似のお菓子、ゼラチンベースのお菓子が存在していた可能性も考えられています。ただし、こうしたお菓子はゼラチンの割合が高くしっかりした食感のグミとは別物[4]ということで、グミの発祥はイギリスであるとは紹介されません。
ただし、英語版wikipediaではジェリーベイビーは、グミキャンディーの一種とカテゴライズされています[5]。グミとゼリーの区別も曖昧ですし、特にイギリス英語ではゼラチンベースのチュアブルスイーツ全般を”jelly” と呼ぶ向きもあるそう。このためグミの発祥はイギリスであるという説を提唱している方もいらっしゃいます。
グミのルーツとされるお菓子がトルコにある?!
グミの発祥はドイツである、いやいや、それに近いものは以前からイギリスにあった…とグミキャンディ発祥についてはこの2つの説があるくらいです。しかしグミキャンディーの発明に影響を与えた、グミのルーツのような食べ物はもっと前から存在していたという見解もあります。
例えば、『Candy: The Sweet History』の著者であるBeth Kimmerleは“Gummy candies descend from Turkish delight and even Japanese rice candy(グミキャンディーは、ターキッシュ・ディライトや日本のライスキャンディの子孫である)”と述べています[4]。
ターキッシュ・ディライトは、別名ロクムとも呼ばれるトルコのお菓子。小麦粉やコーンスターチを使ってシロップなどを固めたもので、『ナルニア国物語 – ライオンと魔女』で白い魔女がエドマンドに食べさせていた餅飴(さくらんぼ餅など)を大きくしたようなお菓子です。実際に駄菓子の方の“ゼリー”と“もち”の中間のような食感。
また、Beth Kimmerleのいう“Japanese rice candy”が何を指すのかは定かではありませんが、確かに和菓子には「求肥」や「ういろう」など米粉・もち粉など“米”を原料にして、もちもちした食感を出すものがあります。こうした和菓子もグミより成立は古いですし、求肥の製法は中国がルーツとも言われています。
このため、中東~東アジアでは古くからペクチンなど植物性の粘性物質を料理に使ってきたと言えます。日本は遠いので何とも言えませんが、トルコとヨーロッパは文化交流もありました。ロクムなどのお菓子がゼリーやグミを考案するインスピレーションになった、という可能性も否定は出来ないでしょう。
日本のグミは1980年以降
日本ではじめて販売されたグミは、1980年に明治製菓が発売した『コーラアップ』です。コーラ瓶を模した形の、わりとしっかりめの食感のグミという印象がありますが、販売当初は裏にオブラートがついていて押し出すタイプでした[6]。最初は子ども向けの駄菓子という扱いでしたが、1988年に同じく明治製菓から果汁100%を売りにした『果汁グミ』が販売されます。このナチュラル素材感を打ち出した商品が若い女性を中心に人気となり、幅広い世代に食べられるお菓子として日本でグミが広まっていきました。
【参考サイト】
- Fruchtgummi & Weingummi online bestellen | Bringmeister
- Candy Encyclopedia: The Difference Between Gummi and Jelly
- The Fascinating History of Gummy Bears
- A Brief History of Gummy Bears
- Jelly Babies
- 「果汁100」にこだわって安心感を醸成してきた、日本のグミのスタンダード
グミ、美味しいですよね。味も食感も様々な商品が販売されていますし、好みも人それぞれ。今では『グミサプリ』などお菓子というよりは手軽に食べられるサプリメントというタイプもあり、罪悪感なく食べられるお菓子としても親しまれているように感じます。
ちなみに、自分はHARIBOの『ハッピーコーラ』のような、ちょっと固めで表面にすっぱいパウダーがついているタイプのグミが好きです。小学校のおやつとかも、ガムはNGだけどグミはOKって事もあって、グミの交換会するんですよね。ガムのように吐き出す手間もないので、受験のときなんかにお世話になりました(笑)
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