4月1日はエイプリルフール!
…その起原や由来、嘘は午前中ルールとは?
4月1日は「エイプリルフール」。日本では少し前まで身内で嘘を言って驚かす人がいるくらいのマイナーな行事でしたが、ここ最近はインターネット・SNSの普及で扱いが変わってきています。様々な企業が自社サイトに面白い記事や動画を掲載したり、芸能人がドッキリするような投稿をしたりで、何かと話題になっていますね。あまり興味がなかった方・知らなかった方もエイプリルフールを意識するようになっているのではないでしょうか。
とは言え特に飾りや食べ物を揃える必要もなく、お店に特設コーナーなどが作られることもほとんどありません。勉強や仕事に追われていると、エイプリルフールに気づかないまま時間切れ…なんてこともあるかもしれませんね。でも、せっかくなら親しい人くらいには、ちょっとした嘘をついて笑わせたいもの。そんなエイプリルフールを楽しく過ごすためのマナーやルールはあるのか、そもそも嘘をついて良いという謎の行事の発端は何なのか、など「エイプリルフール」に関わる雑学をご紹介します。
目次
エイプリルフール(April Fool’s Day)とは
エイプリルフールの概要
エイプリルフールは4月1日に軽い嘘をついたり、イタズラをしても良いという習慣のこと。
日本では最近になって芸能人や企業のSNSなどで面白い嘘がアップされ話題になるようになりましたが、個人的に嘘をついて回っている人は少ないのではないでしょうか。特に社会人ともなれば難しいのが現状。しかし世界的に見れば4月1日のエイプリルフールは面白すぎる「嘘」が飛び交う日。時々際どい「嘘」もありますが、基本的にはユーモア溢れる楽しい日という認識です。
日本でのエイプリルフールネタとしては社会的に叩かれないこと・企業やキャラクラーイメージを壊さないことが大前提なように思います。しかし世界には「そこまでやっていいの?」と言いたくなるエイプリルフールネタも多く、イギリス国営放送・BBCが作ったエイプリルニュースも半端じゃないことが知られていますね。特に
1957年:スパゲッティがなる木
2008年:ペンギンが空を飛ぶ
などは、世間をザワザワさせたものとして有名。
どちらも放送後に問い合わせが殺到し、BBCは大わらわだったという逸話もあります。1957年の木にスパゲッティがなっている映像は現代人から見るとちょっとアレですが、昔の人からすれば衝撃的だったことが想像できます。空を飛ぶペンギンは10年以上経った今見てもなかなか。予算のかけられなかったドラマや映画のCG(笑)よりも、よほどリアルなんじゃないでしょうか。
英語ではApril Fool’s Dayと“Day”が付く
エイプリルフールは英語をカタカナにしたものですが、英語で4月1日や嘘をついても良い行事を指す場合は“April Fool’s Day”と言います。日本での感覚でエイプリルフール(April Fool’s)と言った場合は、嘘に騙された人のことになってしまいます。直訳すると四月馬鹿とか、4月の愚か者とかそんな感じですもんね。またイギリスなどではネタバラシの際に「嘘だよ!」という意味で“April fool!”と叫ぶこともあるそうですが、ともあれ風習全体を指したい場合は“Day”をつけます。
エイプリルフールの起源・由来は不明?!
世界の到るところで楽しまれているエイプリルフールですが、起原・歴史は不明。具体的な記録が見られるのは1500年代のフランスとオランダと言われていますが、それよりも古い1392年頃からエイプリルフールともとれるような記述はなされています。500年以上の歴史がある文化・風習だとは言われているものの、その開始時期や年代は分かっていないのが実状です。それでもいくつか主力とされている仮説はありますので、エイプリルフールの起原・由来説をいくつかご紹介します。
主なエイプリルフール起源説
起源説①フランスの「嘘の新年」
エイプリルフールの起原として、おそらく最もよく知られているのがフランスで始まったという説。事の起こりは1500年代後半のフランス。当時のフランスではユリウス暦が使われており、3月末~4月1日にかけて新年のお祭りが行われていました。しかしフランスの国王(シャルル9世)がグレゴリオ暦を採用したことで、一年の始まりは1月1日だと勝手に変更されてしまいます。
今までの風習を勝手に変えられてしまった市民は反発し、今までお祭りを行っていた4月1日を「嘘の新年」と呼んで派手なお祭り騒ぎを行いました。そうした自分に従わない人々に対して、シャルル9世は大激怒。昔の話でもありますから、王の権限をフル活用して馬鹿騒ぎをしていた市民を次々と処刑してしまいます。
この時に殺された人の中には13歳の少女も含まれており、その悲劇を忘れないように人々は「嘘の新年」の風習を続けている…というのが主な話の流れ。この少女の死を悼むために13年に一度、嘘をついてはいけない「嘘の嘘の新年」という風習があるとも言われています。しかしフランスで処刑された13歳の少女の件については日本語版ウィキペディアほか多くのサイトで紹介されているものの、英語版ウィキペディアをはじめ英語圏のサイトでは触れられていません。この辺りの話の信憑性はちょっと微妙ですね。
ともあれ、春分の日ころに行なわれていた「新年の祭り」を、ある時を境に突然1月1日に変更されたことがエイプリルフールの発端とするのがこの説。フランスで行われた「嘘の新年」の風習が広まり、簡略化されて“嘘をついても良い日”として定着したというのがこの説です。
起源説②暦の変更を知らなかった人をからかった
1582年にはグレゴリウス13世が新暦(グレゴリオ暦)を採用します。そしてバチカン影響を強く受けていたカトリック教国も、1582年10月15日にはユリウス暦からグレゴリオ暦へと暦の切り替えが行なわれました。上記のフランス「嘘の新年」騒動が行ったのもこのためですね。
フランスだけではなく、当時はヨーロッパのほとんどの国が4月1日を新年の日として祝っていました。新暦が採用されて1月1日が年の始まりとされたものの、長年の風習を変えたくない、もしくは新暦の採用を知らなかった人々は、4月1日に始まる年を祝う風習を捨てませんでした。弾圧されて新しい行事にしたというのがフランス起源説ですが、古くからの風習を続ける人を「4月の愚か者(April Fool’s)」として嘲笑ったり、イタズラをけしかけたことがエイプリルフールの起源であるという説もあります。
起源説③古代ローマのお祭り
こちらは直接的なエイプリルフールの始まりというよりは、さらにその起源と言える説。ですがエイプリルフールに関する文献にはグレゴリオ暦採用(1582年)以前に書かれたものもあり、局地的に古代から引き継がれる何らかの“いたずら”文化が合ったのではないかと考えられています。
古代ギリシアや古代ローマは多神教でしたが、その中にアッティス(Attis)という死と再生の神がいます。アッティスには死んで三日後に生き返ったという伝説があり、後にキリスト教にも影響を与えたと言われている神様。このアッティスが甦ったとされる日に、人々はヒラリア祭と呼ばれるお祭りを行っていました。死と再生=冬が終わって春が来ることとかけたのか、このヒラリア祭は春分から4月1日に行なわれていたと考えられています。つまりは古代の新年のお祭りでもあったわけですね。
ヒラリア祭は変装してふざけながら練り歩いたり、近くの人に嘘をついてからかったりと、陽気などんちゃん騒ぎ。皇帝コンスタンティヌスはコメディアンを“一日皇帝”にした、主従を逆転させたなどの伝承もあります。そこまでド派手ではないものの、ヒンドゥー教のホリ・ユダヤ教のプーリムなども春を賑やかに祝う行事。日が長く暖かくなる春の始まりは人も陽気になり多少ふざけたり、人をからかうようなことをしてもOKだという下地があり、庶民を中心に脈々と受け継がれていたという話です。
起源説④インドの揶揄節
インドの修行僧たちは、春分から3月末まで悟りを開くために厳しい修行をしていたそう。しかし4月1日に修行から開放されると、すぐに心に迷いが生じて修行前の状態に逆戻り。このため、からかいの意味を込めて4月1日を「揶揄節」と呼んだことが起原であるという説もあります。ただしエイプリルフールの風習がヨーロッパを中心に分布していることから、信憑性としてはイマイチだと扱われています。
そのほかの起源説…
エイプリルフールの起原に関する説は他にも様々なものがあります。上の4つ以外にはイングランドで王政復古を祝う記念日“オークアップルデー”が関わっているという話も知られています。エイプリルフールに嘘を付くのは午前中という習わしの由来ともされています。ただし“オークアップルデー”は5月29日と4月1日とはかなり日にちが離れているため、インドの「揶揄節」と同じく信憑性は微妙だという見解が主流。
また変わったところでは旧約聖書に登場する“ノアの箱舟”で陸地を探すためにノアが鳩を放った日であるとか、エイプリルフールは北欧神話に登場する悪戯好きの神ロキと関係しているなどの説もあります。
日本におけるエイプリルフールの歴史
日本にエイプリルフールが伝わったのは大正時代と考えられています。伝わった当初はエイプリルフールを直訳して「四月馬鹿」もしくは漢語表現で万愚節・愚人節と呼んでいたそう。嘘をついても良い日というよりは、暖かくなっておめでたい感じになっちゃった人のイメージもわく名称ですね。
ちなみにエイプリルフールが定着するまでは、4月1日は「不義理の日」とされていました。これは中国発祥の風習で、不義理をしても良い……というわけではなく、日頃の不義理を詫びる日。借金を返せていないことや、嘘をついた、ご無沙汰しているなどの“不義理”に対してのお詫びの手紙を出すという日だったそうです。「四月馬鹿(エイプリルフール)」が定着したことでこの風習は忘れられていったと言われていますが、こちらのほうが日本っぽい文化な気がしますね。
楽しいエイプリルフールのための雑学
フランスでは魚(サバ)が定番?
エイプリルフールの起源説としても登場するフランスには、独特のエイプリルフール文化があります。フランスを中心としたフランス語圏では4月1日はエイプリルフールではなく「Poisson d’avril(プワソン・ダヴリル/ポアソン・ダヴリル)」として知られています。これは直訳すると“4月の魚”となり、フランス語圏以外でも「April Fish Day」と呼ばれる日があるそう。
そして“4月の魚”地域では、魚の形に切り取った紙をコッソリ相手の背中に貼るという風習があります。と言っても実行者は子供がほとんどで、大人や企業が総参加することは少ないそう。こちらも起原や理由は断定されておらず、4月に馬鹿みたいに魚がとれる(=愚かな魚だ)という説もある一方、この時期に魚は居ない(=嘘)であるという説もあります。
嘘は午前中、午後にはネタバラシ?
エイプリールフールについて“嘘をつくのは午前中だけ(正午まで)”というルールが囁かれています。午前中にちょっとした嘘をついて、午後には「エイプリルフールだよ!嘘だよ!」とネタバラシをしようということですね。時々信じてしまうような嘘もあるので、ある意味では良心的なルールであるとも言えます。
この嘘は午前中だけというのはイギリス発祥のルールで、起原としてはエイプリルフールの起源説にも挙げられている“オークアップルデー”が関係していると考えられています。オークアップルデーはイギリスの王政復古の記念日で、古くはオーク(樫の木)の実や葉を身につけることで国王への忠誠心を表現するという風習がありました。オークを身につけるのを忘れると、忠誠心が無いのかと怒られてしまうのだそう。しかし午後は身に着けなくてもOKなのだとか。
この午前中だけオークを身に着けるという風習が、いつからかエイプリルフールと重なって「嘘をつくのは午前中(午後にはネタバラシをする)」というルールとなったと考えられています。ただしフランス語圏の“4月の魚”と同じく、午前中ルールもイギリスやかつてその植民地だった一部地域限定の文化。世界共通のエイプリルフールルールという訳ではありません。日本ではSNSなどで普及・定着しているので守ったほうが良いかもしれませんが、4月1日の午後に嘘をついても責められる云われはなかったりします。
そのほかエイプリルフールのルール
エイプリルフールにつく「嘘」としては人を傷つけず、笑えるもの・軽いものが良いと言えます。誰かを蔑んだり誤解を招くような嘘は避け、午後には笑って済ませられるような楽しいものにしましょう。一個人としてエイプリルフールを楽しむなら、嘘をつくというより、ネタを披露する日くらいの感覚の方が安全ですね。実際にネタ企画が多く、毎年名作の特集が組まれていたりもしますし。
ブラックジョークも普通に飛び交っている国とは異なり、日本人は基本的に真面目。SNS文化や様々な有名企業がエイプリルフールを活用してPRしていることもあり、エイプリルフールの嘘も定着してはいますが、年齢や性格によっては受け入れにくいという方もいらっしゃいます。またイスラム教圏などではエイプリルフール・エイプリルフールに嘘をつくことが禁止されている場合もあります。誰彼構わずではなく、相手を選ぶようにしましょう。
エイプリルフールの番組や記事に対してクレームが入ることも少なくないようですし、エイプリルフールの嘘報道を他のメディアが事実だと捉えて騒ぎになったこともあります。企業単位で何か仕掛ける場合はインパクトなどの問題もあるのでおいておくとしても、個人の場合はリアルすぎる嘘は避けたほうが無難ですね。もし誰かに騙されても本気で怒らず「やられたー」と笑い飛ばしましょう。笑って騒ぐのがエイプリルフールを楽しむコツな気がします。
参考サイト:Tracing back the ancient origins of April Fools’ Day/Ancient Romans And Medieval Church: The Usual Suspects In The Origins Of April Fools’ Day/エイプリルフールの由来と日本のルール!嘘が午前中までの理由は?
世界中で楽しまれているイベントなのに、どこの国でも公式行事や祝日ではないエイプリルフール。その起原として考えられているように、庶民が楽しむ日だからなのではないかなと思ったりもします。そしてエイプリルフールなだけに(?)起原も由来も全くわからないという、ね。いつもよりも肩の力を抜いて、ちょっとだけストレスを発散できる楽しい日。それでエイプリルフールは良いんだよっていう、ね?
4月1日は日本では新しい年度が始まる日でもあります。不安や緊張を抱えている方も少なくありませんから、みんながクスッと笑えて、ちょっとハッピーな気持ちになれる嘘を考えましょう。どうでも良い話ですが、私は学生自体「私さ、実は戸籍上男なんだよね」って言ったら友人たちに本気で信じられた歴史があります。嘘とかネタってさじ加減が難しい…。
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