結婚式のブーケトスの起源・由来とは
-男性はガータートス? ブロッコリートス?

結婚式のブーケトスの起源・由来とは<br/ >-男性はガータートス? ブロッコリートス?

花嫁さんから「幸せのおすそ分け」として行われるブーケトス。日本では行わないカップルも増えていますが、和洋問わず映画やドラマなどの結婚式シーンでも使われるので目にしたことのある方も多いのではないでしょうか。キャッチした独身女性が次に結婚できるというジンクスもある賑々しい演出ですが、実はそのルーツは笑えないくらいシュールな話があることをご存知でしょうか?

意外と知らないブーケトスの始まりや、現代の結婚式で行われなくなっている理由まで、その歴史を大まかに解説します。独身男性に向けた演出として欧米で行われているガータートス・日本で行われているブロッコリートスについてや、近年行われている独身既婚を問わずに楽しめる演出についても紹介しますよ。

ブーケトスの意味と起源・由来について

ブーケトスとは

ブーケトスは花嫁が後ろ向きになって、結婚式に参列した未婚女性に向かってブーケ(花束)を投げるという風習です。挙式の後に行われることが多く、一般的には「幸せのおすそ分け」の演出であると紹介されることが多いですね。未婚の女性を対象にしているためか、幸せのおすそ分けではなく「キャッチすると次に結婚できる」という伝承もあります。

トスではなく「ブーケ・プルズ」も

ブーケトスは後ろ向きに花束を放り投げることから、広い場所が必要・ブーケがグチャグチャになってしまうなどの難点があります。ゲストの方に当たってしまう危険性もありますよね。そこで“投げる(toss)”ではなく“引っ張る(pulls)”方式の、ブーケプルズという方法もあります。

ブーケプルズはブーケに紐やリボンを付けておき、それを引いてもらう方法。一本だけブーケに繋がるアタリがあるというくじ引き方式で、ハズレにはちょっとしたお菓子などを付けておきます。不幸なアクシデントは起こらず場所も取らないので、近年はブーケプルズを選ぶ方も増えています。ただしブーケトスど同じく“未婚の女性”に限定して参加を呼びかける場合には、ブーケトス以上に見世物っぽいと嫌がられてしまう可能性もあります。ゲストの方の気持ちに配慮したり、未婚と限定しない方向で参加者を集った方が良いかもしれません。

ブーケトスの起源は結構怖い

ブーケトスの起源についても紀元前の古代ローマから諸説ありますが、定説となっているのは14世紀頃イギリスで始まったという説です。当時は今以上に結婚は女性にとっての重大イベント。今でも結婚=幸福のピークというような表現をしますが、当時もまた結婚する女性は特に幸福に恵まれていると考えられていました。

その幸福にあやかりたいと、ゲストとして招かれた女性たちが花嫁のブーケの花・ドレスの飾り・アクセサリーなどを引き千切って持ち帰ろうとしたのだそう。結婚式を挙げた花嫁さんにしても傍迷惑な風習。お母さんから受け継いだのか、奮発して作ったのかは分かりませんが、思い出のウェディングドレスはメチャクチャになってしまいます。ゲストが群がって花嫁のドレスを引き裂いていく…私達からすると全くおめでたくない、ホラーな光景ですよね。

服だけではなく花嫁さんが怪我をしてしまうこともある危険行為。ですが止めてと言っても聞いてもらえないので、安全策として花嫁がブーケを投げるようになったのがブーケトスの始まりと言われています。幸せをおすそ分けしますよ~という微笑ましいものではなく、「もういい加減にして!」という花嫁の声がブーケトスの始まりなんですね。ブーケを投げて、ゲストがそれに群がっている間に新郎新婦は逃げ出す……ロマンチックさの欠片もないエピソードですね。

イギリスだけではなくフランスなど西ヨーロッパでも“花嫁が身に着けたものは幸運グッズ”という考え方はあったそうで、各地でこのブーケトスの風習が広がって行ったと考えられています。時代と共に花嫁を揉みくちゃにして身ぐるみを剥ぐような風習は無くなりましたが、幸せを分け合う風習としてブーケトスは現在まで残っています。

花嫁が投げたブーケをキャッチできたら次に結婚できる…という伝承も、古い時代の名残であると考えられます。昔、女性にとっては結婚というのは大切なイベント。ある程度の年齢になっても結婚していないと、後ろ指を指されてしまうような時代でした。当時の未婚の女性にとっての“幸運”というのは良い男性が見つかること・結婚できることだったのではないでしょうか。そのため幸運を分けてもらえる=結婚できるという話になったのではないでしょうか。

ブーケトスイメージ

男性版はガータートスとブロッコリートス?

ガータートス

日本ではあまり馴染みがありませんが、欧米では未婚の男性向けにガーターリングを投げるガーター・トス(garter toss)という風習もあります。投げるガーターリングは花嫁が左足に付けているもので、外すのは新婦でも新郎でも良いそう。ですが、欧米では花婿が花嫁のドレスに潜り込んでガーターリングをとるという形がポピュラーなのだそう。ブーケトスと同じくキャッチできた男性が次に結婚できるというジンクスがあります。また、右足に付けていたガーターリングは大切にとっておいて、赤ちゃんが生まれた時にヘアーバンドにすると幸せに育つという言い伝えもあるそう。

ガータートスについても諸説ありますが、14世紀頃ヨーロッパにあった“花嫁が身に着けたものは幸運グッズ”という考えにまつわる大騒動が起源というのが定説となっています。ゲストに追いかけ回された花嫁が自分の身を守るためにガーターを投げたと言われていますから、元はブーケトスと同じなんですね。そのほかに新婚夫婦の寝室に忍び込んだ悪友が戦利品としてガーターベルトを持ち去った、幸運アイテムだった花嫁の装飾品が欲しいと家まで押しかけられた時・初夜の偵察をされた時に「もう勘弁」と花婿が投げつけたなどの説もあります。

ガータートスのイベントはキャッチするだけではなく、ドレスに潜り込んだ新郎・ドレスをまくりあげられて足がチラ見えする新婦を囃し立てるというのも楽しみの一つなのだそう。さらにガーターをキャッチした男性は“ガータープレイスメント”と呼ばれる演出を行う場合もあります。ガーターをキャッチした男性は、ガーターを持ってブーケをキャッチした女性のもとに行き、彼女にガーターを取り付けます。女性が男性に好意を持っていれば太ももまで挙げられる、NGなら途中で拒否するというのが流れ。

キャッチした人は次に結婚できるという伝承にも繋がる新たなカップル誕生イベントではありますが、迷惑に思う人のほうが多いだろうということで最近では欧米でもあまり行われていないそう。そもそも身につけていたガーターをとって投げること自体に抵抗がある花嫁さんもいらっしゃいますから、日本ではあまり行われていないのが分かるような気もしますね。

ブロッコリートス

ヨーロッパが起源で欧米を中心に行われているガータートスに対して、日本や台湾などアジア圏で独自に考案された未婚男性ゲスト向けの演出がブロッコリートス呼び名の通り、新婦がブーケを投げるのに対して、新郎はブロッコリーを投げようという演出ですね。ブーケトスやガータートスと同じく、ブロッコリーをキャッチした人は次に結婚できるというジンクスがあります。

ブロッコリートスの起源は分かっていませんが、2000年を過ぎた頃から行われるようになった新しい演出です。もしかしたら誰かがジョークで行ったのがインターネットなどで拡散され、面白そうと各地で取り入れられることになったのかもしれませんね。ブロッコリートスをする場合はブロッコリーをそのまま投げるのではなく、造花を添えたり、綺麗な包装紙+リボンでブーケっぽい見た目にするのが定番となっています。美味しく食べてねとマヨネーズを渡す方も。

ブロッコリーイメージ

ブロッコリーは子孫繁栄?

ブロッコリーがブーケトスと対になる形で結婚式の“トス”に使われるようになったのは、その形がブーケに似ていたという事があります。加えてブロッコリーの緑のツブツブは、一つ一つが小さな蕾。沢山の小さな蕾が密集している形を「子宝」や「幸せ」に見立てて、子孫繁栄や幸福を願う縁起物としての願いが込められているという説もあります。同じ子孫繁栄の縁起物でも数の子とかを投げるわけにはいきませんから、やはり形の問題が第一ではありますよね。

さらにブロッコリーと言えばアメリカでは健康野菜の代表格で、日本でも栄養豊富な緑黄色野菜として親しまれている存在。独身男性は食生活が乱れがちなので健康を気遣った、キャッチする人の健康を祈る意味があるという説も。ついでにブロッコリーの花言葉は「小さな幸せ」。独身だけと限定してしまうと場の空気が微妙になるということで、幸せや健康祈願の意味合いを全面に出し“男性参加型の演出”として既婚男性にも参加してもらうケースもあります。

トス系演出への批判と進化

トス系演出への批判

一時期は結婚式の定番で「一番盛り上がる」とまで言われていたブーケトスとガータートスですが、近年は受け継ぐ必要のない伝統であるという批判もあります。投げた物があたって怪我をする危険性があるのはもちろんのこと、結婚していない人に対する差別・価値観の押しつけであるという見解もあります。

昔のように(特に女性は)結婚するのが当たり前という時代では無くなっていますし、結婚願望がある方でも年齢によっては“晒し者”にされているようだと抵抗を感じるという方もいらっしゃるでしょう。さらに同性婚などが認められる時代になり、未婚女性・男性のイベントというジェンダー区分に不快感を表す方もいらっしゃいます。

こうした事情や、欲しくても全力で花束を取りに行きたくない日本人の性格もありますよね。なので新郎新婦サイドとしてもせっかく参加してくれたのに嫌な思いをさせるのは…と考えてブーケトスを行わないカップルが増えています。結婚式でブーケトスをするのは全体の1/3くらいなのだとか。ブーケトスとガータートスをしてきた期間が長い欧米でも、こうした演出は行わないようにしようという声が少なくありません。

皆が楽しめる演出に進化中…

ブーケトスなどのトス系イベントが「人に不快感を与える」と敬遠されるようになった大きな要因として、結婚していない人を対象にしているということが挙げられます。特にブーケトスに関しては幸せのおすそ分けという意味よりも、次に結婚できるというジンクスのほうが浸透していますしね。ですが、本来の意味であるであれば幸せのおすそ分けであれば「要らない」という方はほとんどいないはず。

そこでブロッコリートスのようにもっと対象となる人を広げて、年齢・性別・未婚既婚を問わずに楽しめる演出を行おうという動きが出てきています。参加者に花を一輪ずつ持ってもらって花嫁に渡す花束を作るダースンローズもその一つと言えますが、こちらは参加者が楽しむと言うよりも新郎新婦を盛り上げる感が強いですよね。参加してくれたゲストの方々に楽しんでもらえるように行われている演出を簡単に紹介します。

プレゼントトス

見た目として面白いもの・ゲストの方が貰って嬉しいもの・花嫁と花婿にゆかりのある物などを綺麗にラッピングしてトスしちゃおうという演出。ある意味ではブロッコリートスもこちらに含まれるのかもしれません。次に結婚できるというジンクスに関係なく、ゲスノの皆さんに参加して頂くのが主流。トスするものは当たっても怪我をしないように、固いものであれば梱包する・クッションなどを投げて後で引き換えるようにするのが最低限のルールと言えるでしょうか。

ぬいぐるみやお菓子などが定番となっていますが、中にはスタバカードやビール券など金券類を入れるという太っ腹企画も。ぬいぐるみやお菓子類は子ども達が、金券類は既婚者も含んだ大人たちが盛り上がりますね。結婚した二人がなにかの趣味繋がりで、ゲストも同じような方が多ければ趣味の品を使うというのも楽しいでしょう。アフロヘアーのカツラをトスするおもしろ企画も人気のようです。

お菓子まき

元々は東海地方にあった、お嫁に行く女性が家の二回からお菓子を投げるという風習。二回からお菓子を投げることは減っているそうですが、お菓子まきをアレンジした演出がブーケトスに替わるイベントとして全国的に行われています。通常のトス系演出はキャッチできる人が1人~多くても5人位と限られてしまいますが、小さめのお菓子を使うと沢山の人がキャッチできるので盛り上がりますね。小さいお子さんが多く参加している時にもオススメです。

お菓子を包装した小袋に数個だけ“アタリ”を入れておいて豪華賞品と引き換えるという方法もあります。○○トスや予め当たりが分かるような方法だと遠慮してしまうような参加者さんが多い時にも良いのではないでしょうか。

そのほか

披露宴で食べるケーキの中に砂糖コーティングしたアーモンドのお菓子ドラジェを仕込んでおいて、ドラジェが入っていた人には後で商品と引き換える“ハッピー・ドラジェ”と呼ばれる演出もあります。事前に調整してくれるプランナーさんもいますが、ゲスト側としては当たるか当たらないかが分からないのが面白いですよね。

さらにプレゼントトスの進化系とも言える、パラシュートをつけたクマなどのぬいぐるみをバズーカ砲で新郎新婦が飛ばす“パラシュートトス”も近年人気が出ているようです。パラシュート効果でふわふわと降りてくるので、ぶつかったりする心配もないですね。またブーケを投げるのではなく、小分けにして渡すという方式もあります。開店祝のお花のように、式の終了時に欲しい方はどうぞと持ち帰っていただく方法もあります。

参考サイト:Wedding Traditions: Tossing the Bridal Bouquet /ブーケトスの男性版、「ブロッコリートス」や「ガータートス」とは?

実は映画やTVでは見たことがあるものの、実際にブーケトスをしている結婚式には参加したことがありません。一昔前の洋画とかだと、マジな女の戦になっているシーンがよく登場しますが…。日本人の性格上、あそこまで激しいブーケの取り合いは中々出来ないよねと思ったり。年齢とか結婚しないとかいう問題もありますが、どれにせよ参加型のイベントを行う場合は、参加する人の気持ち・タイプを考えていただきたいなと思います。

私が経験したなかで記憶に残っている演出はガーデンパーティーの余興感覚で行われた菓子まきと、お菓子のロシアンルーレット。ロシアンルーレットは商品が当たる当たりと、わさび入りの外れがあるっていう(笑)友人は事前にプランナーさんに親戚のお年寄り陣にはハズレが行かないよう相談していたそうですが、見事にお年寄り陣に当たってしまっていました。結婚式にアクシデントは珍しくありませんが、笑って許せる範囲なら良い思い出になりますよね。