十五夜の月見団子は何粉で作る? 重ね方は?
…日本各地の月見団子の特徴も紹介
十五夜のお月見と言えば、セットになるのが月見団子。イメージ映像としては三方にピラミッドのように詰まれた団子が使われることが多いですが、日本各地ではそれぞれ異なったタイプの月見団子をお供えする風習もありますよ。また一般的に月見団子作りに使われる「だんご粉」や上新粉・白玉粉との違い、お供えする月見団子の数や飾り方など、月見団子にまつわる雑学をご紹介します。
目次
月見団子の意味と原材料について
十五夜と月見団子
十五夜は文字通り15日の夜を指していますが、特に空気が済んでいて月が綺麗に見える旧暦8月15日(現在の暦で9月中旬~10月上旬)の満月もしくは月見行事を指す言葉として使われています。別名「中秋の名月」とも呼ばれており、中秋は秋のまんなか日を指す言葉。古く秋というのは暦上で7・8・9月の三ヶ月間を指していたため、その真中の日=陰暦8月15日となります。
十五夜(中秋の名月)のお月見は平安時代、貴族たちが風流を楽しむために行った行事が始まりとされています。一般庶民にとってはサトイモを筆頭とした秋の収穫祭として広がったため、十五夜は「芋の名月」とも呼ばれていますよ。江戸時代中盤くらいまではお月見には里芋を供え、自分たちも里芋を食すことで満月の夜を楽しんでいたのだとか。
しかし、江戸時代の半ばから後半にかけての時期になると、人々は里芋ではなく収穫したお米で作ったお団子をお供えするようになりました。団子が使われるようになったのは、五穀豊穣への感謝を込めてであると考えられています。お正月のお餅などからも分かるように、昔の日本人にとっては米はハレの日のご馳走としても定番。お団子は時には間食に、農村部では時に非常食として食べられていましたので、餅よりも親しみのある存在でもあります。このため神社仏閣が主導する神事ではないものの、月の“神様”に感謝を示す捧げ物としても適していたと考えられます。
また月見の伝統的な行事食と言われる里芋の「きぬかつぎ」は、里芋を蒸したもののため日持ちがよくありませんでした。固くはなりますが、お団子はそこそこ日持ちのする食べ物。また町場では商品として販売されていたものでもあるので、おだんご屋さんなどが月見団子を売り込むためにキャンペーンを行った可能性もありますね。ともあれ、感謝を示す供物としての意味合いと、利便性などの現実面、両方で良いと考えられた月見団子は江戸後期頃には広く親しまれる存在となりました。
月見団子は何粉で作る?
月見団子を自作してみようと思い立った時に困るのが、材料になる粉。お米を粉にした粉を使うということは分かっていても、上新粉・新粉・白玉粉など色々な種類がありますよね。
白玉粉の原料はもち米。つるりとした柔らかい触感が特徴。水を加えて練り、茹でるだけで出来ると手軽。ただし白玉団子をイメージしていただければ分かるように、茹で上がると柔らかく団子を“積む”にはちょっと難しいです。また中まで火を通そうと茹でているうちに表面がベタベタになって変形しまう場合もあるので、扱い慣れた方でないと月見団子作りには難しいかもしれません。ちなみに、もち米を原料とした粉には“もち粉”もありますが、こちらは白玉粉よりも粉の目が細かいもの。粉のブレンドをする場合はお団子作りで使う場合もありますが、基本的には求肥などを作る際に使われます。
対してうるち米を原料としているのが上新粉。新粉や上用粉と呼ばれるのもうるち米が原料で、引いた粉の目の粗さで名前が使い分けれられています。上新粉は目が中くらいからやや細かいもの。団子作りには上新粉、もしくは上新粉よりも目の荒い新粉が使われています。こちらは白玉粉よりもコシがあり、噛んだ時にミシッとした歯ごたえがあるのが特徴。型崩れはしにくいのですが、時間が経つと硬くなりやすい、調理法が粉をお湯で練る→蒸す→成形するとやや面倒ではあります。熱々で成形するので、お子さんと一緒に作るのも難しいですね。
最も手軽なのは「だんご粉」として販売されている粉を使うという方法。だんご粉は商品名の通り団子作りをしやすいように、上新粉と白玉粉を半々くらいでブレンドしてあるもの。使い方は水を入れて手でこね、丸く成形して茹でるだけと白玉粉システムなので簡単です。しかし上新粉が入っているので白玉粉よりは固めの仕上がりになり、冷水に晒して水気をとった後に積んでも型くずれしにくくなっています。水の配合や作り方は商品パッケージに記載されているものを参考にして下さい。
地域によって違う、月見団子と風習
関東式
現在は商品流通の関係もあり全国的になっていますが、丸いお団子をピラミッド型に積んだものは江戸発祥で関東以北の月見団子の形であると言われています。丸く作られるようになったのは、お団子を満月に見立てたから。満月を模した理由については諸説ありますが、満月に見立てて健康や幸福を願った・物事が成就(結実)するのを願ったなどと考えられています。
同じ関東でも地域によってシンプルな白団子と、中に餡を入れたお団子があります。また近年は一番上を満月に見立てた黄色にする、ピンク・茶色・緑などを加えたカラフルなタイプのものもありますね。全国的にこのタイプが出回るようになっているのは首都が東京・メディアで月見団子としてこの白くてピラミッド型のビジュアルのものが使われることが多いという理由の他に、シンプルなのでメーカー側が作りやすいという面も大きいと思われます。
関西式
丸い団子をシンプルに積み重ねた関東式の月見団子に対して、京都・大阪を中心にした関西エリアではやや細長い形の団子をあんこで包んだものが月見団子として使われています。形が細長いのは、元々十五夜の行事食として食べられていた“里芋”に似せて作ったためだとか。
皮のように薄いあんこで団子を巻いている理由については、里芋の「きぬかつぎ」と同じ様なコントラスト感を付けるためであるという説と、お団子を月・あんこを雲に見立てたという説があります。またあんこが巻かれている関係上、お供え時の盛り付けはお皿に置くなどして平面に並べる方がポピュラー。
その他の地域
名古屋エリア
名古屋の月見団子も、里芋を模した細長い形をしています。関西エリアのものよりも円錐形に近く、しずく型の月見団子と表現されることもありますよ。あんこは巻かれていませんが、白色・ピンク・茶色と三色に着色されていることが最大の特徴。ういろう・すあまと同じ原料で作られているそうなので食感ももっちり柔らかめで、関東式よりもお砂糖が多めなので結構しっかり甘いようです。
静岡エリア
静岡県ではお餅の真ん中が凹んでいる「へそ餅(ヘソ団子)」と呼ばれるお団子を使った月見団子が使われています。色は白と、ヨモギを入れた緑の二色。餅という名称になっていますが原料は上新粉・白玉粉が使われているので、食感としては普通にお団子。
元々はへそと呼ばれる窪みにあんこを乗せて食べるものだったようですが、最近は餅の中にあんこが入れられている“あん入り”タイプも多くなっている模様。積んでも使えるけれど、ヘソの意味はなくなっているのでは…と部外者は思ってしまいました。餡入りだったり、草餅+あんこという鉄板の組み合わせなので、和菓子OKな方であれば間違いなく美味しい団子ではあります。
中国・四国エリア
中国・四国地方では串に刺さったお団子が月見団子として使われることが多いようです。味付けは地域や家庭によってマチマチで、あんで包んだタイプから、みたらし・きなこなどもあります。ザ・団子ではありますね。
沖縄エリア
沖縄県県では「フキャギ」や「フチャギ」と呼ばれる、小豆をまぶしたお餅が十五夜の定番とされています。豆もちとして紹介されていることが多いので月見団子と言って良いのかは分かりませんが、月見団子に準じる行事食ではありますね。材料として近年はもち粉が使われているそうですが、古くはもち米を搗いて作っていたそうですから、豆餅という紹介がしっくりきます。
形状は細長い楕円形で、小豆のほかササゲの一種である“黒小豆”も使われています。沖縄県でも古くから小豆は邪気払い・魔除けの力がある食材だと考えられてきましたが、潰すと効果が弱まるという伝承もあるのだそう。そのため豆を潰さずに餅にまぶすという形になったと言われていますよ。
日本以外のお月見の行事食
日本以外で行なわれている月見で食べられるものとしては、中国の月餅(げっぺい)があります。月餅は名前にも「月」が付くように、満月に見立てて作られたお菓子。旧暦8月15日に十五夜の月を鑑賞する“中秋節”という伝統行事で唐時代事にはお供え物・行事食として使われており、古くは厄除けの意味があったのではないかと考えられています。しかし現在の中国では中秋節の贈り物として、中秋節の前に知人や友人に配るものという認識のほうが強くなっています。中国には月餅専用の商品券があったり、月餅という名の元に高級酒や服飾品を入れた贈賄が問題になった関係で月餅の箱に月餅以外のものを入れてはいけないという通達も出されているそうですよ。
香港や台湾でも中秋節(十五夜)に月餅を使う他、ベトナムでも月餅を食べる習慣があるようです。また韓国ではソンピョン(松餅)という上新粉を練ったものを松葉を敷いて蒸すお団子のようなものが食べられています。ソンピョンの形は半月型もしくは涙型のものが多いようで、ピンク・緑・白の三色が主流のよう。そのほか黄色や紫色をしたもの、練りきりのような感じで可愛らしい形にアレンジされたものもあります。シンプルな形のものは、馴染みのない日本人から見ると雛あられのお団子版というイメージですね。
月見団子の飾り方・風習
月見団子の数
上記でご紹介したように、月見団子の種類は地域により様々。積み重ねないタイプのものもありますので使用するお団子によっても飾り方は変わってきますが、よく見かける丸いお団子を積み重ねた“月見団子”にする場合は、15個もしくは12個のお団子を積み重ねて使うことが多くなっています。月見団子の数やサイズ・詰み方に規則があるわけではありませんが、意味や縁起をかついている部分もあるので知っていても損はないですよ。
団子の数が12個もしくは15個とされている理由は
- 12個にするのは一年の月の数と合わせるため。
- 15個にするのは十五夜と数を合わせるため。
とされています。ちなみに15個派は十五夜を15個、十三夜(後の名月)は13個と使い分けます。また12個の場合は、閏年であれば13個に増やすことが推奨されています。現在は一日多いのが閏年ですが、昔は“閏月”と言って一ヶ月多くなっていたので13ヶ月分で13個ということですね。
月見団子の大きさは十五夜にちなんで一尺五寸=直径4.5cmサイズで作ると縁起が良いと良いという説もあります。きれいな球体を作ってしまうと亡くなったご遺体の枕元に飾るの枕飾(枕団子)と重なってしまうので、気持ち平たくなるように潰したほうが良いそう。すこしだけ平らにすると真ん丸よりも詰みやすくもなります。
積み方・飾り方
こちらも関東式など積むことを前提にした話とはなりますが、丸いお団子をピラミッド型に積み上げる場合には下から順に
- 12個:8x3x1(もしくは9x3個で二段)
- 13個:8x3x2(もしくは9x4個で二段)
- 15個:9個x4個x2個
というのが一般的となっています。15個のお団子を使う場合は、最上部が2つになってしまうので置き方に困りますが、正面から見て縦(前後)に2つのお団子が並ぶようにします。横向き(左右)に2つのお団子が並ぶようにするのは、仏事の時に使われる置き方なので避けた方が良いでしょう。簡略化して5個お供えするという場合もありますが、こちらは4x1個の二段ですね。
正式な形では月見団子も神様の供物のため、三方に白い紙を敷き、その上に月見団子を乗せるというのがベスト。ただ三方が無い家庭も多いですし、そこまで仰々しくしなくても問題ありません。お皿に、あれば半紙などを敷いて乗せるスタイルでも良いでしょう。飾る場所については月が見える窓辺や縁側の床にするのが一般的ですが、床の間などでも良いとされているのでこだわり過ぎる必要はありません。
お月見どろぼう
現在は少なくなっているようですが、各地で「月見どろぼう(月見泥棒)」と呼ばれる子供向けの月見イベントが行なわれていました。これは、十五夜の夜はよその家の月見団子を盗んで食べても良いよというイベント。子ども達は竹竿などに針金を付けた釣り竿のようなもので、垣根の隙間からそーっとお月見団子を盗んで歩いたのだとか。こっそり盗んだほうが子供としては燃えそうではありますが、現在は住環境・防犯面の問題から「お月見ください」など声をかけて、近所の方からお菓子をもらうという形に変わっています。
この月見泥棒イベントの発祥は分かっていませんが、古くは十五夜に来る子ども達は月からの使者であると考えられていたという説もあります。子どもが団子を盗っていく=お月様が供え物を受け取てくれたということになるという考え方ですね。また昔は甘いものはご馳走・贅沢品だったので、育ち盛りの子どもに振る舞ってあげようという優しさもあったような気はしますが。
参考サイト:お月見団子の積み方と供え方と昔からの月見の方法とは?/「月見団子は地方によって違う!?」 | 本棚のこびとたち
お月見の団子も神様への供物であるため、前日(一夜飾り)や当日にお供えするのは良くないと言われています。三日前くらいに備えるのがベストなのだとか。鏡餅と同じくお供えして固くなった団子は焼き直すか、だんご汁にして食べるのが正式だとか。パッケージされているものであれば良いですが、手作りする場合は三日以上置いておくというのはちょっと不安。お供えはお供えとして、美味しく食べるのは別に用意したほうが良いかもしれません。当日飾りでも神様は怒らないと思いたいですけどね。
ざっくりと各地の月見団子を調べて載せましたが…関東・大阪・静岡以外は食べたことがありますせん(ごめんなさい)。。ご紹介した以外にも和歌山ではきなこをまぶす、東北では饅頭、など地域差が大きいそう。大本の出身地にもよるのでしょうが、北海道では普通の積み団子が到るところで売られてはいますが…馴染みはあまりありません。最近は地域差だけではなく美味しい・見た目が可愛い月見団子を作られている方も多いので、各地の月見団子を参考に好きに作ってみても良いような気がします^^;
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